更新日:2017年06月09日
間質性肺炎とは?
肺は、1つ1つが直径0.1mmから0.2mm程度のぶどうの房のような袋状の「肺胞」が集まってできていて、細かいスポンジのような作りになっています。
気管や気管支を通ってきた酸素は肺胞の内側に入り、肺胞の外側にある毛細血管の血液にのって体内に供給されます。
一方で、体の各所で不要となった二酸化炭素は血液によって運ばれ、肺胞内に放出され、気管・気管支を通って体外に排出されます。
この「肺胞」を作っている壁(肺胞間隔壁)を「肺間質」といいます。
細菌感染などによって肺胞(肺実質)に炎症を起こすものを細菌性肺炎と呼びますが、肺胞の外側(肺間質)に線維化起こすものは「間質性肺炎」と呼ばれます。
間質性肺炎は、繊維化によって線維状の肺の組織が壊れてかたくなってしまいます。
間質性肺炎にはいくつかのタイプがありますが、進行して炎症を起こした細胞が線維化し、肺胞の外側が厚く硬くなって呼吸が困難になった状態は肺線維症と呼ばれます。
原因は不明な場合もあり、一般的な肺炎と比べて治療が困難だと言われています。
間質性肺炎の原因
一般的に、肺炎といえば肺胞か気管支の炎症をさします。
肺炎の原因は、ほとんどが細菌やウイルスといった病原微生物の感染によるものです。
一方、間質性肺炎の原因は薬などによって受ける刺激で発症します。
主な原因は以下のものになります。
- 金属粉や石綿などの粉じんの吸入
- ホコリ・ペットの毛等の慢性的な吸入
- 関節リウマチや皮膚筋炎などの膠原病
- 市販の薬
- サプリメント
- 漢方薬の小柴胡湯など
風邪薬について
平成15年に厚生労働省が製薬会社に対し、風邪薬に関節性肺炎の副作用があることを明記するように徹底させました。
風邪薬の説明書には「たんを伴わない空せき、発熱等の症状が悪化した場合、服用を中止するとともに、医師の診療を受けること」と記載されています。
説明書には「・・回服用しても症状が回復しない場合には、医師の診療を受ける」という旨の記載がされていますので、必ず使用回数や容量の制限を守って服用しましょう。
【参考】一般用かぜ薬による間質性肺炎に係る使用上の注意の改訂について(厚生労働省)
その他、添付文書をみると分かりますが、かなり多くの薬剤において間質性肺炎が起こりうることが記載されています。
原因が特定できない「特発性間質性肺炎」には医療費の助成がある
原因が特定できないものを「特発性間質性肺炎」といいます。(生活環境や遺伝子が影響すると考えられています。)
特発性間質性肺炎には以下の種類があります。
- 特発性肺線維症
- 急性間質性肺炎
- 非特異性間質性肺炎
- 特発性器質化肺炎
- 剥離性間質性肺炎など
特発性間質性肺炎については、医療費は公費負担対象の難病に指定されています。
医療費の助成の基準など、詳しいことについては、お住いの市町村の保健所、通院先の病院や福祉センターでご相談ください。
間質性肺炎の症状
間質性肺炎の代表的な症状は次の2つになります。
- 呼吸困難
- 乾性咳嗽(たんのでない乾いた咳)
呼吸困難
間質性肺炎に伴う呼吸困難は、いくら息を吸っても、酸素が入ってきているように感じない息苦しさがあります。
最初は階段や坂道をのぼるときに感じる程度ですが、症状がすすむと歩行中や入浴中、排便中といった日常生活の中でも感じるようになってきます。
さらに症状が進行すると、着替えなどの動作でも息切れがおこり、日常生活に支障をきたすようになります。
乾性咳嗽
肺が持続的に刺激され続けることにより、季節に関係なくせきをするようになります。
痰は気管支や肺胞の炎症によってつくられるため、通常の肺炎では痰を伴う湿ったせきがでますが、間質が硬くなる間質性肺炎では、痰を伴わない乾いた咳がでます。
進行して肺線維症になると、持続する咳によって肺が破れて呼吸困難などに陥り、心不全を起こすこともあります。
間質性肺炎の進行するスピードは原因などによって異なりますが、長年かけて少しずつ症状が進み、日常生活に支障をきたすまでに数年かかります。
自覚症状が現れるころにはかなり病状が悪化している人が多くなります。
また、普通の風邪の症状の後で急激に呼吸困難となって病院に運ばれることもあります(急性増悪)。
症状がさらに進んで肺が硬く縮むと蜂巣病変といわれる穴(嚢胞)ができ、肺としての機能が大幅に衰えます。(蜂巣肺といいます)
検査と診断
問診
各種の検査を行う前に問診を行います。
現在の生活状況、息苦しさ、せき、痰などの状況を確認したり、喫煙や仕事場での粉塵の状態、ペットやホコリ、病歴など、詳しく問診していきます。
身体上の診断・所見
間質性肺炎では、胸部聴診において、マジックテープをはがすような「パチパチ」「バリバリ」という音(ベルクロラ音・捻発音)が聞かれます。
また、間質性肺炎の呼吸器障害によって、手足の指の末端が太鼓のばちのように丸みを帯びる、ばち指が生じることがあります。
胸部画像検査
X線やCTなどで肺の病変位置や肺の縮み具合を検査します。
間質性肺炎の初期では、X線検査において、肺が白っぽくぼやけて見える「すりガラス様陰影」が見られます。
また、CT検査では、高分解能CTといって1〜3ミリ程度の薄いスライス幅で肺の状態を見る検査があり、詳細な状態が確認できます。
間質性肺炎から線維化が進むと、嚢胞がハチの巣状に見える蜂巣肺が見られます。
呼吸機能・肺機能検査
スパイロメトリーといわれる肺活量など測定検査を行い、体格や年齢から求めた平均値と比較して間質性肺炎の重症度を検査します。
血液ガス検査
血液中の酸素量などを測定します。
初期の間質性肺炎では、体を動かしているときの呼吸困難が症状として多いのですが、進行していくと運動をしていないときにでも酸素量が少なくなったり、呼吸の回数が増えたりします。
6分間歩行検査
30メートル程度の平坦な道を6分間歩きます。
この時、できるだけ早く歩行してその距離や脈拍、酸素量などを測定します。
心肺運動負荷検査
自転車やルームランナーのような機械を使って、運動による負荷を体にかけて、酸素の消費量や換気量などを計測していきます。
血液検査
血液検査によって、炎症の強さや肺組織の破壊の程度を検査します。
- 炎症の強さ:LDH(乳酸脱水酵素)、血沈、CRPなど。(ただし、通常の風邪などでも上昇します。)
- 肺組織の破壊の程度:SP-A、SP-D、KL-6など
また、膠原病に関わる間質性肺炎の可能性がある場合は、自己抗体の検査も行います。
気管支鏡検査
気管支鏡という器具を使って検査をします。
気管支鏡は、胃カメラと同じような作りをした器具ですが、直径が4ミリ程度と細く、口または鼻から気管や気管支へ挿入して、直接、気管支粘膜の異常などを確認します。
気管支肺胞洗浄
気管支鏡から無菌の温生理食塩水を注入し、それを回収します。
回収した液体を調べることで、肺の炎症の状態や感染、粉塵などを確認することができます。
経気管支肺生検
気管支鏡を使って、鉗子(手術でつまんだりする医療器具)で肺の一部を採取して検査します。
肺感染症、悪性腫瘍などの検査ができますが、採取できる組織が小さいため、特発性間質性肺炎には次の外科的肺生検が必要とされています。
外科的肺生検
胸壁に穴を開けて胸腔鏡を差し込んで行う方法と、肋骨の間を開いて行う方法があります。
全身麻酔で行うものですが、大きな組織を採取できるため、より正確な診断を行うことができます。
ただし、治療ではなく検査でありながら、体への負担も大きいので、医師とよく相談して検査を受けることが必要です。
間質性肺炎の治療
薬物療法
間質性肺炎の治療法は、主に以下の薬を用いた薬物療法になります。
- ステロイド
- 免疫抑制剤
- 抗線維化薬など
しかし、これらが効きやすい病型とそうでないものとがあり、いずれの薬剤も副作用が多いため、間質性肺炎の進行が緩やかな場合には、これらの薬剤を服用せずに、鎮咳剤などによる対症療法が行われることもあります。
在宅酸素療法
血液中の酸素濃度が低くなり、日常生活に支障がでる場合には、酸素濃縮器や液体酸素、酸素ボンベを設置して、鼻から酸素を吸入する酸素療法も行われます。
呼吸リハビリテーション
息切れなどの症状があると、動きたくなくなってしまい、体が衰えてしまいます。
そのことで、さらに息切れがひどくなるといった悪循環に陥ってしまいます。
肺の病気 → 息切れなどの症状 → 動きたくない → 足腰の衰え → さらなる息切れなど
この悪循環を避けるために行うのが呼吸リハビリテーションです。理学療法士などの指導のもとで、主に足を使った運動を行っていきます。
週に2回、およそ2か月程度を一つの期間として、継続していきます。運動と一緒に生活習慣、禁煙なども指導されることが多いです。
特発性間質性肺炎について
前段でも説明してきましたが、特発性間質性肺炎とは、間質性肺炎の中でも原因が判明していないもので、特定疾患に指定されています。(認定されると医療費の助成が受けられます。)
喫煙が関係していると言われる特発性肺線維症
特発性肺線維症は、特発性間質性肺炎の中でも治療が難しいと言われていて、50才以上で自覚症状を感じることが多く、女性よりも男性の方が多くなります。
特発性肺線維症の患者さんのほとんどは喫煙者です。
遺伝について
家族性肺線維症といって、家族で特発性間質性肺炎のような疾患になることがあります。
肺胞を拡げる作用がある遺伝子の異常により生じますが、発症年齢は小児から50歳以降まで程度に応じて様々です。
家族の場合、同じ生活環境で過ごすことになりますので、影響をうけるものが同じであり、体質も近いと考えられます。
家族に間質性肺炎の人がいる場合、喫煙などの危険因子となるものは避けるようにしましょう。
予防・生活習慣での留意事項
うがいや手洗いを徹底し、適度な運動やストレス解消によって免疫力をつけ、インフルエンザや風邪をひかないように気を付けること、ペットの毛などを吸わないようにまめに掃除をすることなどが予防につながると考えられます。
禁煙をする
原因がわからない特発性間質性肺炎のうち特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎は、喫煙が関連していると言われています。
また、直接の原因でなくても症状を悪化させることになりますので、禁煙はすぐに始めた方がいいでしょう。
睡眠をしっかりととる
睡眠不足や疲れは急激な悪化につながることがあります。
また、睡眠のすぐ前に飲食をすると誤嚥(食べ物が気管に入ってしまうこと)の原因にもなりますので、注意が必要です。
看護師からひとこと
間質性肺炎だからといって、すぐに入院や予後不良に結びつくわけではありません。
通院しながら、安定的に経過をみていくことも可能な病気です。
まとめ
原因
カビ、粉、金属粉、石綿などを長期にわたって吸い込むことや、抗癌剤、抗生物質、不整脈の治療薬、漢方薬などの一部も原因となります。
間質性肺炎が進行すると炎症を起こした細胞が線維化し、肺胞の外側が厚く堅くなり、肺の機能が衰えていきます。
予防
明確な予防法はありません。不用意に薬を飲まないことに気を付けましょう。
また、喫煙は、間質性肺炎の一部の原因と言われていることや、病状の悪化が懸念されています。禁煙することも有効な可能性があります。