更新日:2017年12月18日
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に10秒以上呼吸が止まってしまう状態で、睡眠中に、無呼吸状態が1時間に5回以上起こり、1晩7時間位の睡眠中に30回以上この無呼吸が起こる状態を指します。
男性の3~7%、女性の2~5%、小児でも2%みられるとされており、男女で差はありません。年齢的に若くても起こりますが、50代以上で起こるのが一般的です。
睡眠時無呼吸症候群の症状
日中活動した脳や身体を休息させる為に睡眠をとりますが、その眠りの最中に呼吸が止まるという状態を繰り返すと、身体の中の酸素が減り、その酸素不足を補おうとして、身体は心拍数をあげます。
人間の体は、酸素が足りないと数分で命が危うくなりますので、身体にとって危機的状態です。そのため、交感神経の緊張が高まり、ストレスホルモンであるカテコラミンが多量に分泌されます。
つまり、本人は気付いていなくても、寝ている間に脳や身体に大きな負担がかかっているということです。結果として、きちんとした休息がとれず、日中に強い眠気や倦怠感、集中力低下などが起こり、活動に支障をきたします。
寝ている間の無呼吸は、家族に指摘されないとなかなか気付くことができません。そのため、検査・治療を受けていない多くの潜在的患者がいると推定されています。
睡眠時無呼吸症候群の症状についてまとめます。
寝ている間の症状としては、下記のような症状があります。
寝ている間の症状
- いびきをかく
- いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる
- 呼吸が止まる
- 呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
- むせる
- 何度も目が覚める
- 寝汗をかく
朝起きた時には下記のような症状が出ます。
朝起きた時の症状
- 口が渇いている
- 頭が痛い、ズキズキする
- 熟睡感がない
- すっきり起きられない
- 身体が重いと感じる
日中には下記のような症状が出ます。
日中の症状
- 強い眠気がある
- だるさ、倦怠感がある
- 集中力が続かない
- いつも疲労感がある
その他、抑うつ、月経不順、こむら返り、EDなどとも関連しています。
睡眠時無呼吸症候群というと、いびきが有名であり、最も一般的な特徴ですが、いびきの程度と重症度は比例しないこともわかっています。
「ひどいいびきだから間違いなく睡眠時無呼吸症候群」と考えるのも、「いびきはかかないから睡眠時無呼吸症候群ではない」と考えるのも誤りです。
無呼吸が起きる原因
睡眠時無呼吸症候群には、下記の3タイプがあります。
睡眠時無呼吸症候群の3タイプ
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群
- 混合性睡眠時無呼吸症候群
この中で、閉塞性が最も一般的で、全体の8割以上を占めます。気道が物理的に狭くなることで無呼吸発作が起こるものです。
中枢性とは、脳血管障害などによって呼吸中枢が障害されることで呼吸運動が消失するもので、中枢性のみで無呼吸が起こることは比較的稀です。閉塞性と異なり、気道は開存しておりますが、呼吸しようとする努力が見られなくなるのです。
混合性とは両者が混在しているタイプです。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療法
治療法には対症療法と根治療法があります。個々の患者さんに合わせた治療法が選択されます。睡眠時無呼吸症候群の治療は長い時間がかかります。
治療の種類として、CPAP療法(シーパップ療法)、マウスピース、外科手術があります。
CPAP療法
寝ている間の無呼吸を防ぐために軌道に、鼻に装着したマスクから、空気を送り続けて軌道を開存させておくという治療です。正式には経鼻的持続陽圧呼吸療法とも呼ばれます。
睡眠時無呼吸症候群を改善するために最も標準的に用いられる手法です。
最初はマスクに慣れないこともありますが、使用して眠ると「数年来経験したことのない質の高い睡眠」が得られることもあり、さほど苦痛もなく使用できます。
マウスピース
睡眠時無呼吸症候群をマウスピース(歯科装具)で治療する場合もあります。
下顎を上顎よりも前方に出すように固定させることにより上軌道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぎます。マウスピースは口腔内装置に慣れている専門の歯科医につくってもらうのがよいでしょう。
この方法は、マウスピースを付けて寝るだけですが、全ての人に効果があるわけではありません。
効果が見られるのは中等症までで、重症の場合には治療効果が不十分とされる報告もあります。重症度をきちんと評価してもらった上で、治療を始める必要があります。
外科的手術
睡眠時無呼吸症候群の原因が、アデノイドや扁桃線肥大などの場合は、摘出手術が有効になる場合があります。
顎の小さい人がなりやすいとされているため、米国では狭い上気道を広げる目的で上顎や下顎を広げる手術も行われていますが、日本ではまだこの手術を行える医療機関は限られています。
その他
神経筋刺激療法といって、睡眠中のオトガイ舌筋筋刺激により、OSAを改善させる研究や、筋機能療法といって外舌筋・内舌筋等の筋肉のトレーニングによりOSAを改善させる治療もあります。
睡眠時無呼吸症候群の予防法・対策
睡眠時無呼吸症候群の予防法、対策については下記のことを心がけましょう。
1. 太りすぎに注意して適正体重の維持を心掛けましょう
睡眠時無呼吸症候群は、肥満とも関連していますので、医師が行う治療に加えて生活習慣の改善も必要です。睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、まずは減量する余地が無いか、考えてみましょう。
2. お酒の飲み過ぎに注意しましょう
アルコールは筋肉が弛緩するので、上気道も狭くなり、いつもは出ないいびきが生じます。そして無呼吸になるリスクを高めることになりますので、お酒には注意をして下さい。
3. 耳鼻科疾患を治療しましょう
鼻に問題がある場合(アレルギー性鼻炎や副鼻空炎)は、鼻呼吸をせずに口呼吸をすることが多くなります。その結果、鼻呼吸の時よりも咽頭が狭くなるため、上気道が閉塞し易い状態になります。鼻の病気は耳鼻咽喉科で積極的に治療を行いましょう。
4. 睡眠薬の服用には注意が必要です
睡眠薬の服用は無呼吸症状を悪化させる場合がありますので、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、事前に主治医とよく相談する必要があります。
5. 寝るときの姿勢に気を付けましょう
寝る時の姿勢は、仰向けで寝るよりも、抱き枕などを使って、少し横向きで寝ると上気道の閉塞を軽減できる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の自己チェック法
- 毎晩いびきをかいているか。
- 睡眠中に呼吸が止まっていたといわれたことがあるか。
- 日中に異常に眠くなることがあるか
- 朝起きた時に、疲労感があり頭重感や頭痛があるか
- 若い頃よりかなり体重が増えた
- メタボリックシンドロームの傾向がある
まとめ
睡眠中に無呼吸になると深い睡眠を得ることができず、眠りが中断され、十分な休息を得ることができません。
自分自身ではなかなか気づきにくい病気ですが、健診や人間ドックでも見つからない病気です。
家族や周囲の人からいびきの指摘を受けている方や、「熟眠感が無い」と感じている方は、一度睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみることを検討してみましょう。
[カテゴリ:生活習慣]