更新日:2017年09月19日
副鼻腔炎とは?
副鼻腔炎とは何らかの原因で「副鼻腔」に炎症が起きる病気です。
副鼻腔は頭蓋骨にある空洞の事で左右それぞれ4個ずつ(上の図で1前頭洞、2篩骨洞、3蝶形骨洞、4上顎洞)計8個あり、鼻腔(鼻の穴)とつながっています。
副鼻腔炎には「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」があり、「急性副鼻腔炎」が慢性化してしまった「慢性副鼻腔炎」は蓄膿症とも呼ばれます。
慢性化してしまうと治療は長期間に及ぶため急性副鼻腔炎の間に完治するのが望ましいのですが、急性副鼻腔炎の多くは風邪に引き続いて起きるため「風邪が長引いている」とか、体質から「アレルギー性鼻炎だと思っていた」と思いがちなので注意が必要です。
副鼻腔のある場所
- 前頭洞(ぜんとうどう):額の辺り
- 篩骨洞(しこつどう):両眼の間
- 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう):篩骨洞の奥
- 上顎洞(じょうがくどう):鼻の両側の頬付近
副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎は鼻腔と繋がっている自然孔が炎症による腫れで塞がり、自然孔から排出されるはずの分泌液が副鼻腔内に留まってしまうことで起きる病気です。
副鼻腔炎を発症する原因の多くは、鼻腔が風邪などで細菌やウィルスに感染した結果炎症を起こし、その炎症が副鼻腔にまで及んでしまうものですが、それ以外にも一見鼻とは結びつかないような様々な原因があります。
虫歯も放置して悪化すると、鼻と近いため、虫歯にある最近が副鼻腔に入ってしまうことがあるのです。
副鼻腔炎の主な原因
- 風邪(ウィルスや細菌による感染)
- 鼻の炎症
- 咽頭炎や扁桃炎
- アレルギー性鼻炎
- 大気汚染
- 偏った食事
- 虫歯の放置
- 歯の治療(インプラント、親知らずの抜糸、奥歯治療など)
- ストレス
- 体力や免疫力の低下
- 真菌(カビ)の感染(副鼻腔真菌症)
- 喘息(気管支喘息、アスピリン喘息)
- 鼻中隔が曲がっている(鼻中隔弯曲症)
- 急激な気圧の変化(気圧性副鼻腔炎)
- 逆流性食道炎(逆流した胃酸が気道に流れ込む事が原因)
- 外傷
- 遺伝
- 原因不明(原因不明の鼻茸が多数できる「好酸球性副鼻腔炎」)
副鼻腔炎の症状
慢性副鼻腔炎は急性副鼻腔炎が慢性化して起きることが多いため、どちらも症状はよく似ています。違いとして、急性副鼻腔炎の方が頭痛が強く、発熱を伴うことがあるということを覚えておきましょう。
慢性副鼻腔炎には変化の少ない「安定期」と風邪などで悪化する「急性増悪期」とがあります。
鼻の症状
- 鼻がつまる(鼻閉)。
- 鼻水が黄色い。
- 鼻水が止まらない。
- 口や鼻がくさい。
- 鼻水がドロッとしている。
- 鼻がつまっているため、口呼吸になる。
- 食べ物の匂いや味がわからない。
- 鼻がつまっているため常に息苦しい。
- 鼻水が喉に垂れてくる(後鼻漏)。
- 鼻茸ができる(鼻の中にできるポリープが鼻茸ですが、胃や大腸のポリープと違い癌化することはありません)。
副鼻腔は周囲のいろいろな器官とつながっているため、鼻だけでなく周囲の臓器にも症状が出る場合があります。
- 歯が痛い。
- 咳がでる。
- 体がだるい。
- 頭がボーッとする。
- 頭痛や頭重感がある。
- 顔面が痛い(おでこ、頬、目の奥、両目の間など)。
副鼻腔炎の予防法
副鼻腔炎は急性副鼻腔炎のうちに完治できればよいのですが、慢性化してしまうととても厄介な病気です。
副鼻腔炎の原因の最たるものは雑菌(ウィルスや細菌)による感染なので、予防で一番大事なことは風邪をひかない・風邪を長引かせないことです。
再発を繰り返すことも多いので、次のことに留意しましょう。
日頃心がけること
- 風邪を引かない。
- 適度に運動する。
- マスクを着用する。
- 鼻うがいをする。
- 部屋を綺麗にする。
- 水分を取りすぎない。
- バランスの良い食事を心がける。
- ストレスをためないようにする。
- 定期的に空気の入れ替えをする。
- 鼻をすすることをやめて鼻をかむ。
- ツボを押す(風池、印堂、上星、合谷、迎香など)。
- 冬であれば室内を加湿すること。
- 入浴して体を温めて、鼻の通りをよくする。
鼻環境を清潔に保ち、免疫力が落ちないように規則正しい生活を送る事が重要です。
副鼻腔炎と合併症
副鼻腔の周囲には目・耳・脳などいろいろな臓器があるため、複数の病気との関連が考えられます。
副鼻腔炎が原因で起きる可能性のある病気
副鼻腔に溜まった膿が周囲の組織に影響をあたえることで発症します。
- 耳の合併症:中耳炎など。
- 喉の合併症:気管支炎など。
- 眼の合併症:結膜炎、眼科蜂巣炎、視力低下など。
- 脳の合併症:脳膿症、脳腫瘍、髄膜炎など。
治療(内視鏡下副鼻腔手術)による合併症
副鼻腔は複雑な形態をしているため、手術操作により周囲の臓器を損傷する危険性があります。
- 出血
- 目や脳の損傷
- 術後感染症
- 声質の変化
副鼻腔炎と併発しやすい病気
- 中耳炎
- 慢性気管支炎
- 気管支拡張症
- びまん性汎細気管支炎
- アレルギー性鼻炎
- 自律神経失調症
- 不安神経症(パニック障害)
- 喘息(気管支喘息、アスピリン喘息)
副鼻腔炎の検査
副鼻腔炎の検査は、鼻鏡や内視鏡で「直接患部を見る検査」とレントゲン検査のような「画像検査」が中心になります。
鼻鏡検査
鼻鏡という器具用いて鼻の入り口を開き、鼻の中を観察します。
鼻粘膜の腫れ具合、鼻汁の有無、鼻茸の有無などを調べます。
内視鏡検査・ファイバースコープ検査
細い内視鏡検査やファイバースコープを用いて副鼻腔の開口部を観察します。
鼻鏡ではわからない鼻の奥の様子や膿の性状を調べます。
レントゲン検査
炎症部位や範囲、炎症の程度、副鼻腔内に溜まっている分泌液の程度を観察します。
原因が歯にないか、腫瘍と疑われる影がないかなどもわかります。更に詳しい情報が必要な場合はCT検査やMRI検査を行います。
細菌培養同定検査
分泌液を採取して培養します。細菌の有無、細菌がいれば原因菌が何かを特定します。
副鼻腔炎の治療法
副鼻腔炎の治療は主に耳鼻咽喉科で行われます。
副鼻腔炎の症状は様々なので症状に応じた治療法が選択されます。
治療期間の目安は次のようになります。
- 急性副鼻腔炎 → 30日未満
- 慢性副鼻腔炎 → 半年~1年
薬物療法
症状に合わせて必要な薬剤が処方されます。
- 抗菌薬・抗生物質:細菌の増殖を抑えたり死滅させたりします。
- 解熱鎮痛薬:炎症による痛みを和らげます。
- 去痰剤:痰だけでなく膿も排出する働きがあります。
- 漢方薬(辛夷清肺湯、半夏コウボク湯、葛根湯加川きゅう辛夷など)
- 気道粘液調整薬:鼻水を排出しやすくします。
- ステロイド:炎症を抑えます。
鼻吸引
- 目的:たまった鼻水を取り除き、空気の通り道を確保します。
- 方法:吸引ノズルを鼻に入れ、たまった鼻水を吸引します。
鼻洗浄
- 目的:本来の生理機能を回復させます。
- 方法:生理的食塩水で直接鼻の中を洗浄し、鼻の内部に溜まったドロドロの鼻汁を取り除きます。
ネブライザー療法
- 目的:炎症や腫れを抑えます。
- 方法:鼻の奥や副鼻腔に届くように薬剤(抗生剤やステロイド剤など)を霧状にして鼻から吸引します。
手術(内視鏡下副鼻腔手術)
抗生物質の効果がみられない場合や鼻茸が自然孔を塞いでいる場合などに選択されます。また、鼻中隔弯曲症(鼻の左右を分ける壁が曲がっている)がある場合は、同時にその手術を行うこともあります。
- 目的:本来の自浄作用を回復させます。
- 方法:副鼻腔を局所麻酔し鼻の穴から内視鏡を入れて副鼻腔の空洞のつまりや鼻茸を除去し鼻の通りを良くします。
術後は完全に回復するまで数週間かかります。
妊婦さんが副鼻腔炎になった場合
妊婦さんは免疫力や体力の低下が起こりやすく、体調を崩しやすい時期状態といえます。
免疫力が低いことで風邪を引きやすくなり、薬が使えない上に体力がないので悪化してしまい副鼻腔炎を発症してしまうケースが多くあります。
- 体力の低下 → 胎児へ栄養を与え続けているため体力が低下します。
- 免疫力の低下 → 赤ちゃんを異物と認識して攻撃しないように、妊娠中は身体があえて免疫力を低下させています。
妊娠中の副鼻腔炎の治療は耳鼻科もしくは耳鼻咽喉科で行われますが、基本的に薬は処方されません。
ネブライザー治療や上顎洞穿刺(膿を排出する処置)を行うことで症状の緩和を図ります。
根本的な治療ではなく対処療法になってしまうので、通院する意味がないと考えて治療を行わない方もいますが、何もせず放置すると慢性副鼻腔炎に移行する可能性もあるうえに、副鼻腔の周りの器官(目・脳・耳など)に合併症を引き起こす危険もあります。
胎児への影響が心配なので薬は使いたくないけれど、症状がひどくて辛いという場合には、漢方薬を利用するという方法があります。
- 漢方薬(半夏コウボク湯):副鼻腔炎の症状の1つである「後鼻漏」や、つわりに効くと言われています。
漢方薬も副作用が出ることがあるので自己判断は禁物です。主治医に相談してから使用するようにしましょう。
副鼻腔炎と子どもの関係
子どもが発症する副鼻腔炎を「小児性副鼻腔炎」と呼びます。
原因として多いものは風邪やアレルギーですが、親が副鼻腔炎を患っていると子どもも副鼻腔炎を発症することが多いため、遺伝が関係しているのではないかと考えられています。
「小児性副鼻腔炎」は小さい頃は繰り返す傾向がありますが、成長して顔や鼻の骨が発達することで10歳前後には自然治癒することが多く、積極的な治療は必要ないという意見もあります。
しかし、治療が必要かどうかを自己判断するのはとても危険です。
大半の「小児性副鼻腔炎」が自然治癒するとはいえ、放置したために炎症が目・耳・脳に波及して合併症を起こして、重度の副鼻腔炎になり、大人になっても症状に苦しむ場合があります。
子どもは症状を訴えにくいので、大人が子どもの異変に早く気づいてあげましょう
意識したい子どもの症状
- 顔を痛がる。
- 鼻ダレがある。
- 鼻づまりがある。
- 2週間以上続く鼻汁。
- いびきがひどい。
- 中耳炎になりやすい。
- 鼻声になっている。
- いつも口呼吸をしている。
- 膿の混じった鼻水がでる。
- 注意力や記憶力が低下している。
- 痰が絡んだような咳をしている(湿性の咳)。
症状に気づき、良くなる気配がないようであれば早めに医療機関を受診しましょう。
副鼻腔炎のまとめ
- 原因の多くは細菌感染によるもの。
- 鼻づまりは副鼻腔炎の初期症状。
- 症状は鼻以外にも多岐にわたる。
- 一番の予防法は風邪をひかないこと。
- 妊婦さんは副鼻腔炎になりやすい。
- 治療は薬物治療が中心。
- 初期はただの鼻炎や風邪と間違えやすい。
- 子どもの副鼻腔炎は自然治癒することが多い。
- 副鼻腔炎は他人にうつることはない。
- 放置すれば慢性化し完治が難しくなる。