ヘモグロビンの量は基準値をはずれると多血症などの病気の疑いが出てきます。またヘモグロビンが糖と結合したヘモグロビンa1c(HbA1c)は糖尿病などの基準となる値で、生活習慣や食事が原因とされています。ここではヘモグロビンやHbA1cが多い原因と下げる方法について説明します。

更新日:2017年08月30日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:当サイト編集部

酸素・二酸化炭素を運ぶヘモグロビン

血液検査

ヘモグロビンとは、血液中の赤血球に含まれる成分の一つで、「ヘム」と言う鉄を含んだ色素と「グロビン」と言うたんぱく質からなる複合たんぱく質のことを言います。

肺に入った酸素を全身へ運ぶ

人間や動物が生きていくためには、呼吸をして体内に酸素を取り入れることが必要不可欠ですが、取り入れた酸素を全身に運ぶ役割を行っているのがヘモグロビンです。

吸い込んだ空気が肺に入ると、そこから酸素のみが取り出され、血液中のヘモグロビンによって体の各組織へと運ばれます。

その際、ヘモグロビンの鉄原子と酸素が結びつくことで、酸化が起こります。

酸化とは、物質が酸素に触れることで起こる化学反応のことを言い、鉄は酸化によって赤く錆びることがよく知られています。

つまり、私達の血液が赤いのは、鉄を含むヘモグロビンが酸素と結合することで酸化が起こっているからなのです。

ちなみに、イカやタコ、エビなどは血液が赤色ではありません。

これらの生き物は、ヘモグロビンの代わりに血液中に銅を含んだヘモシアニンという成分を持っており、銅は酸化すると青く錆びるため血液が青く見えます。

二酸化炭素を運び排出する

また、ヘモグロビンは酸素を運ぶだけではなく、各組織から二酸化炭素を受け取って肺に運び、放出するという役割も担っています。

このため、酸素と結合した血液(動脈血)は鮮やかな赤色をしていますが、酸素を手放し二酸化炭素を受け取った血液(静脈血)は暗い赤色をしています。

なお、ヘモグロビンを持っているのは、脊椎動物(哺乳類・鳥類・魚類・両生類・爬虫類の5類)とその他の一部の動物のみと言われており、人間の場合は骨髄の赤血球細胞で生成されています。

赤血球は120日ほどの寿命と言われ、その間血液を循環し続けて、酸素や二酸化炭素を運ぶ働きを行います。

ヘモグロビンの基準値

ヘモグロビンは「生きる」上で大変重要な働きを行っているということを説明してきましたが、私達が必要とするヘモグロビンの量とは、一体どれくらいなのでしょうか。

これは、男女によって違いがあり、一般的に基準値と言われているのは下記の通りです。

  • 男性・・13.1~16.6g/dl
  • 女性・・12.1~14.6g/dl

ヘモグロビンは多ければ多いほどよいというわけではなく、基準値に収まっているのが理想です。

また、男性の場合は18g/dl、女性の場合は17g/dlを超えると、何らかの疾患の可能性があることが疑われます。


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ヘモグロビンが高くなる理由

健康診断や血液検査を行うと、毎回ヘモグロビンの量を調べると思いますが、それによってどのようなことがわかるのでしょうか。

ヘモグロビンは赤血球の中の大多数を占めており、その量を調べることによって「貧血」や「多血症」といった疾患の有無がわかります。

また、ヘモグロビンは各組織に酸素を運ぶという役割を持っていることから、全身状態を把握する上でもとても有効であると考えられており、基本的に行われる項目の一つとなっているのです。

では、ヘモグロビンが高くなってしまうのには、どのようなことが理由として考えられるのでしょうか。

多血症

多血症は赤血球が異常に増える病気です。赤血球の数が増えることでヘモグロビンの値も高くなります。

脱水症状によるもの

脱水症状によって体内の水分量が減ってしまうと、相対的に血液の量が増えるため、ヘモグロビンも高くなります。

なお、脱水症状は夏の気温の高い時期に起こるもの、という認識が多いと思いますが、感染症などで嘔吐や下痢を繰り返している場合にも同様に起こる場合があります。

標高の高いところに住んでいる

山地などの標高が高い場所に住んでいる人は、酸素の量が薄いため血液中のヘモグロビンの濃度が濃く、酸素を取り込みやすくなるよう適応することが分かっています。

喫煙によるもの

タバコに含まれる一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンと結合する力が200倍も強いのです。

そのため、酸素はヘモグロビンとの結合を阻害されることになり、体はいわゆる酸欠状態になってしまいます。

すると、それを補おうと骨髄は赤血球の増産を始めるため、ヘモグロビンの値が高くなります。

ストレスによるもの

人はストレスを受けると、交感神経の作用によって血管が収縮し、高血圧の状態になります。

これを通常の状態に戻そうとする時、血液中の水分を放出するため、血液内のヘモグロビンの濃度が高まってしまいます。

ヘモグロビンが高くなるとどうなるのでしょうか。

健康診断

ヘモグロビンが高い場合に、最も警戒しなくていけないのが「多血症」です。

多血症とは、単一の病名を指すものではなく、血が多くなる病気の総称を言い「赤血球増加症」と呼ばれることもあります。

多血症(赤血球増加症)には、「絶対的多血症」と「相対的多血症」があり、それぞれに発症原因が異なります。

絶対的多血症とは

絶対的多血症は赤血球の数が通常よりも多くなるもので、真性多血症と二次性多血症の2種類があります。

真性多血症

真性多血症は、造血幹細胞(骨髄)に腫瘍ができ、赤血球を異常に増やしてしまうために起こります。

症状としては、赤ら顔や体重の減少、めまい、耳鳴り、目の結膜の充血、寝汗、入浴後の皮膚のかゆみなどがあります。

二次性多血症

二次性多血症は、何らかの疾患が原因となって起こることから「続発性多血症」とも呼ばれます。

慢性的な心肺の疾患や先天的な心疾患を持っている方や、高地生活者、睡眠時無呼吸症候群といった持病のある方は、二次性多血症を発症しやすいと言われています。

これは、体内が酸素不足に陥ることで、それを補うために赤血球が異常に作られるためだと考えられています。

また、腎ガンや子宮ガン、子宮筋腫などの腫瘍の増殖によってエリスロポエチンという糖たんぱく質が増えると、赤血球の産生が促されることもわかっています。

なお、二次性多血症の症状も、真性多血症と同じと考えてよいでしょう。

相対的多血症とは

相対的多血症とは、実際に赤血球の数が増えているわけではないものの、結果として赤血球の割合が増えるために起こる多血症です。

よくある症例としては、脱水症状が挙げられます。

体内の水分が失われることにより、血漿(血液成分を除いた液体部分)の量が減り赤血球の割合が高くなります。脱水症状による相対的多血症は、基本的には水分を補給することで症状が回復します。

中年男性に多いストレス多血症

相対的多血症の一種であるストレス多血症は、ストレスや喫煙、高カロリーの食事といった生活習慣が元となって、中年男性が多く発症する多血症とも言われています。

この仕組みについてはまだ詳しくは解明されてはいませんが、血管内を循環している血漿の量が減ることで起こると考えられています。

このように、ヘモグロビンが高くなると多血症の疑いが出てきます。多血症は、それ自体が病気なだけではなく、様々な合併症を引き起こすリスクを高めます。

ヘモグロビンが高いということは、それだけ血液濃度が濃いという意味になります。そのため、血管内で成分が固まって詰りやすくなってしまいます。

結果として、動脈硬化や血栓症といった生活習慣病を引き起こしやすくなり、ひいては心筋梗塞や脳梗塞などに繋がる恐れがあるのです。

ヘモグロビンを下げるには

医師の診察

ヘモグロビンを下げる方法としては、真性多血症以外はまずはその発症原因を突きとめ、原因の改善や治療を行うのが一般的です。

したがって、健康診断などの結果をもって、しっかりと医師の診断をうけることが必要です。

生活習慣の見直しが重要

喫煙やストレスといった、一見すると無関係にも思えることがヘモグロビンを上げる原因になりうることがわかっていますので、毎日の生活習慣を今一度見直すことがとても大切です。

真性多血症の場合

真性多血症の場合は、瀉血(しゃけつ)と言って静脈血を抜くことによって赤血球を減らす治療や、経口抗ガン剤の投与が主な方法となります。70才以上の高齢者の場合は、経口抗ガン剤の投与が第一選択となるケースもあります。


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ヘモグロビンA1c(HbA1c)とは

近年健康診断で注視されているのが、「ヘモグロビンA1c」の値です。

糖質や脂質の多い食事を好み、高血糖状態が続くと、体内では余分なブドウ糖がヘモグロビンと結びついて、ヘモグロビンA1c(HbA1c)を増やします。

このヘモグロビンA1cは、血糖値とは異なり、過去1~2ヶ月の血糖の状態がわかるため、特に糖尿病の検査において重要視されています。

ちなみに、ヘモグロビンA1cの値が6.5%以上となると糖尿病の疑いが濃厚になります。

糖尿病は合併症を起こしやすいと言われている病気です。糖尿病網膜症や糖尿病神経障害、糖尿病腎症といった三大合併症を始め、脳卒中や狭心症、閉塞性動脈硬化症などを引き起こします。

【参考】糖尿病の合併症 スマート・ライフ・プロジェクト 事務局(厚生労働省 健康局 健康課)

ヘモグロビンA1c(HbA1c)を下げる方法

ジョギング

最近は糖尿病を始めとした生活習慣病を防ぐために、ヘモグロビンA1cの値を意識することが大事だと言われています。

ヘモグロビンA1cは、高血糖状態が長く続いているほど値が高くなることから、この値を下げることで糖尿病を予防することに繋がることがわかっています。

ここでは、ヘモグロビンA1cを下げる方法についてご紹介したいと思います。

適度な運動を行いましょう。

運動によって体内の糖分がエネルギーとして燃焼されると、ヘモグロビンと糖の結びつきを阻害して、ヘモグロビンA1cの値を下げることができます。

ただし、高血糖の方がいきなり激しい運動を行うと、心臓などに負担が掛かってしまいますので、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を中心に行うようにしましょう。

また、すでに糖尿病と診断されている方は、運動を行う前に必ず医師に相談するようにして下さい。

なお、食後一時間以内に有酸素運動をすると、より効率よく糖を燃やすことができると言われています。

GI値の低い食品を摂取しましょう。

サラダ

GI値とはグリセミック指数と呼ばれるもので、摂取後の血糖値の上昇具合を数値化したものです。

この数値が低いほど、血糖値は緩やかに上がり、高いほど急上昇することから、GI値の低い食べ物を選んで摂取することで、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。

血糖値が急激に上がると、次に一気に下降するため、脳が糖不足と感じて甘いものをつい食べ過ぎてしまいます。このことから、血糖値を急に上げないようにすることはとても大切なのです。

GI値の低い食べ物

野菜や豆類、海藻類などがあります。

GI値の高い食べ物

イモ類や白米、パスタ、パンなどがあります。

血糖値を下げる働きのある食べ物を摂取しましょう。

血糖値を下げるには、糖の代謝を行うインスリンを助ける食品を摂ることも有効です。

中でも、亜鉛やマンガン、クロム、カリウムなどのミネラルは、インスリンの働きを活発にすると言われています。

これらは、葉物野菜や玄米、貝類、きのこ類などに多く含まれていることから、意識して摂取することで血糖値を下げることができます。

まとめ

ヘモグロビンが多い原因には多血症などのほか、ストレスなども関連してきます。心筋梗塞などの合併症が起こることも考えられるため注意しなければいけません。

また、生活習慣病と関わりのあるヘモグロビンA1cが高い人は、運動や食事の見直しによって、値が正常になることがあります。

ただし、自己判断で何かを行うのではなく、まずは健康診断などの結果をもって医師の診断を受け、適切な生活習慣の見直しなどを行うことが大切です。

ヘモグロビンを下げることに関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:生活習慣, 糖尿病, 血糖値, 貧血]

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