尿管結石は尿路結石の一つであり、尿管に結石が入ってつまることによりひどい痛みが襲ってきます。心配な症状が出たら、早めに病院へ行くことが必要です。ここでは尿管結石、尿路結石について丁寧に説明していきます。

更新日:2017年08月07日

この記事について

監修:大見貴秀医師

執筆:当サイト編集部

尿管結石・尿路結石とは

尿管結石とは腎臓で作られた結石が「尿管」でひっかかってしまい痛みなどの症状が出る病気です。

尿は腎臓で作られ「尿管 → 膀胱 → 尿道」を通って外に排出されますが、この区間を「尿路」と呼び、この場所で発生した結石を総称して「尿路結石(腎臓結石+尿管結石+膀胱結石+尿道結石)」と呼びます。腎臓(腎盂・腎杯)と尿管にできることがほとんどです。

尿路結石説明図

尿路結石の中でも尿管結石の痛みは特に強烈です。

尿管には解剖学的に3箇所細くなっている場所があり、そこに結石が詰まりやすいと言われています。

女性にも尿路結石が増えている

尿路結石は中年以降の男性の発症率が高いため男性の病気と考えられていましたが、最近では若者や女性(特に更年期以降)でも増えています(男女比は2:1です)。

女性も遅い時間まで働く人が増えたことなどにより、女性と男性が同じような生活をするようになったことが背景にあるとも考えられています。

結石が詰まったままの状態で放置すると腎機能が低下する恐れがあります。早めに病院に行くことが大切です。

ここでは、尿管結石の話を中心にしながら、尿路結石全体についても解説していきます。


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尿路結石の原因

結石は尿中の成分が何らかの原因で過飽和状態となり結合し結晶化したものです。この成分はカルシウム、マグネシウム、尿酸など様々で人によってそれぞれ異なります。

中でもカルシウムの結石の成分には、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムがあり、全体の9割がこれに該当します。

結石ができる原因ははっきりしていないのですが、幾つかの危険因子があると考えられています。

特に肉類を多く食べている人、偏食、大食い、運動不足など生活習慣に関連していることが多く、また夏場など汗をかきやすい季節は体内の水分が少なくなり、結石ができやすいと言われています。

ただし、水分が必要だからといって、ビールなどのアルコールやコーヒーなどは逆効果です。(結石の予防などは後段で説明しています。)

結石ができやすい要因には次のようなものがあります。

結石の危険因子

  • 体質遺伝
  • 水分摂取が少ない
  • 汗をよくかく
  • 尿路感染している
  • 偏食・大食いである
  • 運動不足である
  • 尿の停滞・濃縮がある
  • ストレスがたまっている
  • 長期臥床による尿流の停滞がある
  • 薬(ステロイド)を使用している
  • 動物性蛋白、脂肪などの肉類を多く食べている。
  • 糖分、塩分を多くとっている
  • 尿路通過障害(尿管狭窄、前立腺肥大など)がある
  • 何らかの原因疾患がある(代謝やホルモンの異常)

結石が出来やすい病気

また、危険因子に気をつけていても再発してしまう方は、結石ができやすい病気にかかっている恐れがあります。次のような病気は可能性がありますので、注意してください。

  • 骨粗鬆症
  • 高尿酸血症
  • クッシング症候群
  • 高カルシウム血症
  • シスチン代謝異常
  • 原発性副甲状腺機能亢進
  • 炎症性腸疾患(クローン病など)

尿管結石の症状

腹痛

結石が腎臓から、尿管に移動すると七転八倒するような激痛が襲ってきます(安静にしても痛みはおさまりません)。

尿管の長さは約25~30cmと長いので結石が移動すれば痛む位置も変わり、痛みが一時的に収まる場合もあります。

主な症状

  • 血尿
  • 腰痛
  • 冷や汗
  • 顔面蒼白
  • 吐き気や嘔吐
  • 男性は陰嚢、女性は外陰部が痛む(放散痛)
  • わき腹から下腹部にかけて突然生じる激しい痛み(疝痛発作)

尿管に入る前の腎臓結石の状態での症状

結石ができると、尿管に入る前の状態でも、様々な症状が出ることがあります。逆に症状が出ないこともあり、気づいたときには結石が大きくなっていたということも十分に起こりえます。

尿管に入る前の結石の状態であらわれる症状としては、次のようなものがあります。

  • 血尿
  • 背中の違和感
  • 鈍い痛みを感じる慢性的な腰痛
  • 腹部~背中やわき腹の範囲で感じる筋肉痛のような痛み

尿管結石と間違われやすい病気

症状が似ていることなどから尿管結石と間違えることがある病気があります。

  • 腸閉塞
  • 急性膵炎
  • 子宮外妊娠
  • 急性虫垂炎
  • 急性憩室炎
  • 胃十二指腸潰瘍穿孔

このほかに、背中の痛みから心筋梗塞や狭心症が隠れいていることもあります。

結石の予防法

結石は発生の原因がはっきりしていないため、有効な予防法もわかっていません。

しかし、危険因子を避け規則正しい生活を送ることで、ある程度のリスクは回避できると考えられます。

尿路結石は再発率が高い病気で半数以上の方が再発しますが、結石ができても小さければ自然に尿として排出されます。

結石を作らないことも大事ですが、同じくらい結石を成長させないことも重要になります。

心がけたい生活習慣

尿路結石が心配な方は次のことを注意して生活するといいでしょう。

  • 就寝前にコップ一杯の水を飲む
  • バランスのよい食事や規則正しい食生活を心がける
  • 1日2L以上の水分摂取を心がける(水、麦茶、ほうじ茶などが良い)
  • 食べ過ぎに気をつけるもの:シュウ酸(ほうれん草、紅茶、チョコレート)、尿酸(ビール、レバー)、糖分、脂肪、塩分
  • なるべく摂取したほうが良い物:クエン酸(果物や野菜)、マグネシウム(野菜や海藻)、食物繊維(野菜)、カルシウム(乳製品、小魚、大豆製品)

尿管結石・尿路結石の検査

CT検査室

尿路結石の診断では以下の様な検査を行い、結石の位置や大きさに加え腎臓の状態などを調べます。

触診

体を触って叩打痛があるかを調べます。

尿検査

尿潜血反応:肉眼もしくは顕微鏡で尿中に赤血球が混じっているかを調べます。

血液検査

腎機能(尿素窒素、クレアチニン)、尿酸、カルシウム、リンなどの数値を測定し、腎機能に障害がないかを調べます。

腹部X線検査(腎尿管膀胱単純撮影:KUB)

腎臓~膀胱までをX線で撮影し、結石の有無や位置を確認します。

結石の中にはレントゲンに映らない成分の物もありますが、結石で最も多いシュウ酸カルシウム結石はレントゲンに写ります。

超音波検査

場所によっては結石が確認できない場合もありますが、尿管内の結石の有無や腎臓や尿管の状態を調べます。

造影CT検査

他の検査では不明瞭になりがちな骨盤内の尿管の走行がわかります。尿路が写し出されないとその部分に結石か何らかの狭窄がある、ということになります。


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尿管結石・尿路結石の治療法

尿管結石の治療は泌尿器科で行われ、治療内容は結石の大きさにより異なります。結石が小さければ自然に排泄されるのを待ち、大きければ砕いて取り除きます。

結石の大きさが5mm以下

経過観察

尿管結石が小さい場合は自然に排泄される可能性が高いため1日2L以上の尿量が出るような水分を摂取すること・適度な運動・薬物治療を行い結石が自然に出るのを待ちます。

薬物治療

  • 鎮痛剤(内服、坐薬、注射)
    尿管結石に伴う痛みを和らげます。
  • 鎮痙剤
    結石の刺激に反応して収縮している尿管の痙攣を鎮めます。
  • 排石促進剤
    尿管を広げます。
  • α遮断薬
    前立腺肥大症の薬であり、結石に対して保険適応はありませんが、結石を排出しやすくする作用がある可能性が示されています。(α遮断薬の副作用として、めまいなどに注意が必要です。)

結石の大きさが5mm~1cm

結石の状態や症状により、最適な治療法を選択します。

閉塞が強く、腎臓が片側しか働いていないような場合や、熱が出ている場合(急性腎盂腎炎を併発している場合)は緊急性が高いので、ステント留置術を行うこともあります。

結石の大きさが1cm以上

医師

砕石治療

自然排石できる大きさまで結石を細かく粉砕したり、除去したりします。

破砕の最中に結石が移動し行方不明になってしまうと手術は中止になります。

(1)経尿道的尿管砕石術(TUL)

尿道から内視鏡を挿入し、結石をレーザーで砕き取り除きます。施術後、尿路を確保するために尿管ステントを留置する場合があります。

尿管ステントとは腎臓から膀胱へ尿を流すための管のことをいいます。尿管ステントがあると排尿時の痛み、血尿、頻尿などの症状が現れますが、留置期間は平均2週間から3か月程度で、必ず抜去もしくは交換が必要です。

(2)体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

体外から衝撃波をあてて結石を砕き、排石させます。

(3)経皮的腎砕石術(PNL)

皮膚から腎臓に穴を開けて内視鏡を挿入し、結石を砕き取り除きます。

腎結石で比較的大きなものなどの場合に行われます。

開腹手術(切石術)

現在は殆ど行われていません。手術が行われるのは、結石が自然に排出されず、閉塞や感染によって膿腎症になっている場合などの特殊な場合です。

尿路結石の合併症

尿路結石になってしまうと、他の病気になる可能性が出てきます。どのような病気になる可能性があるのか、簡単に説明します。

尿路結石が原因になる恐れがある病気

結石があることで尿の流れが悪くなり、腎臓に負担がかかります。

水腎症→腎盂腎炎→腎不全と症状はどんどん悪化していきます。

水腎症

結石が尿管を詰まらせる事で尿が逆流します。逆流した尿で腎臓が腫れ、腎機能に障害がでてきます。

腎盂腎炎

腎臓内に停滞した尿が細菌感染をおこします。重症化すると細菌が血液に入り込み、重い全身症状を起こす敗血症に繋がる恐れがあります。

腎不全(尿毒症)

両側の尿管が結石で同時に詰まることで発症します。腎不全が進行すると人工透析治療が必要になります。

砕石治療(TULやPNL)が原因になる合併症

前段に説明したとおり、結石が大きい場合はレーザーや内視鏡などを使用して結石を砕く、TULやPNLといった治療を行います。

この治療については、可能性は少ないですが一定のリスクがありますので、一応、ご紹介しておきます。

手術中

  • 尿管損傷(尿管穿孔、尿管断裂)
  • 周辺臓器の損傷
  • 感染症(敗血症)

手術後

  • 血尿
  • 発熱
  • 感染症(敗血症)
  • 尿管狭窄
  • 腎盂腎炎
  • 深部静脈血栓症(肺塞栓症)

尿管結石と妊婦さんの関係

妊婦さん

妊娠中に尿管結石で痛い思いをする妊婦さんは少なくありません。

尿管結石の前兆症状の一つである腰痛を妊娠によるものだと思ってしまい、疝痛発作が起きて初めて結石の存在に気づくことがあります。

妊娠中は胎児を育てるために母体がカルシウム不足になりがちです。

体内でカルシウムが不足するとシュウ酸の濃度が高くなり結石化する恐れが高まります。

その上、鉄分を補充しようとほうれん草やレバーを食べると、よりシュウ酸過多や尿酸過多の状態に陥ってしまい、結石ができやすい状態になってしまいます。

原因

  • カルシウム不足+結晶成分の過多
  • 子宮が大きくなることで膀胱や尿管を圧迫し尿が停滞する

検査

本来はX線で結石の有無を確かめますが、妊娠中はレントゲンを不用意に使いづらいため、確定診断が難しいといえます。

  • 尿検査
  • 超音波検査

治療

砕石治療などの積極的な治療は行えません。

結石の痛みが訪れても痛み止めで乗り切るしかないので、痛くならないために十分に水分を摂取し痛くなったら患部を温めてみましょう。

尿管結石と子どもの関係

尿管結石と子ども

子どもは成人に比べると頻度は少ないですが、尿管結石になる恐れがないということではありません。

原因

子どもが尿管結石になる原因は生活習慣が大きな原因となる大人とは違い、何らかの病気が隠れていることが多いと言われています。

  • 先天的な尿路の奇形(膀胱尿管逆流現象など)がある
  • 尿に結晶成分が多く排泄される病気を罹患している
  • 生まれつき結石を作りやすい体質を持っている

症状

  • 血尿
  • 側腹部痛や下腹部痛(大人ほどの激痛ではない)
  • 不機嫌、嘔吐、哺乳力低下(乳幼児の場合)

予防法

  • 水分摂取
  • 食事(ダメな食べ物など)に気をつける

検査

  • 尿検査
  • X線検査
  • 超音波検査

治療

子どもの場合は4mm以下で自然排石が期待できます。

  • 経過観察
  • 薬物療法
  • 砕石治療
  • 原疾患があればその治療

まとめ

  • 尿管結石は尿路の一部である尿管に結石が詰まる病気。
  • 男性の方がなりやすい。
  • 主な症状は血尿と激しい痛み。
  • 尿が濃縮すると結石ができやすい。
  • ほとんどの結石はシュウ酸カルシウム。
  • 結石は腎機能の低下をもたらす。
  • 痛みがなくても放置してはいけない。
  • 生活習慣を変えないと再発しやすい。
  • 水分摂取と食事内容で結石はある程度防げる。
尿管結石に関する質問や回答が寄せられていますので、こちらも参考にしてください。

[カテゴリ:尿, 生活習慣, 男性に多い]

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