胃下垂は病気ではありませんが、症状が出たときには問題となります。症状が出るには原因がありますので、しっかりと認識しておく必要があります。胃下垂の原因、病院での治療、毎日の生活で気をつけることなどをまとめました。

更新日:2017年05月20日

この記事について

監修:山浦真理子医師(上用賀世田谷通りクリニック)

執筆:看護師(当サイト編集部)

胃下垂はどういう状態?

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胃下垂の人の胃は、通常よりも下の方にあり、場合によっては骨盤(腸骨)のあたりまで胃が伸びてしまいます。

胃下垂であること自体は大きな問題ではないのですが、胃の調子が悪かったり、食欲不振であったり、さらには便の異常が出たりすることがあり、症状が出てくると治療を要することになります。

痩せている人や筋力の少ない人が多いため、原因としては、暴飲暴食が多い人や、ストレスがかかっている人、姿勢が悪い人など、他にも多くのものがあります。

ここでは、原因と治し方を中心に胃下垂を見ていきます。胃下垂の自己チェックや症状などについては、以下の関連記事をご覧ください。

胃下垂の原因(症状が出る原因)

上記の関連記事の中でもご紹介しましたが、胃下垂になりやすい人というのは、2種類です。

  • 生まれつき筋肉が少なく、瘦せ型の人
  • ダイエットや病気などで急激に痩せた人

こういった人が全て胃下垂になっているということではありません。こういった人(または近い人)には胃下垂の人が多く、消化不良や栄養障害などが引き金となり、様々な症状が現れてしまうことがあるのです。


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消化不良の原因となること

暴飲暴食をすることが多い

たくさん食べればその分だけ、胃は消化しなければなりません。

消化に時間がかかったり、消化不良を起こしてしまったりすることにより、胃に大きな負担がかかります。胃の中に食べ物がある時間も長くなることから、しだいに胃が垂れ下がっていきます。

また、アルコール飲料や炭酸系の飲み物、脂肪分の多い食べ物についても、消化不良が起こることがありますので、注意したいところです。

暴飲暴食をしてしまう原因はダイエットの反動で暴飲暴食を行ってしまう人、過度のストレスなど人それぞれです。

どうして暴飲暴食をしてしまうのかを自分で検証してみて、その原因を取り除いていくことが大切です。

暴飲暴食を続けていると、胃下垂だけでなく、胃の不調から胃潰瘍や胃がんなどに発展することも考えられます。

暴飲暴食をしてしまったら、翌日は胃を休めるなどの配慮をするようにしましょう。

あまり噛まないで食べてしまう

咀嚼が足りないというのは、食べるスピードが速い人に多いと考えられますが、そうでなくても噛まないで食べる人は一般的に多いと考えられます。

噛まないで食べると食べ物がそのまま胃に落ちていきますので、その分、胃が消化作業を負担しなければなりません。

こうして、胃の中に食べ物が多く入り、長い時間留まることになりますので、胃の位置が下がることに繋がってしまうのです。

良く噛んで食べることで、食べ物がバラバラになり、表面積が大きくなります。

口の中では唾液により消化の準備が行われていますので、噛むことで胃の中での消化効率がパワーアップされるのです。

また、良く噛んで食べることは健康に対する効果が大きいと言われています。脳の動きを活発にすることから認知症を予防することや、生活習慣病の予防、歯も強くなると言われています。

ストレスがたまっている

ストレスなどの心理的な要因は体に様々な悪影響を与えることが知られています。

中でも、自律神経には大きな影響を与えます。自律神経とは体内の臓器などを動かすために働いている神経で、私たちが意識せずとも24時間動き続けています。

ただし、夜と昼間では自律神経の動きに違いがあり、昼間は交感神経という活発な神経が動き、夜間は副交感神経というゆったりした動きの神経が働いていて、体内でバランスを取っています。

緊張や不安などのストレスがかかっている状態が続くと、自律神経に異常が出てしまい、体内の臓器の動きが悪くなってきます。

自律神経失調症という状態になってしまうと、胃などの臓器に異常が出るだけでなく、全身がだるかったり、頭痛が続いたり、動悸やめまいなど、様々な全身の症状が出てきます。

胃に関しては、暴飲暴食と同様に消化不良を起こしやすくなりますので、胃の中に食べ物が滞在している時間が長くなり、胃が伸びてしまうことに繋がります。

ストレスがかからないような生活を送ることや、発散させる方法を見つけておくことが重要です。

ホルモンバランスに異常がある

体の臓器が正常に動くには、ホルモンが適正に分泌されていることも重要です。

ホルモンの分泌は自律神経の働きに直結するもので、自律神経が乱れれば体内の臓器の働きにも関わってきます。胃に関しては、ガストリンというホルモンの分泌が胃液の分泌を促すため、胃の運動にも影響しています。

また、生理の際に胃の痛みなどが出る人もいて、ホルモンバランスが胃に影響していると考えられています。胃の動きが正常に行われなければ、消化不良などに繋がってしまいます。

胃を支える周辺の骨や姿勢、筋力による原因

骨格など

胃を支える筋力の減少なども原因となってきます。

姿勢が悪い

胃下垂の人には、姿勢が悪い人(猫背)が多いと言われています。

例えば、猫背で背中が曲がっている人は、重心が前にきて、内臓を下方向に押し下げることに繋がります。

胃が押し下げられると体の重心が下へずれるため、さらに姿勢が悪くなるという悪循環が生じてしまいます。

また、肋骨が小さい場合など、肋骨に囲まれた部分の臓器(心臓や肺など)がうまく収まらず、下にある胃を押し下げてしまうことなども考えられます。

姿勢と臓器は一体のものですので、姿勢が悪っかたりということは、臓器の位置がずれることに繋がってしまうのです。

お腹の手術や出産の後

お腹の手術や出産によって胃下垂になる人もいます。

出産の場合、何人か子どもを生むことで、お腹の壁にある筋肉の力が落ちて、胃を支えきれず垂れ下がってしまいます。

また、妊娠中や出産後の授乳の姿勢が良くないと胃下垂の原因となることがあります。胃下垂はポッコリとしたお腹になってしまうため、産後の女性には深刻な悩みになってしまいます。

悩んでいる方がいる一方で、出産によって、胃が押し上げられて、そのまま胃下垂の状態が治ったという人もいるようです。その他、子宮摘出などの手術によって、胃下垂など、内臓が下がってしまうという人もいます。

胃の周辺にある筋肉の減少・筋力低下

もともと、筋肉の少ない人、無力体質の人に多い胃下垂ですので、さらに筋力が低下すれば胃下垂になる可能性が高くなります。筋力は若い人よりも高齢の人の方が少なくなりますので、高齢者にも見られます。

お腹周りの筋力というと腹筋と考えがちです。もちろん腹筋はお腹の中の臓器を固定する上でとても重要ですが、腹筋以外にも全身の筋力バランスが良くあることで、体内の臓器が保たれます。

急激な体重の減少(ダイエット・病気など)

急激に体重が減少すると、脂肪と合わせて筋肉量も減少していきます。

体全体の筋肉量が落ちてくると、体内の臓器が不安定で固定されてない状態に近づいてしまいます。

また、胃だけでなく、他の臓器への影響も考えられます。特に女性ホルモンの分泌に関わる卵巣は、体脂肪によって守られています。

急激な体重減少により脂肪が減ることで卵巣の体温を維持できなくなることで、女性ホルモンの分泌が乱れ、生理不順やPMSの悪化が起きることもあります。

その他

その他に原因や症状として関係のありそうなものをご紹介します。

胃の知覚過敏

歯だけでなく、胃などの臓器にも知覚過敏という状態があります。

少しの刺激があるだけでも胃が大きく反応して動いてしまう状態で、すぐに満腹感を感じてしまったり、正常に胃酸が分泌されている場合でも、痛みを感じたり、灼熱感を伴ったりします。

胃の中に食べ物が長い時間止まっていることで、胃壁が伸びることに繋がり、さらに知覚過敏が引き起こされていきます。

ピロリ菌

胃の病気だとピロリ菌が原因になっていることが多くありますが、胃下垂に関してはピロリ菌とはあまり関係がありません。

ただし、ピロリ菌は様々な胃の症状や病気を引き起こし、胃がんの原因としても取り上げられています。胃の調子が悪いと感じた時には、検査をしてもらうといいでしょう。

病院に行く場合とは?

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胃下垂とは病名ではなく、胃が垂れ下がっている状態を表しています。病気ではないため必ずしも治療の必要はありません。

ただし、胃下垂に伴う消化不良などにより、症状が出ている場合には、医療機関での治療が必要になってきます。

主な症状には次のようなものがあります。

  • 胃のもたれ
  • 食後の胃周辺のむかつき
  • 食後に胃が引っ張られるような痛みがある
  • 腹部膨満感がある
  • 食欲不振
  • 吐き気がする
  • げっぷがでる
  • 下痢や便秘をする

症状が軽い場合には、あまり気にならないかもしれませんが、症状が進行すると、こういった胃や腸の症状が複数現れることに加え、消化不良や栄養障害、自律神経の不調に伴う手足の冷えや頭痛、肌荒れなども現れてきます。

さらには、次のようなことを感じる場合には病院を受診すべき状況といえます。

  • 症状や痛み継続的に出ている
  • 強い痛みがある
  • 精神疲労が続いている
  • 自律神経失調症の症状がある
  • 長いあいだ便通がない
  • 継続的に下痢の状態である
  • 体重が減少している

病院で行う治療とは?

対症療法

病院では、レントゲンなどによる胃下垂の確認とともに、胃潰瘍や胃がん、その他の病気でないことを検査していきます。

病気が発見されればその治療を行なっていきますが、病気がない場合は、胃下垂自体を治療するということではなく、薬などの処方による、対症療法を行なっていきます。(下垂しているものを薬で治すことはできません)

薬の内容は、胃酸の分泌を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬、胃の運動を調整して消化機能を改善する薬などが処方されます。また、希望する場合は消化管に効果のある漢方薬を処方することもあります。

胃下垂を根本的に治したい場合は?

病院だと対症療法が基本なので、胃下垂を治す、つまり胃の位置(伸びてしまった胃)を正常に戻すことは難しくなります。

生活習慣等の改善で症状の改善や悪化を防ぐ方法

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普段の生活を見直すことで悪化を防ぐことはできます。

特に胃下垂の症状は胃が伸びきってしまうことによる、消化不良は様々な症状を引き起こす原因となります。

したがって、消化不良を防ぐような生活を送ることが大切です。その他、骨盤や筋力など体の作りや姿勢にも原因となるものがあります。

暴飲暴食・早食いをやめる

胃の中に食べ物が長く止まっていることが消化不良を起こしてしまいますので、多くの食べ物を食べたり、飲んだりすることが胃に大きな負担をかけてしまいます。

胃下垂だと知りながら、アルコールが入ってしまうと、ついつい、深酒をしてしまったり、夜中にラーメンまで食べてしまったりという話を聞きます。

生活習慣病にも繋がりますので、控えることが大切です。特に脂ものやアルコールはそれ自体が胃に負担をかけるものです。食べるものも消化にいいものを選んで食べることが大切です。

また、時間をかけて良く噛んで食べることも重要です。

早食いはどうしても噛む回数が少なくなります。たくさん噛んで、唾液と食物を混ぜてから胃に落としていくという方法をとることで、胃の負担がとても少なくなります。

適度な運動をする

胃下垂は筋力の少ない人に多くみられますので、適度な運動をして体力をつけていくことが重要です。

これは、厳しい筋トレをするということではありませんし、よく言われている腹筋が必ずしも胃下垂の解消を保証するものではないのです。

しかし、体の筋力が内臓のバランスを取っているのも事実です。したがって、急激に筋トレを行うのではなく、適度な運動によってまずは、体力を向上させることが大切になってきます。

適度な運動とは、日々のウォーキングなどを言います。1日30分程度でも効果があると言われています。これは体力だけでなく、ストレスの解消にも大きな効果があるという研究があります。


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ストレスの発散方法を見つけておく

ストレスは胃に対してだけでなく、様々な病気の原因となるものです。

自律神経やホルモンバランスを乱す元となりますので、注意が必要です。

とはいえ、ストレスをかけないように生活するのはとても難しく、特に都会に暮らす人はちょっとのことでもストレスを溜めてしまう傾向があるという分析があります。ストレスがさらにストレスを呼んでしまうのです。

ストレスが重なってしまわないよう、自分なりの発散方法を見つけ、しだいにストレスを少なくしていくことが大切です。

なお、ストレスの解消方法として、アメリカ心理学会は次の5つの項目を挙げています。

  • ストレスの原因から遠ざかる
  • 適度な運動をする
  • 笑う
  • サポートを得る
  • 瞑想する

中でも、適度な運動や笑うことなどは、簡単にできるストレス解消の方法ではないでしょうか。

姿勢をよくする

これらは胃下垂だけでなく、肩こりや腰痛、ホルモンバランスや自律神経にも関わってきます。

まず、正しい姿勢で過ごすことが大切です。デスクで長時間悪い姿勢を続けてしまうと、体中の筋が固くなってしまったりします。椅子に座るときは深く座ることや、緊張しすぎない姿勢が大切です。

急激なダイエットをしない・バランスのとれた食生活を送る

急激なダイエットは短期的に体重が激減することから、心身の健康に大きな影響を与えます。

精神面でもストレスがかかってきますので、そういう意味でも胃に大きな負担となります。

一度ダイエットを始めてしまうと効果を出したい一心で進めてしまう人がいますので、周囲の人が気を配ることも必要です。

バランスのとれた食生活によって、体にきちんと必要な養分を行き渡らせることが重要です。

まとめ

胃下垂はもともと筋力の弱い人や、急激に痩せた人に起きやすいものです。特に消化不良は胃下垂の人が起こしやすい症状のひとつです。

胃はごはんを食べる上で、とても大切な臓器です。健康な胃でおいしいものを、おいしく食べるためには、胃下垂でなくとも胃をいたわった生活習慣が大切なのは言うまでもありません。

胃下垂に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:妊娠・出産, 生活習慣, 精神・神経, 胃腸]

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