更新日:2017年07月21日
目次
四十肩・五十肩とは
「四十肩・五十肩」は、腕を上げると肩が痛くなったり、肩を回せなくなったりして、腕が自由にならず、激しい痛みが肩を襲ってきます。
医学的には「肩関節周囲炎」という炎症性疾患です。
以前は50代によくみられたため「五十肩」と言われていましたが、四十肩と五十肩の違いは特にありません。
40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と呼ばれ、比較的女性に多い疾患です。
一般に「医学的にこれといった原因が見つけられないのにも関わらず、肩が痛む・肩関節の可動制域限がある」場合に四十肩・五十肩と診断します。
「普通の肩こり」と「四十肩・五十肩」の違い
- 普通の肩こり :首~肩の筋肉の血行不良や筋肉疲労。
- 四十肩・五十肩:肩関節や関節周囲の組織(靱帯・筋・腱・関節包など)の炎症や拘縮(関節の動きが悪くなる状態)。
四十肩・五十肩の原因
肩の構造はとても複雑で、いろいろな組織(骨・筋肉・腱・関節など)が入り組んでおり、多様な動きが可能で酷使されやすく、炎症が起こりやすい部位です。
肩の関節が何らかの原因で弱ったり硬くなったりしている状態の時に、きっかけが加わることで炎症を起こし、それが痛みを生じてしまうのです。
四十肩・五十肩の原因となる「肩関節やその周囲の炎症」が起きる理由ははっきりしていませんが、中年以降に発症することが多いため、加齢(老化)の影響によるものが大きいのではないかと考えられています。
四十肩・五十肩を誘発する要因
四十肩・五十肩は以下の人に起きやすいと言われています。
- 加齢(老化)
- 冷え性
- 猫背
- なで肩
- 運動不足
- 睡眠不足
- 慢性的な肩こりや首こり
- 過去に肩の病気や怪我をしたことがある
- 長時間同じ姿勢でいる(パソコンやデスクワークなど)。
引き金なる動作
また、次の動作は引き金となりやすい動作です。
- 横向きでの就寝
- 子どもを抱っこする。
- ゴルフやテニスのスイング
- 肩に負荷の生じるような激しい運動
- 腕を上げたまま等の無理な姿勢での作業
四十肩・五十肩の症状
症状は3期に分けることができ、症状が落ち着くまでの期間は、個人差がありますが約1年程度と言われています。
症状の分類
- 炎症期(急性期):発症後~約2週間
炎症も痛みも強く、一番つらい時期。 - 拘縮期(慢性期):炎症期後~約6か月
炎症がおさまり激痛が鈍い痛みに変わっていくが、肩はまだ動かしづらい。 - 回復期:6か月~
痛み・可動域制限共に改善してくる。
四十肩・五十肩の時によく見られる症状
- 肩を回せない。
- 腕を上げると痛い。
- 腕を自由に動かせない。
- 寝返り時に肩が痛む。
- 洋服の着脱がしにくい。
- 後ろに腕を回せない。
- 利き手の反対側の肩が痛む。
- 肩がこわばっているように感じる。
- 夜間寝ている時に痛みが出てくる。
- 遠くの物や背後の物を取ろうとすると痛い。
- 片側の肩だけ痛む(両肩が同時に発症することは稀)。
四十肩・五十肩は一度治ると再発はしにくいですが、完治した方の肩をかばったり肩のケアを怠ったりすることで、反対側も後になって四十肩・五十肩を発症する場合があります。
肩だけでなく腕や手にもしびれを感じた場合は、他の病気の可能性があるため注意が必要です。
四十肩・五十肩の予防法
はっきりした原因が解明されていないので確実な予防法はありませんが、四十肩・五十肩を発症する要因を避けることが予防につながると言えます。
四十肩・五十肩の予防に効果的と思われる方法
- 肩を冷やさない。
- 肩を酷使しない。
- 良い姿勢を心がける。
- 規則正しい生活を心がける。
- 肩甲骨を意識しながら肩を動かす。
- ラジオ体操など普段から適度な運動を行う。
四十肩・五十肩に一度なってしまうと、完治まで毎日つらい日々が続くことになります。
予防法は簡単なものばかりなので日常生活に取り入れつつ、予兆のような痛みを感じたら無理をしないようにしましょう。
五十股というものもある
四十肩・五十肩の股関節版で「五十股」というものがあります。痛みが慢性化しやすいので、予防のためにも日常的に軽い運動を心がけましょう。
四十肩・五十肩の検査
四十肩・五十肩では痛む場所や痛み方を把握するために、医師による問診や触診が中心に行われます。
つらい状態をわかってもらうためにも、事前にメモに書いておくなどをすると伝え忘れがなく安心です。
問診
問診では以下のような内容を確認されます。
- 症状
- 痛む場所
- いつから痛み出したのか。
- どのような時に痛むのか。
- 痛みが強まったり弱まったりする姿勢があるか。
触診
可動域の検査(上下・水平・外旋・内旋)を行います。
医師の手によって肩や腕を様々な方向に動かし、痛みがない状態でどのくらい動かせるか、どの角度で痛むかなどを調べます。
レントゲン検査・超音波検査・MRI検査・血液検査など
四十肩・五十肩は「医学的にこれといった原因が見つけられない病気」なので、これらの検査をしても四十肩・五十肩を特定できる要素はありません。
症状が似ている病気が多くあるため、他の病気である可能性を否定するために行う検査です。
四十肩・五十肩と症状が似ている病気
関節リュウマチ、骨腫瘍、腱板断裂、自己免疫疾患、肩関節石灰沈着性腱板炎、肩関節腱板損傷、腱板断裂、変形性肩関節症、頚部脊椎症、心筋梗塞の前兆など。
四十肩・五十肩の治療法
四十肩・五十肩の治療は主に整形外科やペインクリニックで行われます。症状により3つの時期に分けられ、それぞれに適した治療を行うことが重要になります。
(1)炎症期(急性期)
炎症を鎮め、痛みを取ります。
- 安静にする。
- 患部を冷やす(冷湿布・氷嚢・保冷パックなど)。
- 薬物療法(内服薬・座薬・外用薬・注射など)。
(2)拘縮期(慢性期)
組織の癒着を防ぐために、少しずつ動かしていきます。
- 温泉治療
- 鍼治療
- ストレッチをする。
- 患部を温める(蒸しタオル・カイロ・入浴など)。
- マッサージをする(手→腕→背中→肩の順に行うと効果的)。
- 患部を冷やさない(肩あてやストールなどで保温)。
- 漢方薬を服用する(肩用ラックル、シジラックなど)。
- 軽い体操を行う(アイロン体操、テーブル拭き体操など)。
- 肩こりに良いとされるつぼを押す(肩井、雲門、肩ぐう、外関、天宗など)。
(3)回復期
可動域を回復させるために、積極的に肩を動かしていきます。
- 患部を温める(蒸しタオル・カイロ・入浴など)。
- ストレッチや体操などを行い、積極的に肩を動かす。
拘縮期(慢性期)や回復期での運動は、関節拘縮による凍結肩(Frozen Shoulder)を避けるために必要なことなのですが、無理をすると悪化させてしまう危険性もあります。
痛みを我慢して行う運動は、さじ加減が難しいので自己判断はせずに医師の指示に従いましょう。
四十肩・五十肩は自然治癒が可能な病気のため稀ですが、上記以外の治療法として症状が重い又は治療期間の短縮を希望する場合に、外科手術(関節鏡視下授動術又は麻酔下徒手的授動術)が行われる場合があります。
手術では硬くなった関節包(関節を包む組織)をはがして切り離すことで、肩関節の動きを良くすることを目的とし、手術後には長期的(数ヶ月)なリハビリが必要になります。
鍼灸・指圧マッサージ・整体・マッサージなどの代替医療も症状の改善に効果を期待できますが、保険適用外ですので事前に料金を確認するようにしましょう。
妊婦さんと肩こり
妊娠中に四十肩・五十肩になる人はあまりいませんが、お腹が大きくなり、重心の位置が妊娠前と比べ変化することで、腰はもちろんのこと肩や背中にかかる負担も大きくなるため、肩こりに悩む妊婦さんが多くいらっしゃいます。
妊婦さんに肩こりが起こる原因
- 血行不良
- 眼精疲労
- 運動不足
- 重心の変化
- ホルモンバランスの変化
- ストレスによって筋肉が緊張する。
対処法
- 患部を温める。
- 血行をよくする。
- 良い姿勢を心がける。
- ストレッチやヨガなどの軽い運動をする(安定期を過ぎてから)。
子どもを抱っこは要注意
子育てをしている親、もしくは祖父母などは、よく「子どもの抱っこ」が原因で四十肩・五十肩を発症しています。
子どもを抱っこするということは、肩に負担がかかり、四十肩・五十肩を誘発しやすい状態になってしまうのです。
子育て中はそうでなくても身体を動かすことが多い時期なので、肩に痛みがあると日常生活に支障が出てしまいます。
抱っこ紐やスリングなどを利用して肩への負担を減らすように心がけましょう。
看護師からひとこと
四十肩・五十肩は、痛みを無意識に恐れて余計に肩関節を動かさなくなってしまいがち。そうなると、余計に関節の動きが悪くなり、負のスパイラルに。
整形外科で診断・治療(場合によってはリハビリ)を受けたあと、あまりに続く痛みに関しては、ペインクリニックを受診するのがよいでしょう。
四十肩・五十肩のまとめ
- 四十肩と五十肩の違いは発症時の年齢のみ。
- 原因は不明の場合が多い。
- 肩の痛みと可動域が制限されるのが主な特徴。
- 両肩同時に発症することはほとんどない。
- 日頃から適度に肩を動かすことが予防につながる。
- 痛みがあるからといって、かばいすぎると逆効果。
- 時期(急性期・慢性期・回復期)によって治療法が異なる。
- 自然治癒が可能だが、似ている病気も多いので自己判断は禁物。