意外に気になる!?肺活量の平均値や鍛え方
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サックスやトランペットなどの楽器の演奏を趣味としている人や、マラソン・水泳といった運動をしている人は別として、普段は肺活量について気にすることなどあまりないですよね。でも、健康診断では肺活量測定が必ずあるので、平均値(標準値・基準値)よりも高いと少しうれしいし、低いと心配になったりします。喫煙習慣がある場合、ますます肺活量が気になりますよね。肺活量の平均値や鍛え方、健康への影響などについてまとめています。
肺活量とは?平均値はどのくらい?
そもそも、肺活量とはどのようなものなのでしょうか。肺活量(Vital Capacity)は、息を最大限に吸い込んだ後、それをすべて吐き出したときに出る空気量のことです。
そういうと、「肺活量=肺に入るめいいっぱいの空気量」と思うかもしれませんが、少し違います。
人間は肺に入った空気をすべて吐き出そうとしても、多少は肺に残ってしまいます。肺の空気を全て吐き出すことができる人はいません。この肺に残っている空気量を残気量(Residual Volume)と呼んでいます。
肺活量は、肺に入る最大の空気量(Total Lung Capacity)から残気量を引いた値です。
肺活量は性別・体格・年齢・日頃の運動の有無・喫煙歴などによって異なりますが、健康的な成人の平均値(標準値・基準値)は男性が3000 ml~4000 ml、女性が2000 ml~3000 mlくらいです。
運動をしている人の中には、肺活量が7000 mlという人もいるそうですよ!
運動をするとたくさんのエネルギーを消費するため、たくさんの酸素が必要となります。肺活量が大きいほど多くの酸素を体内に取り込むことができるので、スポーツ選手にとっては有利ですよね。
また、後で説明しますが、肺活量は鍛えることができますよ。
肺の働きと肺活量
モノを燃やすときには必ず酸素が必要です。また、モノが燃焼すると二酸化炭素が発生します。人間の体でも同じことが起こっています。
呼吸とは、体内に酸素を取り入れ、エネルギーを得るために糖や脂肪やタンパク質を燃焼して発生した二酸化炭素を吐き出す作用です。肺はこの酸素と二酸化炭素のガス交換を担っています。
人間は、通常は1度の呼吸で約500mlの空気が出入りしていると言われています。激しい運動をするとたくさんのエネルギーが必要になるため、たくさんの酸素を取り入れようとして呼吸が大きくなったり、息があがります(呼吸回数が増える)。
肺活量が大きいと、1度の呼吸で多量の空気を出し入れできることになります。つまり、肺活量は、肺のガス交換の能力を指す数値と言えます。
肺活量は、「肺に取り入れられる最大の空気量(肺の容量)」から「吐き出したときに肺に残ってしまう残気量(肺の収縮によって空気を押し出した残り)」を引いたものですので、体格や性別、年齢、姿勢、呼吸器の能力(気管支、肺、胸郭、横隔膜の弾性、呼吸筋の強さ)によって変わります。
肺活量検査では、身長・性別・年齢ごとに基準値(平均値・標準値)を定めることによって、空気を出し入れするガス交換機能や肺の容量などが平均と比べてどの程度であるかを計測します。
肺活量検査の項目・測定方法と、その結果からわかること
肺活量検査は、鼻から空気が漏れないように鼻をクリップでつまみ、思いっきり息を吸ってから口から吐き出した空気量を計測します。
通常、何度か練習として深呼吸を行った後、「息を一気に吐き出す検査」と「息を吐ききる検査」の2回の検査を行います。
1 予測肺活量
予測肺活量は、検査結果からわかることではなく、年齢、体格(身長)、性別に基づいて計算した肺活量の基準値、いわば肺活量の平均値に近いものです。
18歳以上の成人の予測肺活量は次の計算式で求められます。
- 男性:予測肺活量(mL)={27.63-(0.112×年齢)}×身長
- 女性:予測肺活量(mL)={21.78-(0.101×年齢)}×身長
2 肺活量(実測肺活量)
「息を吐ききる検査」の計測値です。空気を胸いっぱいに吸い込み、全て吐き出したときいたときの呼出量となります。肺活量(実測肺活量)の正常範囲は予測肺活量の80%以上です。
3 %肺活量
基準値となる予測肺活量に対する実測肺活量の比率を計算したものです。%肺活量は次の計算式で求められます。
%肺活量(%) = 実測肺活量 ÷ 予測肺活量 × 100
%肺活量はいわば肺活量の平均値に対して自分の肺活量がどの程度かを示す値で、80%以上が基準値とされています。
%肺活量が基準値より低い場合、肺の硬化や呼吸筋が弱いことにより肺の容量が少なくなっていることが考えられます。
%肺活量の数値が低い場合、間質性肺炎、肺線維症、胸膜炎、胸の変形などが疑われます。
アスベストによる肺線維症の患者などでは、肺が完全に膨らまないので十分に空気を吸うことができず、%肺活量の基準値を下回っていることが多いそうです。
4 努力性肺活量
努力性肺活量は「息を一気に吐き出す検査」の計測値で、胸いっぱいに息を吸い込んで一気に吐き出した空気の量です。
5 1秒量
1秒量は、努力性肺活量のうちの最初の1秒間に吐き出された空気の量です。
6 1秒率
1秒量が努力性肺活量に占める割合で、いわば肺活量の瞬発力を示す数値です。1秒率は70%以上が基準値とされています。1秒率は次の式で求められます。
1秒率(%) = 1秒量 ÷ 努力肺活量 × 100
1秒率が低い場合、気管支がうまく拡張できないなど、気道が狭くなって空気が入りにくくなっている可能性があり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支ぜんそく、気管支拡張症などが疑われます。
喫煙者は、分泌物などによって気道が狭くなって空気を十分に吐き出せなくなるため、1秒率の基準値を下回っていることが多いと言われています。
また、呼吸筋の低下が原因となる重症筋無力症などでは、 %肺活量(基準値80%)、1秒率(基準値70%)がともに低下します。
自宅でもできる肺活量の測定方法
自宅では、正確に肺活量を測ることは難しいですが、大まかに測ることは可能です。
- 大きなペットボトル(大容量の焼酎のものなど)を用意します。
- ペットボトルを水一杯にして、お風呂の湯船で逆さまにします。
- 水道のホースの用なものでペットボトルやバケツの中に、息を吹き込みます。
- 容器を押さえて取り出して、容器の中に残った水の量を測ります。
- ペットボトルの容量から、容器の中に残った水の量を差し引けば、肺活量の大まかな量となります。
- ペットボトル1本で足りない場合は、複数用意して取り替えながら、うまく測定しましょう。
また、簡単に肺活量を測定できる機器も販売されています。部活やサークルなどで、みんなで使う分場合は、購入してもいいのではないでしょうか。
肺活量が少ないとどうなる?
肺活量検査で%肺活量や1秒率が基準値よりも低い場合、何か疾患がないか病院で検査をする必要があります。
しかし、もともと肺の容量が少ない、残気量が多いなど、特に病気などではなくても肺活量が平均値よりも低い人もいます。肺活量が少ないとどうなるのでしょうか。
血液中の酸素濃度が低くなると、ふらつきやめまい、思考力の低下、疲労感といった症状が生じます。
肺活量は体内で酸素と二酸化炭素を交換することができる最大量のことですが、肺活量の平均値が2000ml〜程度であるのに対して、通常の呼吸では500ml程度しかガス交換がされていません。
このため、特別に疾患がある場合でなければ、肺活量が少なくても通常の生活に支障をきたすことはありません。
しかし、運動中は多くのエネルギーが使われるため、たくさんの酸素が必要となり、普段よりも深い呼吸をしてたくさんの空気を吸ったり、呼吸回数が大幅に増えます。
肺活量が多い人だと、1度にたくさんの空気を取り込むことができますが、肺活量が少ないと呼吸回数でその分を補うことになります。
運動をするとすぐに息を切らしてしまう場合は、肺活量を鍛えた方がいいかもしれませんね。
肺活量の鍛え方
肺活量が増えると、運動中に息が上がりにくくなり、マラソンなども楽に感じるようになります。結果的には長く続けられるようになるため、ダイエットにもつながるかもしれません。
また、肺活量を鍛えると1度に吐く息の量が増えるので、トランペットやサックスなどの楽器をやっている方のトレーニングになりますし、カラオケが趣味といった方は良い声がでるようになりますよ!
肺活量を鍛えるためには、「肺に入る空気量を増やす」ことと、「肺に残ってしまう残気量を減らす」ことが重要です。
肺に入る空気量を増やすためには、姿勢を正して呼吸筋や横隔膜をしっかりと使うトレーニング、残気量を減らすためには腹式呼吸を使ったトレーニングが有効です。
1 姿勢を正す
最近は猫背や反り腰となっている人が多くみられますが、体内では胸郭が圧迫されてうまく横隔膜を下げることができなかったり、呼吸筋が弱体化しています。
正しい姿勢は、背骨が緩いS字カーブを描きます。普段から正しい姿勢を心がけることで、自然と肺活量を鍛えることにもつながります。
2 ペットボトルを使ったトレーニング
肺活量の鍛え方としては最もポピュラーなトレーニング法です。500mlの空のペットボトルを口にくわえ、思いっきり吸い込んでペットボトルを潰します。
ペットボトルがある程度潰れたら、次は息を吐き出してペットボトルを元に戻します。これを繰り返しましょう。
ペットボトル内の酸素が少なくなっていきますので、5回に1回は休憩し、ペットボトル内の空気を入れ替えてください。ペットボトルは柔らか目で丸い形のものを使いましょう。
このペットボトルのトレーニングによって、呼吸筋が鍛えられ、肺活量を増やすことができます。
3 腹式呼吸を使ったトレーニング
どんなに肺の容量が多くてたくさんの空気を取り入れることができる人であっても、息を吐いたときにある程度の空気は肺に残ってしまいます。
肺活量を鍛えたいと思っている人の多くが、実はこの肺に残ってしまう空気(残気量)が多くて効率の悪い呼吸をしていると言われています。
残気量を減らすためには、空気をなるべく多く吐ききることが必要ですが、そのためには腹式呼吸が有効です。
腹式呼吸のやり方
腹式呼吸は、吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにはお腹をへこませる呼吸法です。男性は腹式呼吸の人が多いのですが、女性は出産時に腹式呼吸ができないことから、もともと胸式呼吸の人が多いです。
1日5分程度、毎日続けることが効果的です。
- まずはお腹を膨らませながら大きく息を吸い込み、その状態で2秒から5秒ほど息を止めます。
- 続いて、お腹をへこませながらゆっくりと吸い込んだ息を全て吐き切ります。
紙を利用したトレーニング方法
腹式呼吸に慣れてきたら、次のトレーニングもやってみてください。
- まず、薄い紙を指で壁に押し付けます。
- 続いて指を外して紙に息を吹きかけ、紙が落ちないように維持してください。
- なるべく長い間、紙が落ちないように、お腹をへこませながら少しずつ息を吹きかけます。
吐き出す空気量を調整することによって、腹筋のトレーニングにもなりますよ。
4 水泳・マラソン
水泳やマラソンといえば、肺活量が多いと有利なスポーツですが、逆にそれらの全身運動を行うことによって心肺機能が向上し、肺活量を鍛えることもつながります。
水泳やマラソンは、気管支ぜんそくといった気管支系の病気の予防や改善にも有効です。無理をしない程度に始めてみてはいかがでしょうか。