「キーン」「ピー」やセミのようなツライ耳鳴り。対処法に悩んでいる人は多いと思います。耳鳴りと合わせて、めまいや熱、しびれなどがある場合は何かの病気が隠れていることもあります。また、ストレスも耳鳴りの原因となってきます。症状や受診科、治療法を看護師がわかりやすく解説します。

更新日:2017年11月17日

この記事について

監修:大河内昌弘医師(おおこうち内科クリニック院長)

執筆:当サイト編集部(看護師

耳鳴りとは

耳鳴り

耳鳴りとは、自分以外には聞こえない音が、耳や頭に響くことです。その聞こえ方は人によってさまざまで、同時に起こる症状もその原因によってさまざまです。

耳鳴りの聞こえ方には「ピー」や「キーン」などの高音のものや、「ジー」や「ヴー」など低く響くものがあります。音の高低は病気の診断には関係ないことがほとんどですが、耳鳴りと同時にあらわれる症状は、原因となる病気の特定に重要な要素です。

そのため、耳鳴りが聞こえるときは、どんな時に聞こえるか、またほかにどんな症状があるかを注意している必要があります。できればメモをしておいて、受診時に医師に伝えましょう。


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耳鳴りの治療・対処法・受診する科

聞こえの悪さと耳鳴りがある場合

【受診する科】耳鼻科

耳鳴りは難聴のサインとしてあらわれることがあります。突発性難聴では多くの場合、耳鳴りも同時に感じます。

また、一般的な難聴でも、難聴が起こっているのと同じ音域の耳鳴りを感じることが多いです。年を取って耳が悪くなる場合、高音から聞こえなくなるので、高音の耳鳴りが聞こえている場合は難聴が始まっているのかもしれません。

難聴を伴う耳鳴りでは、補聴器を使って聞こえが改善すると同時に、耳鳴りも楽になることが多くあります。

難聴で耳に集中するあまり耳鳴りが大きく聞こえていたものが、周囲の音が聞こえることにより、耳鳴りに意識がいかなくなるためといわれています。

耳鼻科を受診し、耳鳴りについての問診と聴力検査を受けましょう。難聴のある耳鳴りの治療には、内服治療と補聴器の使用が一般的です。耳鳴りを専門に扱っている病院では、マスカー療法、TRT療法(Tinnitus Retraining Therapy, 耳鳴り再訓練療法)、ステロイド鼓室注入療法などによって治療を行います。

マスカー療法・・・耳鳴りと同じ音域の音を聞き続けることで、耳鳴りを意識しなくする治療法です。

TRT療法・・・カウンセリングと、耳鳴りに似た心地よい雑音を聞き続けることで、「耳鳴りは苦痛ではない」と脳に信じ込ませる治療法です。

ステロイド鼓室注入療法・・・鼓膜の中にステロイドを注入することで、めまいや耳鳴りなど内耳に原因がある病気の症状を緩和します。

めまいと耳鳴りがある場合

めまい

【受診する科】耳鼻科
めまいと耳鳴りが同時に起こる主な病気には、メニエール病があります。

それ以外にも、めまいと耳鳴りは同じ内耳という部分に原因があることが多く、内耳になにか障害が起こると2つの症状は同時に起こりやすくなります。耳鼻科で耳の検査をし、主にステロイドなどの内服治療が行われます。

顔面の違和感と耳鳴りがある場合

【受診する科】神経内科

顔面の違和感がある場合は神経の病気が原因の可能性があります。耳鳴りと同時に起こる場合は、聴神経に関わる脳神経の病気の恐れがあるので、早めの受診をお勧めします。

それまでにかかった病気や、内服している薬の情報が診断するにあたって特に重要になります。内科などでかかりつけ医がいる場合には、その医師から診療情報提供書をもらっていくと確実でしょう。また、そうでない場合も必ずお薬手帳を持参しましょう。

熱と耳鳴りがある場合

熱

【受診する科】内科、耳鼻科

熱からくる耳鳴りは、風邪などの感染症の延長で中耳炎になっている可能性があります。

風邪などの耳鳴り以外の症状が主に出ている場合は、まずは内科を受診して原因となる感染症を治しましょう。他の感染症に対する治療が、中耳炎など耳鳴りの原因の治療にもなります。

ほかの症状が治まったのに耳鳴りだけがずっと続く場合には、耳鼻科の受診をお勧めします。とくに大人で熱と耳鳴りや、耳垂れ(耳からの浸出液)が良く出る場合には、慢性中耳炎という状態になっているかもしれません。

慢性中耳炎は治りづらく、難聴などほかの症状を合併することもあります。中耳炎になってしまった時は、症状を繰り返さないためにしっかり抗生剤を飲み切り、菌を最後まで撃退することが大切です。

症状がなくなったからと、途中で抗生剤をやめてしまうことは、抗生剤への耐性菌を耳の中に残し、慢性中耳炎になりやすくしてしまいます。

不安感や大きなストレスと耳鳴りがある場合

ストレス

【受診する科】耳鼻科、心療内科

耳鳴りが精神的な症状と共にある場合は、更年期障害や自律神経失調症、うつ病などの病気から耳鳴りが起こっているのかもしれません。

これらの病気の区別は難しく、なかなかすっきりと完治しないものが多いため、気長に治療していくことが大切です。心の病気の治療は心療内科で主に薬の内服を行いますが、まずは耳鼻科を受診し、原因となるほかの病気がないことを確認しましょう。

自律神経に関わる耳鳴りなどの苦痛症状の緩和には、心を落ち着かせる薬や、緊張をほぐす薬の内服が中心となります。また、カウンセリングなどの心理療法や星状神経節ブロックという治療が行われることもあります。

星状神経節ブロック・・・首の付け根にある交感神経に繋がる神経節に、局所麻酔薬を注射することで神経の興奮を鎮めます。

病院で処方される薬

薬

ストミンA (一般名:ニコチン酸アミド、パパベリン塩酸塩)

内耳から、聞こえに関する脳神経に原因のある耳鳴りに対して処方される薬です。感音性難聴などに効果が期待されます。

耳鳴りに関係する内耳の蝸牛という部分の血管を拡張することと、血液の量を増やす効果があります。また、騒音に対する血液成分の変動を抑える効果があり、耳鳴りによる苦痛の緩和を期待できます。

コートリル (一般名:ヒドロコルチゾン)

ステロイド薬です。炎症や過剰なサイトカイン(情報伝達物質)の産生を抑えることで効果を発揮します。使い方を誤れば副作用に困ることがありますが、効果が出る場合には「魔法の薬」と呼ばれるほど効くことがあります。

主には抗生剤の効かない強い炎症や、自己免疫系の誤作動によって起こった悪い症状(喘息やアトピーなど)に効果があり、よく使われます。耳鳴りでは、メニエール病を初めとして原因不明の耳鳴りまで、幅広く処方されることがあります。

ステロイド薬の内服で一番多くあらわれる副作用は、脂肪が多くなることです。顔がふっくらして丸顔になったり、お腹などを中心に全身がふっくらしたりします。これは薬を減らすと元に戻る症状です。また、抵抗力が落ちて軽い感染症でもかかりやすくなるので、普段より手洗いうがいなどの感染予防に気を付けることが必要です。

ステロイド薬は、一定量から初めて効果をみながら徐々に薬の量を減らしていく必要があります。「副作用が心配だから」と自己判断で薬をやめてしまうことで、離脱症状が出て体調が急に悪化することもあります。ステロイドの治療を始めたら、医師とよくコミュニケーションを取り、指示通りに治療を勧められるようにしましょう。

メチコバールなど (一般名:メコバラミン)

ビタミンB12を補うことで、耳鳴りに関する神経や組織の細胞の正常化を促します。著効する物ではありませんが、飲みすぎて副作用が起こることもありません。

アデホスコーワ (一般名:アデノシン三リン酸)

血流を改善することで、神経や組織の機能を改善します。メニエール病など、内耳の病気から耳鳴りが起こっていると考えられる場合に、よく処方されます。著効する、ということはあまりないようですが、飲みすぎて副作用が出ることもありません。


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病院以外の対処法(漢方・ツボ・整体など)

耳鳴りは原因不明のことも多く、病院にかかっても「ちっとも良くならない」と感じる人も多くいます。病院から処方された薬も、効果がなければ漫然と飲み続けるのは嫌なものです。

そんな時に、次のような民間療法を試している方もいます。どれも西洋医学的な根拠は証明されていませんが、そもそも耳鳴りのメカニズム自体が、西洋医学的にまだ解明されていません。

つらい耳鳴りをただ我慢しているよりは、次の中から自分の体質に合って楽になるものが見つかれば非常にラッキーとも言えます。ただし、耳鳴りの原因となる深刻な病気がないかどうかは、必ず定期的に医療機関を受診して確認するようにしましょう。

漢方

漢方

耳鳴りに効くという漢方はいくつもあります。西洋医学とは全く違う見地から効能が期待される漢方なので、その種類やベストな組み合わせ方は病状や体質によっても異なってきます。

耳鳴りで病院を受診すると、一般的な薬と併用して漢方薬を処方されることもあります。また、一般的に病院から処方される薬でも、漢方薬はたくさんあります。

根拠は解明されていなくても、耳鳴りに効くという漢方に本当に有効な成分が含まれている可能性は否定できません。病院で耳鳴りに対して処方される漢方薬には、次のようなものがあります。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

筋骨の血の巡りや水分の代謝を促す作用のある漢方薬です。耳鳴りは肩から頭にかけての血の巡りの悪さも原因の一つになるので、服用することで改善を期待します。

釣藤散(ちょうとうさん)

ストレスで血圧が上がったり、頭痛が起こったりする人の調子を整える効果のある漢方です。日本東洋医学会のレポートで、頭が重い感じや頭痛、肩こりを伴う耳鳴りに、メチコバールに比べて明らかに効果があった、という結果もあります。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

更年期障害や、自律神経の乱れによる耳鳴りに効果が期待できる漢方です。イライラなどの心理面の落ち着きや、頭痛めまいなどの症状も緩和します。耳鳴りに関しては、男性にも効果が期待できます。

手軽に通販で耳鳴りに効くというものを試してみても良いですし、全国に点在する漢方薬局に行ってみるのも良いでしょう。漢方薬局では、漢方専門の薬剤師に人それぞれの体質に合った漢方を調合してもらうことができます。

ツボ

耳鳴りに効くといわれるツボは主に、耳の前後や頭の付け根の部分にあると言われます。

ツボが効く根拠となる経絡(けいらく)は、リンパでも血管でもなく、体中に張り巡らされているといいますが、その存在は実際には、未だ確認されていません。

ですが、なにより古代から「経験的に効く」といわれているからには、ツボを押すことが全くの無益というわけではないはず。

穏やかにツボと言われる部分を「耳鳴りが良くなりますように」と押すことは、気分も休まりますし、何かせずにはいられないときには良いでしょう。押しすぎや、「効かない!」といってストレスを溜めることは逆効果なので、適度に行いましょう。

整体

筋肉の調子や骨の位置を整えることで、全身の調子を上げていくのが整体です。身体をほぐすことでリラックスも得られますし、身体が軽くなるような疲労回復も得ることができます。

気分転換にもなりますし、根本治療にはなりませんが、耳鳴りも多少改善するかもしれません。

最近では整体が流行ってきていることもあり、技術不足の施術者が無理な施術を行うことで、身体を痛めてしまう場合もあるようです。整体を受けるときは、確かな経験や知識のある施術者のいる店を選び、施術中に違和感がある時はすぐに伝えるようにしましょう。

マッサージ

耳鳴りの原因が肩から頭、顔面の緊張によるものの場合、マッサージが耳鳴りを軽減することは考えられます。

マッサージにはリラックス効果もあるので、定期的に通ったり、特に症状がつらいときに利用したりすることは、心身ともに効果が望めそうです。

ビタミン剤など

サプリメント

耳鳴りの原因が感音性難聴など耳の中耳から、聞こえに関する脳神経に関わるものの場合、ビタミンB12などビタミン類の内服はある程度の効き目を期待することができます。

ビタミンB12には、神経や血液の状態を整える作用があるといわれていて、実際に耳鳴りに対して処方する医師もいます。

高齢者では、ビタミンを十分に食べ物から自然に吸収することは難しいといわれています。

高齢で難聴に悩む人は、積極的にサプリメントなどで摂取してもよいでしょう。ビタミンを摂りすぎることで悪影響はないといわれていますが、一緒に飲むことができない薬もあります。ビタミン類をサプリメントで摂取するときには、主治医か薬剤師に確認しましょう。

看護師からひとこと

原因不明でなかなか治らない耳鳴りはつらいものです。とくに、頭の中までガンガン響くような耳鳴りや、寝ることも活動することもままならない耳鳴りは、日常生活そのものを破たんさせかねないものです。

耳鳴りに悩まされていると、それ以外のことは考えられなくなるものですが、内にこもって落ち込んでしまうのはよくありません。

ひどい耳鳴りに悩まされている方の悩みを、ネット上で聞いてくれるサイトもあります。他の人には理解されづらい耳鳴りのつらさですが、そういうサイトを利用して気持ちを吐き出すのも、気分転換に良いですね。

耳鳴りの治療は日進月歩で進みつつありますが、まだまだ革新的な根本治療には遠いのが現状です。科学的な根拠が乏しくとも自分に効く治療があれば、それが一番です。症状について悲観しすぎず、適度に気分転換しながらマイペースに付き合っていくのが良いでしょう。

耳鳴りの対処について質問や回答が多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:目・鼻, 精神・神経, 薬・成分]

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