心筋梗塞は動脈硬化、狭心症などから引き起こされるもので、若くても突然発症する可能性があり死に至ることもあります。また前兆や予兆などもあると言われていますので、事前に気にかけておきたいところです。心筋梗塞の原因や症状、危険因子、前兆のチェック、合併症などについてまとめました。

投稿日:2015年11月30日│更新日:2016年12月01日

※この記事は看護師が監修をしています。

心筋梗塞とは?

心筋梗塞とは

心筋梗塞とは、「冠動脈」の病気です。冠動脈は心臓の周りを走行している血管で心筋(心臓の筋肉)に栄養や酸素を与えています。この冠動脈の流れが途絶えると心筋が壊死し、最悪の場合死に至ります。

心筋梗塞には「急性心筋梗塞」と「陳旧性心筋梗塞」がありますが、違いは発症からの経過時間です。

  • 急性心筋梗塞  → 発症2週間以内
  • 陳旧性心筋梗塞 → 発症から1ヶ月以上

心筋梗塞で亡くなられる方の半数以上が発症から1時間以内で命を落とすと言われているため、救急車を待つ間にも心臓マッサージ(胸骨圧迫)や自動体外式除細動器(AED)などの心肺蘇生法を試みることが大切です。

狭心症との違いは?

狭心症も心筋梗塞と同じく、冠動脈に原因がある疾患です。動脈硬化などにより冠動脈の中が狭くなってしまい、心臓に対して血液が送られないことによって起こります。心臓発作などの症状が現れますが、狭心症の中でも不安定狭心症は、発作がいつ起こるのかわからないもので、心筋梗塞に近い状態であり、すぐさま入院治療をすることが必要となります。

心筋梗塞は心筋が壊死している状態(またはそれに近い状態)ですが、狭心症はその手前の状態と言えます。したがって、狭心症の場合は適切に治療をしていくことで、心臓の機能を改善していくことができます。

心不全との違いとは?

心筋梗塞と同じく命にかかわる心臓の病気で心不全(一般的に「うっ血性心不全」とも呼ばれます。)がありますが、心筋梗塞が冠動脈の閉塞によって心臓に栄養などを送ることができなくなるのに対して、心不全は心筋梗塞などが原因となり、心臓のポンプ機能が低下し肺などの器官に体液が過剰に貯留することで発症します。心不全の場合、疲れやすくなったり、足などがむんだり、といった症状が現れます。


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心筋梗塞の原因

冠動脈の流れが悪くなる大きな原因は「動脈硬化」です。動脈硬化は血管の老化現象とも言える現象ですが、外からはわからないため気づかないまま進行してしまいます。

動脈硬化が進行すると血管内にプラーク(コレステロールや脂質の塊)が付着し、この付着物が大きくなることで血管の内側が狭くなり血流が滞ります。プラークは血管壁を狭めるだけでなく、時に破綻して血栓になり血管を詰まらせる原因になります。

心臓脂肪が大きな原因に!

心臓脂肪

心臓にも脂肪がつくということが、最近話題になり、テレビでもよく取り上げられています。しかも、心臓脂肪は心筋梗塞の原因になることがわかっているため、とても危険な存在なのです。NHKの番組で徳島大学の佐田教授は、「心臓脂肪は50代、40代、そして30代でも見られる」というのです。しかも、心臓脂肪がついているかどうか、自覚症状がないので、突然、心筋梗塞を起こしてしまうのです。

心臓脂肪は健康な人でも、心臓の周りに3〜4ミリ程度はついているのですが、多い人だと10ミリ以上になってきます。これは内臓脂肪と同じ原理でついていきますので、内臓脂肪が多いと人は心臓脂肪も多いと考えられます。

心臓脂肪が多くなると、心臓の動脈に脂肪から血管が伸びて、そこから毒素が入ってきて、心臓の動脈を傷つけてしまいます。そうするとそこに血栓ができてしまい、血流が止まってしまうため、心筋梗塞が起きてしまうのです。

その他の危険因子

喫煙

歯周病なども、実は心筋梗塞の要因となっています。歯周病にある歯周病菌は歯の血管を通じて、全身を巡り心臓にもやってきます。歯周病金は血管を傷つけることがわかっていて、放っておくととても危険なのです。定期的な歯の検診などによって、ケアすることが大切です。

喫煙についても心臓、動脈、静脈などの循環器系に対して悪影響が大きいと言われ、血管が縮こまってしまったり、血圧が上がることがあり、冠動脈を詰まらせやすくなります。またある調査によると、喫煙者が心筋梗塞になる危険度は、喫煙していない人と比べて3倍以上になるという結果があります。逆に喫煙者が禁煙した場合、10年から14年くらいで危険度が戻るようです。

また、肥満だけではなく、食事の偏った無理なダイエットも血管を詰まらせる原因となることがあります。バランス良い食生活と適度な運動、定期検査の受診が重要です。

その他、心筋梗塞の危険因子となりそうなものを以下にあげておきます。

  • 喫煙
  • 肥満
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 歯周病
  • ストレス
  • 運動不足
  • 高脂血症
  • 欧米化した食事
  • 高尿酸血症(痛風)
  • 狭心症や心筋梗塞の家族歴がある
  • 加齢(男性:45歳以上、女性:閉経前後)

日本生活習慣病予防協会(心筋梗塞に関する統計)

心筋梗塞の症状

主な症状は「突然襲う激しい胸痛」です。一般に30分以上、痛みが継続することになります。

しかし高齢者(75歳以上)や糖尿病などを併発している場合では2割程度の方が心筋梗塞を発症していても痛みを感じないと言われています(無痛性心筋梗塞)。

重症度は冠動脈の詰まる範囲や部分によって異なり、冠動脈の太い部分が詰まると「重度」、細い部分が詰まると「軽度」と診断されます。

症状は多彩ですが、一刻も早い処置が命を救います。症状には個人差がありますので、激しい胸痛などの異常がある場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

  • 胸全体の強い痛み
  • 動悸・息切れ
  • めまい
  • 脱力感
  • 吐き気
  • 意識を失う
  • 呼吸が苦しい
  • 血圧の低下
  • 冷や汗や脂汗が出る
  • 安静にしてもおさまらない胸の痛み
  • 肩・背中・首・胃などの痛み(放散痛)

心筋梗塞の前兆症状

心筋梗塞の前兆

2001年に急性心筋梗塞で倒れた徳光和夫さんが「前兆のような症状があった」と後に話されているように、心筋梗塞には前触れのような症状があります。前兆症状がないかチェックしてみましょう。

  • 動悸や息切れ
  • 歯や顎の痛み
  • 左肩や背中の痛み
  • 吐き気やむかつき
  • 急に冷や汗がでる
  • 胃のあたりが痛む
  • 喉が詰まるように感じる
  • 動いた時に胸が痛む
  • 胸の中心部を押さえつけられるような痛み

胸の痛みは15分以上続いたりすることがあり、それと合わせて、上記の他の症状が現れることがあります。

症状が似ている病気

心筋梗塞ととてもよく似た症状を発現する病気がカテコラミン心筋症(たこつぼ型心筋症)です。

カテコラミン心筋症(たこつぼ型心筋症)は、冠動脈の閉塞が原因ではなく、ストレスによる内因性カテコールアミンの増加で胸痛・呼吸困難など心筋梗塞とよく似た症状を呈します。

カテコラミン心筋症(たこつぼ型心筋症)には、確立された治療法がなく、原因となっているストレスを取り除くことが重要です。

しかし、素人判断で「これは大丈夫」と考えるのは危険です。繰り返しになりますが、激しい胸痛などの異常があるようであれば、すぐに救急車を呼びましょう。

心筋梗塞の予防法

予防法

心筋梗塞を予防するにはその前段階である狭心症の治療や、動脈硬化をこれ以上進行させない為の生活習慣の改善が必要です。

心臓脂肪を解消するには

原因のところで説明した心臓脂肪ですが、内臓脂肪がついている人は、早急に対処した方がいいでしょう。心臓脂肪は皮下脂肪がついた後につくもので、脂肪のつく順番としては最後になります。逆に脂肪の落ちる順番としては、最初になるのです。したがって、ダイエットによって最初に落ちる脂肪が心臓脂肪ということになります。

その方法は次のとおりです。

  • 少し息がハァハァするくらいのスピードで歩く。
  • 時間は30分程度(連続でなく、細切れでも良い。)

この程度の軽い運動で、心臓脂肪は減少していきます。

生活習慣も大切

他にも、生活習慣を見直すことがとても大切です。前述したとおり、喫煙は悪影響が大きいことや、他の病気につながる要因でもありますので、禁煙はとても重要です。また、食生活やストレスを溜めないこともとても重要になってきます。

食生活では、魚に多く含まれるDHAやEPAを摂取すると心筋梗塞のリスクが軽減されてると言われていて、日本においても厚生労働省などが調査を行っています。この調査によると、魚を食べるグループとそうでないグループを比較したところ、そのリスクは約1/3にもなったようです。もちろん、魚に限らず、バランスのとれた食生活が大切ということになります。

その他にことも含めて、主に次の内容を心がけましょう。

  • 禁煙する
  • お酒を控える
  • 太り過ぎない(逆に急激なダイエットも危険です)
  • 睡眠を十分に取る
  • 適度に運動をする
  • 寒暖差に気をつける
  • ストレスを溜めない
  • 定期健診を受け、血圧や血糖値を管理する
  • 栄養バランスの良い食事を心がける
  • 塩分・糖分・油分の摂取に気をつける
  • 青魚(イワシ、アジ、サバなど)を積極的に摂取する

心筋梗塞と合併症

心筋梗塞は冠動脈が詰まることにより発症するので、その詰まりを解消すれば回復すると思いがちですが壊死した部分が心臓に与えるダメージは予想以上に大きく、さらなる合併症を引き起こす可能性があります。

合併症には緊急手術が必要な場合も多く、手術中に死亡する場合もあります。心筋梗塞の合併症としては、次のようなものが知られています。

不整脈(心室性期外収縮、房室ブロック、心室細動など)

不整脈とは、心臓の電気刺激伝導系が損傷し、心拍のリズムが乱れる症状です。心筋梗塞による死亡の多くは発症後の不整脈によるもので、24時間以内に最も多く発生します。

心不全

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液を送れなくなる症状です。心不全の発症頻度は低いですが、一度発症してしまうと死亡率は高いです。

乳頭筋断裂

僧帽弁を支える乳頭筋が壊死してちぎれることで血液が逆流し、心不全の原因になります。乳頭筋断裂は、多くの場合は心筋梗塞発症後5日以内に発生します。

心破裂(左室自由壁破裂など)

心破裂とは、心筋の壊死した部分が、血圧に耐え切れず破裂する症状です。破裂した部位や出血の量にもよりますが、即死することも多く救命率は低いと言えます。

心室瘤

心筋梗塞によって心筋が薄くなると瘤のように膨らみます。この瘤はもろく破裂しやすいため心タンポナーデの原因になります。心室瘤を発症すると、心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液を送れなくなります。

心タンポナーデとは、心臓と心臓を覆う膜の間にある「心のう液」(心臓の動きをスムーズにする潤滑油のようなもの)が増加し溜まってしまい、心臓の動きを押さえ込んでしまう病気です。急激に状態が悪り、緊急を要する疾患です。

心室中隔穿孔

心筋梗塞により右室と左室の間の筋肉が壊死し穴が開くことで心機能が悪化します。

心筋梗塞の検査

心電図

心筋梗塞が疑われる場合に最初に行われる検査は心電図検査と血液検査です。より詳しい情報が必要な場合は心臓カテーテル検査や冠動脈CT検査などの検査が行われます。

心電図

胸に電極を付け、心筋梗塞で現れる特徴的な波形(ST上昇・ST低下、T波陰転、異常Q派)がないかを調べます。

特にSTの部分は狭心症の発作の際には下がり、心筋梗塞の発作の場合は上昇します。

【参考】みやけ内科・循環器科(誰でも分かる「心電図の簡単な読み方」)

血液検査

心筋細胞が破壊されると血液中に漏れてくる酵素(CPK、CK-MB、LDHなど)や心筋タンパク(トロポニンなど)を測定します。

心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)

カテーテル(細く柔らかいビニールチューブ)を手足の動脈から入れ血管に沿って心臓へ送り込み、造影剤を血管内に注入し冠動脈を撮影することで狭窄や閉塞の程度を調べます。

心筋シンチグラフィー検査

体内に放射性同位体を投与し、放射性同位体が発する放射線を検出して画像化し心臓の血液の流れを調べます。

心エコー検査

心電図検査での診断が難しい場合、心筋の壁運動を観察して診断に役立てます。

冠動脈CT検査

造影剤を注射した後、多方向からX線で撮影しデータを画像化することで冠動脈の状態を調べます。

心筋梗塞の治療法

心筋梗塞の治療で最も重要なのは、詰まった冠動脈を再開通し血流の回復を試みることです(再灌流療法)。

心臓の筋肉には再生能力がないため、より早く再開通し壊死を最小限に留めることが重要になります。アメリカ循環器学会(AHA)では、ACLSと呼ばれる高度はな心配蘇生により病院に到着してから90分以内に行うように提唱されています。

急性期

心筋梗塞では、何よりもまず詰まった血管を再開通して、血液を流すことが重要です。

血栓溶解療法

詰まった血栓を血栓溶解薬(t-PAなど)で溶かします。

心臓カテーテル検査からカテーテルによる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う

先端に風船がついたカテーテルを冠動脈の狭くなっている部分へ挿入し、風船を膨らませて血管を広げます。検査の項目で説明した心臓カテーテル検査を行い、冠動脈に閉塞している部分がある場合、そこにステント(網目構造をした金属製の筒)を留置し補強することで冠動脈の血流を改善します。

冠動脈バイパス手術(CABG)

閉塞している冠動脈に、体の他の部分から採ってきた血管をつなぎ、血液が流れる迂回路(バイパス)を新しく作ります。

カテーテルによるPCIや、この治療を行った場合は、通常はICUで24時間状態管理を行います。また、検査によって狭窄部がない場合は一般病棟で治療を受けるのが一般的です。

安定期

急性期の治療後、心臓の負担を減らしたり再発を予防したりする薬が処方されます。薬は一生服用する場合もあります。

  • 抗血小板薬:血液をサラサラにして血管がつまることを防ぎます。
  • 利尿剤:循環する血液量を少なくして、心臓の負担を少なくします。結果として、むくみを取り、血圧が一時的に下がります。
  • 抗凝固薬:血液を固まりにくくします。
  • 抗血小板薬:血小板が集まって血栓ができるのを阻害します。
  • 冠動脈拡張剤:硝酸薬(ニトログリセリン、ニトロペン)により冠動脈を広げ心筋に流れる血流量を増やします。また、冠動脈のけいれんを抑える薬としてカルシウム(Ca)拮抗薬、心臓が必要以上に働きすぎている場合にβ遮断薬を使います。

あん摩マッサージや温泉などは悪影響がでる恐れがあるため、心筋梗塞では禁忌です。


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心筋梗塞と妊婦の関係

妊娠がきっかけで始めて心臓病を発症する「周産期心筋症」という病気があります。

赤ちゃんを育てるためにお母さんの体内では血液の量が増えます。そしてその血液を全身に送るために心拍数も増え、心臓にかなりの負担がかかってしまいます。

周産期心筋症は妊婦さん全てに発症する可能性がありますが、特に高齢出産・多胎妊娠・高血圧・切迫早産の治療をしている場合に発症しやすいと言われています。

周産期心筋症の初期症状は労作時の息切れやむくみなどですが、症状が進み心筋梗塞を起こすと死に至る場合もあります。周産期心筋症の予後は心臓の機能が元通り回復しないことも多いため、第二子の妊娠は高いリスクが伴います。

心筋梗塞と子どもの関係

子どもの心筋梗塞は大人と異なり、主な原因である動脈硬化に起因するものは稀で、冠動脈の先天性異常か川崎病によるものがほとんどを占めます。

冠動脈の先天性異常

先天性の冠動脈の異常には、冠動脈瘻や単冠動脈などがあります。これら先天性冠動脈奇形は乳幼児期では症状が出現しないため気づかないまま成長し、大きくなって運動量が増えたときに胸痛や失神などの症状で発見されます。

異常に気づかず過度の運動を行うと突然死につながる可能性があり、若いスポーツ選手の突然死の一部はこれが原因ではないかと考えられています。

川崎病による冠動脈障害

川崎病は全身に血管炎を引き起こす病気です。この血管炎が冠動脈に起きることで瘤(こぶ)を作り、これが原因で閉塞を起こし心筋梗塞を発症します。

冠動脈瘤がある場合、約半数は1~2年で退縮しますが残りの半数はそのまま残るため心臓障害のリスクは高く定期的な検査が必要になります。

まとめ

  • 心筋梗塞は冠動脈が詰まる病気
  • 主な原因は「動脈硬化」で、心臓脂肪などが動脈硬化を誘発する
  • 発症1時間以内の死亡率は約50%
  • 痛みを感じない心筋梗塞もある
  • 冬の寒い日や早朝は発症しやすいので要注意!
  • 妊娠がきっかけで心臓病を発症することがある
  • 一刻も早い冠動脈の再開通が生死の分かれ目
  • 激しい胸痛などの異常がある場合には迷わず救急車を呼ぶ
  • 生活習慣を改めて動脈硬化の進行を防ぐことが大切
  • 合併症の危険があるため、発症後48時間は特に油断できない
心筋高速に関するQ&Aが多く寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

主な参考文献

国立循環器病研究センター(心筋梗塞)
国立循環器病研究センター(心不全)

[カテゴリ:コレステロール, 気管・心臓・肺, 生活習慣, 糖尿病]

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