更新日:2017年10月19日
目次
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の何がいけないの?
LDLコレステロールが高いと体に良くないといわれますが、どのような理由でそのようなことが言われているのでしょうか。
まず、脂質異常症という病気があります。これは血液中の脂質が「異常な値」となっている病気です。この「異常な値」とは、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)が、次のような状態であることをいいます。
LDL(悪玉)コレステロール
LDL(悪玉)コレステロールの基準値は以下のように定められています。
- 140mg/dL以上
この状態を「高LDLコレステロール血症」といいます。 - 120〜139mg/dL
この状態を「境界域高LDLコレステロール血症」といいます。
HDL(善玉)コレステロール
HDL(善玉)コレステロールの基準値は以下のように定められています。
- 40mg/dL未満
この状態を「低HDLコレステロール血症」といいます。
トリグリセライド(中性脂肪)が高い状態
- 150mg/dL以上
この状態を「高トリグリセライド血症」といいます。
動脈硬化を引き起こす脂質異常症(高脂血症)は、自覚症状がほとんどないので、気付かないうちにどんどん進行してしまいます。中でも、高LDL(悪玉)コレステロール血症の状態になると、動脈硬化の危険性がさらに高まります。
健康診断等でLDL(悪玉)コレステロールの値が高い状態であることが判明した場合は、医療機関を受診することが必要です。医療機関では、通常はまず食事・生活指導を行い、値が下がらない場合には内服治療を行っていきます。
動脈硬化とは
動脈は、心臓から体の各部分へ血液を運ぶ重要な役割を担っています。そして、単に血液を運ぶだけでなく、状況に応じて心臓と血流をコントロールしながら、ポンプのように効率よく血液を運んでいます。そのため、本来、動脈はとてもしなやかで、簡単に破れたり詰まったりしません。
しかし、動脈が硬くなったり、動脈の壁が厚くなったりすると、動脈の正常構造が壊れてしまい、動脈本来の動きができなくなってきます。こういう状態を動脈硬化といいます。動脈硬化とは、病名ではなく、こういった動脈の状態を表しているのです。
動脈硬化のしくみ
動脈は、内膜、中膜、外膜の三層構造になっています。この一番内側の内膜は血圧が高くなったり、喫煙したりすることなどにより、傷ついてしまいます。
内膜に傷がついてしまうと、そこからその内側へ、LDL(悪玉)コレステロールが付着していきます。LDL(悪玉)コレステロールが動脈の内膜へ付着すると、LDL(悪玉)コレステロールは酸化します。
すると、白血球が活動をはじめ、その一部がマクロファージ(体内のゴミを掃除する細胞)となり、酸化したLDL(悪玉)コレステロールを次々と食べていきます。
その過程によってプラークが形成され、血管の内側を細くしてしまいます。そして血流の減少や、血栓(血液の塊)ができてしまうのです。このような状態になると動脈は硬くなり、しなやかな弾力を失います。
動脈硬化の仕組みについて、わかりやすい動画がありましたので、リンクしておきます。
動脈硬化が進行するとどうなるのでしょう。
動脈硬化が進行すると、動脈のしなやかさがなくなるため、血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。
血栓ができると、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすことになります。
日本人の死因の第1位はがんですが、第2位と第3位は「狭心症、心筋梗塞などを含めた心臓病」、「脳出血や脳梗塞などの脳卒中」となっています。この心臓病と脳卒中は、どちらも動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。
心臓病と脳卒中を合わせると総死亡の約30%を占めるほどになります。また、他にも動脈硬化とそれに伴う高血圧は、腎臓や目の病気の原因にもなりますので、動脈硬化の予防は非常に大切です。
動脈硬化は若い頃から症状なく進行していきます。
年齢を追うごとに、LDL(悪玉)コレステロールなどが動脈の内膜に沈着していきますが、こういった状態は、人によっては20代から始まっていきます。この状態が継続し、しだいに内膜の沈着が大きくなると、血管が内側に盛り上がり、血管が狭くなっていきます。
前述のとおり、血管が狭くなると、血栓などができて、心筋梗塞などの発作が起きるようになります。したがって、動脈硬化の原因は、20代から静かに進行している場合がある、ということを意識することが大切です。
LDL(悪玉)コレステロールを下げるには
動脈硬化の予防には、LDL(悪玉)コレステロールを下げることが重要になります。そのためには、まず、コレステロールがどのように体内に蓄積されていくのかを知る必要があります。
コレステロールの多くは体内で作られる
コレステロールは、細胞膜、胆汁酸、ホルモンなどを構成する物質として、体に欠かせないものです。
このコレステロールは毎日肝臓で作られています。その量は、体重50kgの人で、1日に600〜650mg程度です。
この体内で合成されるコレステロールは、体内のコレステロールの量の8割〜9割ほどの量となります。一方、食事から吸収されるコレステロールは、1割〜2割になります。
したがって、コレステロールのほとんどが体内で作られていることになります。
HDL(善玉)コレステロールとLDL(悪玉)コレステロールの違い
HDL(善玉)コレステロールと、LDL(悪玉)コレステロールは、それぞれ、コレステロールと「リポタンパク質」という物質を併せたものをいいます。その「リポタンパク質」の血管内の役割の違いにより、HDLかLDLかになります。
HDL(善玉)コレステロールは、体内に余ったコレステロールを回収する働きがあり、LDL(悪玉)コレステロールは、全身の組織にコレステロールを運ぶ働きをします。
体内でコレステロールが多く作られるとLDLがコレステロールを運ぶことになります。このLDLが血液の中を通る過程で動脈硬化を引き起こしてしまうのです。
一方で、HDL(善玉)コレステロールは動脈硬化の原因にはなりません。HDLは余ったコレステロールを回収しますので、HDL(善玉)コレステロールが少なくなると(40mg/dl以下)、狭心症や心筋梗塞の危険性が高くなります。
LDLコレステロールを下げる方法とは
コレステロールの8割〜9割が肝臓で作られるものである以上、体内のコレステロールの総量を少なくするためには、体の外からのコレステロールの摂取を控えることと同時に、体内で作られるコレステロールをコントロールすることが大切になります。
肝臓で作られるコレステロールの量は、食事によって大きく変化します。特に脂肪が大きく作用し、さらにその中でも、「飽和脂肪酸」を多く摂取するとコレステロールの合成機能が高まり、多くのコレステロールが作られてしまいます。
逆に「不飽和脂肪酸」を摂取すると、コレステロールの合成が減少します。また、食物繊維を食べることや、運動することによっても、体内で作成されるコレステロールの量は減っていきます。
体内のコレステロールの合成を減少させる食べ物(不飽和脂肪酸を多く含む食べ物)
不飽和脂肪酸には様々な種類があります。中でも、オレイン酸、DHA、EPAなどは、LDLコレステロールを減少させるのに効果があるといわれています。
これらの成分を多く含む食べ物として、以下のものを覚えておきましょう。
- 魚介類 青魚、マグロなどの脂身など
- 大豆製品 豆腐、納豆、味噌など
- その他 オリーブオイル、菜種油、ゴマ油、魚卵など
体内のコレステロールの合成を増加させる食べ物(飽和脂肪酸を多く含む食べ物)
- インスタントラーメン(油で揚げたもの)、ポテトチップス、チョコレート
- クッキー、ビスケット、ドーナッツ、ケーキ
- 脂身の多い肉、ベーコン、ソーセージ、ハム
- チーズ、バター
LDLコレステロールの酸化を防ぐ食べもの
LDLコレステロールは酸化することにより、動脈硬化へ繋がっていきますので、LDLコレステロールの酸化を防ぐ食べ物をとることも大切です。
LDLコレステロールの酸化を防ぐには、ビタミンEを多く含む食べ物が効果的です。
また、ビタミンCを一緒にとると、その効果が高まります。ビタミンA、ポリフェノール、アスタキンサンチンにも効果がありあす。
ビタミンA・Eが含まれる食べ物
魚、鶏肉、レバー、油を使って調理した野菜など
ビタミンCが含まれる食べ物
意外に摂取が難しい成分で、野菜からはピーマンやブロッコリーに多く含まれます。他の野菜にはあまり含まれていません。
果物ではかんきつ類、キウイ、イチゴなどに多く含まれます。一度に多くのビタミンCを摂取しても、3時間程度で尿として体外に排出されてしまいますので、毎食摂取していくのが効果的です。
ポリフェノール
ポリフェノールは植物が自らの体を太陽の紫外線や活性酸素などから守るために生み出される成分です。ブルーベリー、そば、緑茶、大豆、ショウガ、赤ワインなどに含まれています。
アスタキサンチン
魚類の赤い身です。アスタキサンチンは抗酸化作用のほか、メタボ全般に効果があるといわれ、疲労の回復などにもいいようです。紅鮭などの鮭類、いくら、金目鯛、車えび、甘えび、毛蟹などに多く含まれています。
薬物療法について
LDLコレステロールが高くなってしまった場合、食事の見直しや適度な運動など、毎日の生活習慣を改善することが大切ですが、それでもLDLコレステロールが下がらない場合や、すでに高い値にある場合など、薬物による治療を行うことが必要になってきます。
薬物療法は、副作用なども伴います。必ず医師の診察を受け、医師の処方のもとで行ってください。
LDLコレステロールを下げる薬
HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)
肝臓で作られるコレステロールを抑制します。
副作用としては、手足のしびれ・痙攣、激しい筋肉痛、肝機能障害、蕁麻疹、全身発赤、顔や喉の腫れなどの過敏症が起こることがあります。特に腎機能の問題がある人には副作用が現れやすいので注意が必要です。
陰イオン交換樹脂
腸内で作用し、コレステロールを便として排泄します。
副作用は比較的少ないようです。便秘や腹部膨満感、皮膚症状などが起こることがあります。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
小腸からコレステロールが吸収されないように作用します。
比較的副作用は少ないようですが、横紋筋融解症やアナフィラキシー様症状、肝障害などが生じることがあります。一般的な副作用としては便秘、下痢、腹部膨満、腹痛や吐き気などの症状があります。
なお、中性脂肪を下げるものとしては、フィブラート系薬、ニコチン酸誘導体などがあります。
看護師からのひとこと
コレステロールを下げるには、まずは生活習慣の見直しが必須!生活習慣を変えずに薬に頼っても、コントロールはできません。
普段の生活に定期的な運動を取り入れつつ、食事の内容を改善しましょう。医療機関では専門家による栄養指導を受けられますよ。
まとめ
- LDL(悪玉)コレステロールは、動脈硬化を引き起こす危険因子となり、一定以上の値(140mg/dl)になると注意が必要です。
- LDLコレステロールが高いなどの状態を脂質異常症(高脂血症)といい、自覚症状はありませんが、早期に発見して対策をすることが大切です。
- 動脈硬化は、動脈が硬くなったり壁が厚くなったりして、動脈の構造が壊れてしまい、血流が悪くなります。
- 動脈の内膜へ、LDLコレステロールが沈着することをきっかけとして、動脈が硬くなり、動脈硬化の状態となってしまいます。
- 動脈硬化は心臓周辺の冠動脈、大動脈、脳、腎臓などの体にとって重要な臓器を障害します。
- 動脈硬化により、血栓などができると、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤などを引き起こすことがあります。
- コレステロールの8割〜9割は体内で作られます。コレステロールが体内で作られることを抑制するためには、食事に気をつけることや、適度な運動が大切になります。
- コレステロールの体内合成を抑制するには、不飽和脂肪酸を摂取することが効果的で、代表的な不飽和脂肪酸にはオレイン酸、DHA、EPAなどがあります。
- 動脈硬化予防には、LDLコレステロールの酸化を防ぐことも重要で、ビタミンA・C・E、ポリフェノール、アスタキサンチンなどを積極的に摂取することが必要です。
- 食事や運動によっても、LDLコレステロールが下がらない場合は、薬物による治療が必要になります。