更新日:2017年06月19日
帯状疱疹の症状
帯状疱疹とは、加齢やストレスによって免疫が低下しているときに痛みを伴う発疹ができるものです。まず痛みやかゆみといった前兆が現れることが多く、その後、痛みが強くなり4・5日後に赤い発疹が出てきます。
発疹は水ぶくれになり、2週間程度でかさぶたになって治ります。かさぶたが治って痛みが引くまでに約3週間から1か月程度かかります。
発疹が出る前は、頭痛や腰痛、耳の病気などと間違えやすいのですが、帯状疱疹は身体の片側のみに症状が出ることが多いのが特徴です。(神経の分布に沿って発症するため、通常片側に帯状に出ます)
また、重症の場合は発熱後、水痘のような発疹が全身にできることもあります。
耳から顎、首にかけての帯状疱疹では顔面麻痺、外陰部にできたものでは尿が出なくなる(尿閉)症状もあります。
痛みの種類
帯状疱疹の痛みはウイルスが神経を刺激して炎症を起こすためで、人によって皮膚がひりひりする程度から、針が刺すような痛みを感じることもあります。ほとんどの場合は、皮膚の疱疹が消滅すると痛みも無くなります。
私の母(当時60歳)は、「腕は軽いやけどをして皮膚が薄くなったようなヒリヒリ感。脇の下に近い背中は何かの拍子に針でつつかれたり、筋が切れたようにチクッ!ピリッ!と痛い。」と表現していました。
身の回りの友人にも帯状疱疹になった人がいたようで、湿疹ができたときにピンときて病院に行ったとのことです。帯状疱疹は痛みが残ってしまうのが一番怖いです。
できる場所によっては帯状疱疹とは気づきにくいと思いますが、痛みのある湿疹ができたらすぐに皮膚科を受診しましょう。
帯状疱疹ができる場所
帯状疱疹は、身体の左右どちらか一方の神経に沿って帯状にあらわれるのが特徴です。
胸から背中にかけての上半身に多く発症し、一度に複数箇所で現れることはほとんどありません。眼の周囲といった顔面や頭部も帯状疱疹が比較的発症しやすいと言われています。
特に、首より上のところに発症した場合は、後遺症が重篤になることがありますので注意が必要です。
帯状疱疹の原因は?
帯状疱疹の原因は、子どもの頃に誰もが一度はなったことがある水ぼうそうを引き起こすウイルス「水疱・帯状疱疹ウイルス(VZV)」です。
水ぼうそうにかかると、体内で専用の免疫が作られて、発症後1週間程度でウイルスを退治してしまいます。その専用の免疫のおかげで、1度水ぼうそうにかかると2度とかかることはありません。
しかし、免疫が水ぼうそうのウイルスを退治しても、ウイルスの一部は免疫に見つからない形で神経節に潜伏し続けています。
ストレスや疲労、病気、ケガ、免疫抑制薬の使用、加齢などで免疫の働きが弱くなると、潜伏していたウイルスは再び動き出して増殖を繰り返します。ウイルスは神経細胞を傷つけながら皮膚に達し、痛みを伴いながら身体の左右のどちらかに帯状に現れます。これが帯状疱疹です。
ごく稀に、骨髄移植を行った患者が、ドナーが保有していた水疱・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって発症することがあります。
検査と診断法について
通常は症状などから診断を行っていきます。
例えば、ストレスや疲労が蓄積していたり、高齢になったことにより免疫が弱くなっている状態であり、神経の痛みや発疹に特徴がある場合には、診断がつきます。
また、見た目や症状などで判断ができない場合は、血液の帯状疱疹ウイルスに対する抗体価を確認することで診断します。
帯状疱疹の治療
基本的にはウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤と、痛みを抑える消炎鎮痛剤を投与します。
帯状疱疹は症状が治まった後、後遺症として神経痛が残ってしまうことがあります(帯状疱疹後神経痛)。
帯状疱疹後神経痛を予防するためには発疹ができてから72時間以内に薬の投与を始めることが理想的です。
帯状疱疹後神経痛(PHN)が残ってしまった場合、帯状疱疹を発症して3か月程度の比較的初期の患者さんに対しては、「神経ブロック」という局所麻酔を使った治療などが行われることがあります。
神経ブロックは、痛みの原因となる神経を麻酔で一時的に麻痺させることにより、痛みの回路ができることを阻害する治療法です。麻酔科にペインクリニックを併設している病院で行っています。
それでも痛みが残ってしまう場合は、「脳や神経が痛みを感じにくくする薬」が投与されます。しかし、一度痛みが残ってしまうと、完全に痛みをとりきることは難しいことも多々あります。
帯状疱疹に関するQ&A
Q1. 帯状疱疹は人にうつるの?
帯状疱疹は、他の人に帯状疱疹としてうつることはありません。
しかし、帯状疱疹の水ぶくれの中には水疱・帯状疱疹ウイルス(VZV)が潜んでいますので、水ぼうそうにかかったことのない乳幼児などに、水ぼうそうとしてうつる場合があります。
水ぶくれが治るまでは、赤ちゃんや子ども、妊婦さんには接触しない方がよいでしょう。
Q2. なりやすい時期は?
「1年の中で特に起こりやすいという時期はない」とされていましたが、夏に多く冬は少なく、帯状疱疹と水ぼうそうの流行は逆の関係にあるという研究結果もあります。
一般的には、体調を崩しやすい季節の変わり目に多くみられます。
Q3. なりやすい人は?
通常は生涯に1度しか発症せず、免疫が低下している人を除くと再発することはまれです。
また、保育士さんは年齢に関係なく帯状疱疹に対して高い免疫がありました。その理由は、水ぼうそうの子どもと接する機会が多いため、水ぼうそうウイルスに対する免疫力が高まります。これを「ブースター効果」といいます。
30代で帯状疱疹が少ない理由も、子育て世代であることが関係していると考えられます。
帯状疱疹の1番の発症リスクは加齢と言われています。50歳から発症が増え、60歳以降をピークとし、85歳では2人に1人が発症するというデータもあります。
高齢者が増えたことや、ストレスを感じる若い年代が増えたこと、子どもの数が減ったため水ぼうそうウイルスに接する機会が減ったことなどから、日本の帯状疱疹発症者は増加しています。
Q4. 発疹が現れたらどうすればいい?
発疹が現れてから3日以内に抗ウイルス薬を投与すると、症状が軽く済み、帯状疱疹後に神経痛として残ってしまうのを防止する効果があることが分かっています。
痛みを伴う発疹ができたときには、帯状疱疹を疑って早めに皮膚科を受診しましょう。
また、ウイルスの働きを助長するため、帯状疱疹は冷やしてはいけません。後の神経痛の予防になりますので、痒みがない場合は温湿布などで暖めましょう。
Q5. 再発はする可能性は低い
一度「帯状疱疹」にかかると、免疫ができるので再発することはほとんどありません。
帯状疱疹が再発する確率は100人に1人くらいと言われています。
しかし、免疫力がひどく弱くなったときなど、再発する人もわずかにいます。中には20回以上再発した人もいるようです。
また、帯状疱疹は免疫力が低下しているときに発症するため、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、後天性免疫不全症候群、骨髄疾患、免疫抑制薬を投与している人などでは再発することもあります。
Q6. 妊娠中に発症したら?
帯状疱疹はもともと潜伏しているウイルスが免疫力の低下によって皮膚にでてくるもので、先天奇形は起こらないと言われています。
ただし、治療薬は胎児に影響するので、医師に妊娠していることをきちんと伝えて治療薬の服用は控えます。
また、妊娠初期や出産直前に水ぼうそうになると胎児に影響があることがありますが、帯状疱疹もまれに胎児に感染することがあります。産婦人科への相談が必要です。
帯状疱疹の予防
水痘ワクチン(水疱瘡ワクチン)の接種が、帯状疱疹の予防に効果があると言われています。アメリカでは、50歳以上の人に水痘ワクチンの接種が推奨されています。
ワクチンを接種することにより、ほぼ一生、帯状疱疹の予防ができるといわれています。
また、ワクチンは帯状疱疹が発症した場合に痛みが残ってしまう可能性を減らしてくれる効果もあります。
しかし、一度でも水疱・帯状疱疹ウイルス(VZV)が身体に入っていれば、ワクチンを接種する必要はありません。
予防接種の状況・費用
日本では、3歳未満の子どもに対しては、2回の水痘ワクチンが定期接種となっています。
ただし、大人に対しては保険適用がないため、自費で1万円前後の費用がかかります。帯状疱疹に詳しい皮膚科やペインクリニックで相談してみてください。
帯状疱疹後神経痛とは
水ぼうそうや帯状疱疹の発疹が治っても、長期間にわたって痛みがなくならないことがあります。
水疱・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、発疹ができてからおよそ1週間でピークとなり、その後急激に減少するため、痛みも1か月程度でおさまるはずです。
皮膚症状が回復しても痛みがいつまでも続く慢性症状を帯状疱疹後神経痛(PHN)といいます。通常、帯状疱疹を発症してから3か月経っても痛みが残る場合に診断されます。
帯状疱疹後神経痛(PHN)のメカニズムはまだはっきりとは分かっていません。
繰り返し強い痛みを感じるうちに、脊髄で痛みの回路が作られてしまい、何かが触れるだけで反射的に痛みとして認識したり、「痛みの記憶」により心因性の痛みとして残るのではないかとも考えられています。
若い人は帯状疱疹ウイルス(VZV)によって神経細胞が傷つけられても回復が早いのですが、帯状疱疹が重かったり、高齢者や糖尿病の人は回復に時間がかかることがあるため、帯状疱疹後神経痛(PHN)も残りやすいと言われています。
帯状疱疹の後遺症
帯状疱疹の後遺症として最も多いのは帯状疱疹後神経痛(PHN)です。
帯状疱疹の症状が重かった人や糖尿病の人、60歳以上の人は特に痛みが残りやすいので要注意です。
帯状疱疹後神経痛(PHN)のほかには、帯状疱疹が顔に出た場合の顔面神経麻痺、耳に出た場合に難聴などの症状が起こる「ラムゼー・ハント症候群」などがあります。
皮膚以外の場所に症状が出た場合は、耳鼻科などの受診も必要なことがありますので、医師の指示に従いましょう。
また、目の症状も大変怖い合併症です。顔には三叉神経(さんさしんけい)という知覚神経が分布しています。三叉神経節からは目に神経が伸びているので、眼瞼炎、角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎、緑内障などを起こします。
帯状疱疹の症状がでたら、まずはすぐに皮膚科を受診し、後遺症が残らないように早めに治療を受けることが重要です。
看護師からひとこと
帯状疱疹が疑われたときや皮膚の異常を感じた時は症状を軽く見ずに、早めに受診してください。
自己判断で放置して、重症化したため10年以上も帯状疱疹後神経痛で苦しまれている人も実際にいるのです。
また、治療で処方された抗ウイルス薬は医師の指示に従って、しっかりと飲み続けるようにします。薬を飲んでいる間は水分を取るように注意しましょう。
抗ウイルス薬には、吐き気、頭痛、腎機能障害などの副作用がありますので、気になる症状が現れたときには、すぐに受診して医師の指示を仰いでください。
まとめ
メカニズム
はじめて水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に感染したときは、水ぼうそうとして発症します。
水ぼうそうが治ったあと、ウイルスは体内の神経節に潜んでいますが、加齢やストレスなどが引き金となって免疫力が低下すると、ウイルスが再び活動を始めて神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症します。
注意
帯状疱疹になるのは、疲れやストレスで体の抵抗力が低下している証拠です。医師に相談するとともに、無理をせずに栄養と睡眠を十分にとって休みましょう。
また、痛みを冷やすとウイルスの働きがかえって強くなるので、できるだけ温めるようにします。
昔、「帯状疱疹が体を一周すると死ぬ。」という噂を聞いたことがありますが、それは通常起こりません。帯状疱疹は身体の左右片側にできることが多く、身体を一周することは稀です。
ただ、もしそうなってしまった場合は症状が重いと考えられますので、早急に医師に相談しましょう。