更新日:2017年09月17日
目次
中性脂肪のことをきちんと知っていますか?
毎年の健康診断で中性脂肪の値が気になる人は多いですね。
太っている人は当然高い場合が多いですが、痩せている人でも中性脂肪値が高いこともありますし、20代の若者でも中性脂肪値が高く出ることがあります。
中性脂肪の値が高いと良くないのだろうと考えている人は多いと思いますが、中性脂肪とはどういうもので、なぜ中性脂肪値が高いと良くないのか、どんな危険があるのか、下げるためにはどうすれば良いのかを理解している人は少ないように感じます。
まずは、中性脂肪についてしっかりと理解しておきましょう。
中性脂肪とは
私たちの身体の中には、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、コレステロールという4種類の脂肪が存在します。
これらの4種類の脂肪はそれぞれに違った働きをしています。
脂肪酸
脂肪酸は私たちが生きていく上で必要なエネルギー源として、どんどん使われていく脂肪です。
中性脂肪
中性脂肪は貯蓄型のエネルギー源で、必要になると脂肪酸となりエネルギーとして使われます。それまでは肝臓、あるいは皮下脂肪や内臓脂肪として身体に蓄えられています。
その他にも、私たちの体温を一定に保つという重要な働きもしてくれています。
リン脂質・コレステロール
リン脂質、コレステロールは細胞膜を構成している成分です。コレステロールは、ホルモンや胆汁などの材料になります。
このように、中性脂肪を含め4種類の脂肪は、私たちの体にとって必要不可欠なものです。
中性脂肪が蓄えられる仕組みとは?
中性脂肪は体内に入ってきた脂肪や糖質、たんぱく質などから作られます。これらは人が生きていくためのエネルギーとして消費されていくのですが、余ったものは、中性脂肪として体内に貯蔵されることになります。
つまり、消費するエネルギーの量と比べて多くの食物を摂取したときに、皮下脂肪や内臓脂肪または肝臓の脂肪として中性脂肪が蓄えられるのです。
摂取するエネルギー > 消費するエネルギー → 余った分が中性脂肪として蓄えられる。
中性脂肪の基準値はどれくらい?
中性脂肪がどれほど体内に存在するかは、血液検査で測ることができます。
基準値は30~149mg/dlです。(→日本人間ドック学会検査表の見かた)
中性脂肪の値が高いと問題とされますが、実は少なすぎても身体にとっては良くありません。
必要なエネルギー源が確保されないため、エネルギー不足、疲れやすさ、冷え性などのさまざまな症状があらわれるようになります。
また、他の病気が隠れている場合もあるので、あまりに中性脂肪値が基準値よりも低い場合は、医師への相談が必要です。中には遺伝的に中性脂肪が少ない体質の人もいます。
しかし、多くの場合、問題になるのは基準値よりも高いことです。中性脂肪が過剰に増えるとさまざまな生活習慣病や致命的な疾患の原因ともなりかねないため注意が必要です。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」にも次のような記述があります。
血液中の中性脂肪の値が150mg/dl以上になると「高トリグリセライド血症」とされ、メタボリックシンドロームの診断基準にも盛りこまれています。
また、目安にはなりますが、中性脂肪の数値ごとの注意点を記載しておきます。
- 150mg/dl以上ある場合は、脂質異常症と診断される可能性があります。
- 150~299mg/dlの間は、生活習慣や食習慣を改善するように心がける必要があります。
- 300mg/dlを超えると必要に応じて薬の服用が医師から勧められる可能性があります。
- 500mg/dlを超えると禁酒することが必要になります。
- 700mg/dlを超えると至急薬物治療が必要になります。
- 1000mg/dlを超えると非常に危険な状態であり、膵臓などの病気が心配されます。すぐさま中性脂肪を下げる治療を受ける必要があります。
検査前の食事について
中性脂肪の検査を受ける場合には食事の時間に気をつけなければなりません。
中性脂肪の値は食後5時間前後がもっとも高くなります。また、アルコールを摂取した後は体内で作られる中性脂肪が増加し、中性脂肪の値は12時間前後を経過したときにもっとも高くなるといわれています。
食後やアルコールの摂取後の中性脂肪の増加は一時的なものですので、食事は検査と十分に時間を空けるようにして、アルコールは検査の前日には摂取しないようにすることが必要です。
なぜ中性脂肪の値が高くなるのか?その理由とは?
中性脂肪が高くなる大きな要因として食生活があげられます。
食べ過ぎは中性脂肪を増やしますが、中でも炭水化物やたんぱく質、脂質を多量に摂取すると、体内で中性脂肪がどんどん蓄えられていくことになります。
- 炭水化物は腸で分解されて糖質となり、身体が生きていく上で必要なエネルギーに変換されます。その後、使われずに残った糖質は中性脂肪となり身体に蓄えられます。
- たんぱく質や脂質もアミノ酸や脂肪酸に分解された後、糖質へと変換され、最終的には中性脂肪となって身体に蓄えられます。
そのため、中性脂肪が高い方はまず、炭水化物、たんぱく質、脂質の摂取量を減らすよう心がけましょう。
アルコールもダメ!
アルコールの摂取も中性脂肪を高くする原因となります。
ビールやチューハイなど糖分が多く含まれたアルコール飲料は直接中性脂肪を増やす原因となります。
また焼酎やワインなどのそれ自体は中性脂肪を増やさないアルコール飲料も、飲酒することで食が進み、ついつい食べ過ぎてしまうことから中性脂肪を高くする原因となるのです。
友人など気の会う仲間とお酒を飲むと、気付かないうちについつい食べ過ぎてしまう、高カロリー・高脂質のものを食べる機会が増えると感じている方もいるはずです。
遺伝が関係する「家族性高コレステロール血症」、「家族性III型高脂血症」
中性脂肪やコレステロールが高くなる原因として、生活習慣とは関係なく、遺伝が関係しているものもあります。
「家族性高コレステロール血症」は血液から体内にLDLコレステロールを取り込むための「LDL受容体」が生まれつき少なく、血中のLDLコレステロールが高くなってしまうため、動脈硬化が進行するなどの危険性があります。これは日本人の500人に1人ほど存在するとされています。
また、「家族性III型高脂血症」では遺伝が原因で中性脂肪やコレステロールが高くなります。
中性脂肪が高くなるとどうなってしまうの?
中性脂肪が高くなると、コレステロールのうち善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やす、ということに繋がります。
善玉コレステロールは血液中に漂う余分な悪玉コレステロールを、コレステロール処理工場である肝臓まで持ち帰り、血管の掃除をしてくれます。
しかし、肝臓まで連れて帰ってくれるはずの善玉コレステロールが減少してしまうことで、自力で帰ることができない悪玉コレステロールは血管の壁に蓄積されていきます。
この現象で血液はドロドロになり、血管は柔軟性を失って動脈硬化へと繋がっていきます。動脈硬化はサイレントキラーとも呼ばれ、自覚症状がないまま狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの致命的な疾患へと至ってしてしまう危険性があります。
また、過剰に肝臓に貯まった中性脂肪によって脂肪肝になり、肝機能に負担をかけて、肝機能障害の原因ともなります。その他、糖尿病や肥満の原因ともなります。
中性脂肪を下げる3つの方法とは?
1.食生活の改善
中性脂肪を下げるために一番大切なことは食生活の見直しと改善です。
中性脂肪を上げる食べ物はできるだけ避けて、中性脂肪を下げる食べ物を積極的に摂取するようにしましょう。
また、禁酒とまではいかなくても、アルコールを飲む機会を減らすことも中性脂肪を下げるためには効果的な方法です。親しい友人と楽しい時間を楽しむために、お酒が飲みたくなる夕食ではなく、ランチを楽しむというのも一つの方法です。
なお、厚生労働省では「節度ある適度な飲酒量」の目安として、男性は一日あたり純アルコールで20g(日本酒で1合)、女性はその半分の量を提唱しています。
2.運動習慣の改善
運動習慣を見直し、改善することも中性脂肪を下げるために良い方法です。
脂肪を燃焼させやすい有酸素運動を定期的に行うようにしましょう。できれば、1回30分以上を週に3回以上行うと効果的です。
同じ運動でも、筋トレなどの無酸素運動は脂肪を燃焼させないため、中性脂肪対策には不向きな運動です。ただし、筋力を増強させることで代謝が上がるため、一定の効果はあるでしょう。
なかなか運動する時間を取り分けられない方は、通勤時に一駅分は歩く、エレベーターではなく階段を使う、いつもより少し歩く速度を早くするなどの心がけだけでも、全然意識しないよりは効果を期待できます。
3.禁煙
喫煙も中性脂肪を上げる原因となります。中性脂肪対策だけでなく、がん予防や高血圧予防などの健康のためにも禁煙を心がけることが良いですが、難しい場合は、少しでも喫煙する量を減らすように心がけましょう。最近は禁煙外来にきっちり通院さえできれば、かなり高い確率で禁煙ができるようになってきました。
中性脂肪を上げる食べ物と下げる食べ物
中性脂肪を上げる食べ物
糖質(炭水化物)、たんぱく質、脂質を多く含む食べ物は中性脂肪の値を上げる食べ物です。しかし、これらは私たちが健康に生命を維持していくために必要な栄養素でもあります。
そのため、過剰に摂取することに注意して適量を摂取することが大切です。中性脂肪が高い方はこれらの栄養素を含む食べ物が好きな方が多いと思いますので、適量の摂取を心がけましょう。
脂質や糖質を多く含む食べ物には、チョコレート、ケーキ、マーガリン、ショートニング、チーズ、ポテトチップス、唐揚げや天ぷらなどの揚げ物があります。
また、果物も糖質を含むものが多いため食べ過ぎると中性脂肪を上げる原因となります。しかし、果物はミネラルや食物繊維、ビタミンなどの栄養を豊富に含んでいるため、朝食など一日の早い時間に摂取するようにしましょう。
その他、白米や麺類、パン類には炭水化物が多く含まれます。
中性脂肪を下げる食べ物
中性脂肪を下げる栄養素として注目されているのが青魚に含まれるDHAやEPAです。
DHAやEPAは「不飽和脂肪酸」と呼ばれる脂肪酸の一種で、中性脂肪や悪玉コレステロールを下げ、動脈硬化を予防する効果があります。
DHAやEPAは熱に弱く、熱すると外へ溶け出してしまう性質があるため、青魚は刺身で食べると最も効率よくDHAやEPAを摂取することができます。
ほかにも不飽和脂肪酸である植物油のオリーブオイルやグレープシードオイル、えごまオイルなども中性脂肪を下げる食品です。ドレッシングやマリネなどに積極的に取り入れましょう。
大豆製品、特に納豆には納豆キナーゼが含まれていて、血液をサラサラにする効果があります。
他にも中性脂肪を下げて血液をサラサラにする食べ物として、玉ねぎや海草、緑黄色野菜、キノコなどがあります。
また、どうしても甘いものが食べたい時は、カカオの含有量が多いビターなチョコレートはポリフェノールを多く含んでいます。食べすぎに注意しつつ、無理に我慢するのではなく、そのようなチョコレートを少しつまむようにすると良いでしょう。
中性脂肪が高い人の口コミなど
中性脂肪が高い人の声などを少し集めてみました。一口に中性脂肪が高いといっても、その内容はそれぞれです。
カロリーなどを気にして発泡酒を飲んでいても、おつまみなどでむしろ中性脂肪をより多く摂取してしまう人もいます。
- 身長165cm、体重55キロくらいですが、中性脂肪が420mg/dlもありました。毎日発泡酒を飲んでいることもあり、γ-GTPも高い数値です。
- 身長165cm、体重60キロくらい。40代の男性です。ジョギングをしています。朝食は食べず、昼はカップラーメンと惣菜、夜は豆腐。といった食生活です。夜に発泡酒を飲んでいて、中性脂肪が160mg/dlです。
- 中性脂肪が1200以上ある40代の女性です。毎日発泡酒を飲んでいます。
- 中性脂肪が高かったのですが、炭水化物を減らしてたんぱく質をとるようにし、適度な運動をしたら下がってきました。
- 中性脂肪が半分近くになりました。食事や運動に気をつけてきました。ただし、身長や体重はほとんど変化していません。
- ナイシトール、コレストンを続けて飲んでいたら、中性脂肪だけでなく血圧、コレステロールも下がりました。
- ヘルシア緑茶、青魚、乳酸菌、食物繊維などを気にして摂取しています。
- 食べ物やサプリメントを利用して中性脂肪を下げようとしている人が多いけど、適度な運動の方が効果は高いと思います。
看護師からひとこと
日々の食事や生活習慣が中性脂肪を増加させることとなり、肥満や成人病などを引き起こしてしまいます。
少しずつでも食事に気をつけたり有酸素運動をしたりすることが大切です。意識して健康的な生活を送るようにしましょう。
まとめ
エネルギーの摂取しすぎで中性脂肪が増える
消費するエネルギーよりも、体に取り込むエネルギーの方が多いと、中性脂肪として体に蓄えられてしまいます。
食生活と運動が大切
体に蓄えられた中性脂肪が多くなってしまったら、少なくする必要があります。食生活を見直して、青魚、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸と呼ばれる脂肪を含むものを摂取するようにします。
また、週に3回程度、30分以上の有酸素運動を行うと、中性脂肪を減少させる効果があります。