更新日:2017年07月25日
緑内障とは?
目に入ってきた光は、カメラのフィルターの役割を担う角膜を通り、レンズの役割を担う水晶体を通ることによって網膜に結像します。
網膜では光の情報が電気信号に変換され、その情報が視神経を通って脳に伝わることによって、私たちは物を見てそれを画像として認識することができます。
緑内障とは、その光の情報を脳に伝える視神経に異常が起こり、脳で正しく画像を認識できなくなる病気です。
緑内障を発症すると、視力が落ちたり、視野欠損(物が見える範囲が狭まる)が出たりといったことが起こります。
緑内障は、日本における失明原因の約25%を占めて第1位であり、40歳以上では約20人に1人に所見がみられると言われています。
しかし、痛みなどもなくゆっくり症状が進むため自覚症状を感じることが少なく、眼科を受診している人は約20%にすぎません。
病名の由来
角膜と水晶体は光を遮らずに網膜に通さなければいけないので、透明でなければいけません。
通常、人の体の隅々にまで酸素や栄養を届けるのは血液ですが、角膜と水晶体には血管はないため、必要な酸素や栄養は、目の中を流れる房水という液体から得ています。
緑内障では、この房水が何らかの原因でいっぱいに満たされ、眼球を覆っている角膜がむくみます。
その結果、瞳が青っぽく見えることから「緑内障」という病名がつきました。
緑内障の原因
眼球の中は房水によって満たされており、眼球は内側から外側に押されて球体を維持しています。この眼球を外側へ押す力を眼圧と呼んでいます。
通常、房水の量は産出と排水のバランスが保たれており、適度な眼圧(正常値は10~21mmHg)を維持しています。
何らかの原因で房水の流れが妨げられると眼球内の房水の量が増加して眼圧が上昇し、視神経が押し潰されて損傷し(陥凹)、正常に機能しなくなります。これが緑内障です。
視神経が痛めつけられる大きな理由は高眼圧ですが、眼圧は正常値なのに緑内障を発症する人が多いことがわかっています。
視神経乳頭の強さは人によって異なりますが、視神経が構造的に弱い場合、正常レベルの眼圧でも視神経が傷つけられてしまいます。
そして、この正常眼圧緑内障は日本人に多いことがわかっています。
また、ストレスや長時間のパソコンの使用によっても、視神経を傷つけたり、眼圧を上げたりすることに繋がるといわれています。
眼圧は変化する
眼圧は1日の中でも変化するものであり、1年を通じてみると、冬季に高く、夏季には低くなりやすいことも知られています。
眼圧に影響するものとしては、年齢、性別、近視や遠視の程度、人種、体型、運動、血圧などもがあります。緑内障の患者さんは特に1日の眼圧の変化が大きいです。
緑内障の種類
発達緑内障
生まれつき眼内の房水の流れが未発達なため、眼圧が上昇する緑内障です。
眼球そのものが大きくなることがあり、昔から、俗に「牛眼」と呼ばれています。
乳幼児の緑内障は急速に悪化し、眼球の拡大によって視機能が損傷してしまうことが多いので、早期に手術することが一般的です。
続発緑内障
外傷やブドウ膜炎などの角膜の病気、網膜剥離、目の炎症といった目の疾患による眼圧上昇によっておこる緑内障です。
多くはありませんが、散瞳薬、睡眠薬、抗うつ薬、副腎皮質ステロイド薬の投与によって起こる場合もあります。
ステロイド薬の副作用として、ステロイド点眼を1カ月続けると、5%程度に眼圧が20~30mmHgに上昇するケースが見られます。
原発緑内障
患者さんが最も多く、ほかの病気などが原因ではない原発緑内障は、次の3つに分けられます。
1.正常眼圧緑内障
視神経が眼圧に対して構造的に弱いため、正常レベルの眼圧でも視神経が障害を受けてしまう緑内障です。
日本人の緑内障の7割がこの正常眼圧緑内障だと言われています。
視神経の血液循環が悪いことや、遺伝などによって、通常では緑内障を起こさない程度の眼圧でも視神経が傷つけられてしまうと考えられています。
また、加齢や近視もリスク要因であると考えられています。眼圧の最大値が常に21mmHgを超えない場合に診断されます。
2.開放隅角緑内障
房水の流出口(隅角)は開いているのに、房水の出口(線維柱帯)が目詰まりすることによって徐々に眼圧が上昇する緑内障です。
症状はゆっくりと進行します。正常眼圧緑内障と診断され、一度でも22mmHg以上であれば開放隅角緑内障と診断されます。
3.閉塞隅角緑内障
隅角がふさがって房水の流れが妨げられることにより、眼圧が上昇します。急性の場合には、吐き気などといった自覚症状が現れます。
40歳以上の女性に多く(男性の3~4倍)、遠視気味の人がなりやすいと言われています。
開放隅角緑内障よりも眼圧が高くなりやすいので、発作時には速やかに眼科を受診してください。
緑内障の症状
眼圧が急激に上昇して発症する急性緑内障では、眼の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状を起こすことがあります。
急性緑内障は、充血や瞳が青っぽくなるといった見てすぐにわかる症状がでやすいです。
時間が経過するほど治りにくくなるので、すぐに治療を行って眼圧を下げる必要があります。
ほとんどは慢性緑内障
ほとんどの場合は、自覚症状がないまま病気が進行してしまう慢性緑内障です。
慢性緑内障の唯一の自覚症状は、視界の一部に見えないところができる視野欠損です。
健康な人でも眼の中心からやや外れたところに見えない点(盲点)がありますが、緑内障ではその見えない範囲が徐々に広がります。
しかし、症状が10年ぐらいかけてゆっくりと進むことや、普段は両目で物を見ているために互いの視野でカバーされており、「見えていないことに気づかない」ことがほとんどです。
損傷した視神経は治療を行っても元には戻らず、すでに失われてしまった視野も回復しません。早期に発見して緑内障の進行を防ぐ治療を行うことが重要です。
緑内障になりやすい人とは
緑内障の発症因子は、主に次の2つになります。
(1)家族歴・遺伝
兄弟に緑内障の患者がいる場合は3.7倍、両親では2.2 倍、いとこでは2.9倍、発症確率が上昇します。
家族内に緑内障患者さんがいる人は、40歳を過ぎたら年1回の定期検診をお勧めします。
(2)加齢
加齢は緑内障の大きな危険因子です。年齢によっておおよそ以下のような確率で発症するといったデータもあります。
- 40歳代では50人に1人
- 50歳代では37人に1人
- 60歳代では21人に1人
- 70歳代では12人に1人
緑内障の検査
失われた視野は元には戻らないため、緑内障は早期発見をして眼圧を下げ、視野欠損の進行を抑えることが重要です。
緑内障は症状がとてもゆっくり進むうえ、自覚症状がほとんどないため、早期発見のためには毎年1回の検査を行いましょう。
眼圧検査
眼圧を測定する方法としては、患者さんの目に圧縮空気を当てる非接触型と、麻酔をかけて患者さんの角膜の表面に測定器具を当てる接触型とがあります。
非接触型の検査は人間ドックや健康診断でもよくやりますが、目をつぶってしまってやり直しさせられることが多いです・・・。
高眼圧が原因ではない緑内障では、眼圧検査だけではわかりません。
眼底検査
眼底の写真を撮って視神経の陥凹を直接確認する検査です。
視神経の眼球の出口(視神経乳頭)には、小さなくぼみがありますが、緑内障ではこのくぼみが拡大して白く写ります。
OCT検査(光干渉断層計検査)
目の網膜を断層画像にして撮影する検査です。眼底検査などの従来の検査では確認できないような網膜の状態を把握できます。
具体的には、網膜の出血の範囲や深さ、どの程度のむくみがあるかなどが確認できます。
この検査によって、視神経の厚みなどを測定できるほか、病気の進行具合なども確認できるため、病気の経過観察が可能となります。
検査は目に検査の器具が触れることがなく痛みがありません。また、10分程度の時間で終了するため、非常に負担の少ない検査です。
隅角検査
緑内障の疑いがある場合に行う検査で、特殊なコンタクトレンズを患者さんの目に押し当てて隅角を観察して診断します。
点眼麻酔をして行いますので、痛くはありません。
私は眼科でこの検査を行いましたが、痛くはないのですが点眼麻酔が真っ赤ですごく怖かったです。「眼球刺されるっ!」と思ったら、目の下あたりに目薬をちょっとさしただけでした。
視野検査
機械の前に座って、小さな光が見えたらボタンを押します。30分近くかかります。
私の場合、隅角検査の結果、特に異常が見つからず、「眼底検査にひっかかりやすい目のカーブ。若い人に多い。」と言われ、もし今後も眼底検査に引っかかるならば視野検査を行うと言われました。
緑内障の治療
高眼圧が原因ではない正常眼圧緑内障でも、眼圧を下げることによって緑内障の症状が進行するのを遅らせる効果があると言われています。
このため、緑内障の治療では、まずは眼圧を下げることが行われます。
薬物療法
緑内障の治療では、薬物療法が基本です。
現在では10種類以上の目薬・点眼薬が発売されており、緑内障のタイプや眼圧の高さなどに応じて処方されます。
症状や効果の度合いによっては、2~3種類の目薬を使用しなければならないこともあり、副作用も出てくることがありますので気をつけなければいけません。
なお、緑内障の点眼薬としては、効果が高く副作用もあまりない「PG関連薬」というものを使用することが多いです。
また、眼圧降下薬もありますが、全身の副作用が強く出ることがあり、内服できない場合もあります。
緑内障の禁忌薬
緑内障に人には使用してはいけない薬(禁忌薬)というものが、多く存在します。
代表的なものでは、眼圧を上昇させる可能性のある抗コリン作用がある薬、そして、ステロイドの薬も使用に制限があります。
ただし、抗コリン作用は風邪薬などに入っていますし、ステロイド剤についても使用する必要のある人は多いと思います。
少しも使用してはいけないということではありませんので、医師と相談することが大切です。
レーザー治療
点眼薬の服用でも効果がない場合、レーザー治療もおこなわれます。レーザー治療には、虹彩に孔をあけて眼内の房水の流れを変えるものと、線維柱帯に照射することで房水の排出を促進するものがあります。
レーザー治療は10分程度の施術で済み、ほとんどの場合は入院の必要はありません。また、痛みもほとんどありません。
手術・入院治療
薬物療法やレーザー治療でも効果が表れなかった場合、房水を眼外に染み出すように細工をする手術や、線維柱帯を切開して房水の排出を促す手術があります。手術後も定期的な検査が必要です。
手術を行ったとしても、手術前の視力や視野が回復することは難しく、この先に病状が進行しないように防ぐことが手術の主な目的です。
入院期間・入院費用
入院期間は治療内容によって異なりますが、10日程度と考えておくといいでしょう。
また、費用は治療によっても異なってきますが、保険適用で3割負担として15万円から25万円程度は負担が必要です。
高額療養費制度が受けられる場合は8万円程度で済みますが、いったんは自分で立て替えて医療費を支払うことになりますので、注意してください。
看護師からひとこと
緑内障にかかっている患者さんは、排尿障害の薬や内視鏡検査など、関係ないようなところで使用する薬剤が、眼圧を上げてしまうことがあります。
「おしっこのことだから関係ない」と思っていると、思わぬ事態に。どの医療機関を受診するにも、必ず既往歴に緑内障があることを伝え、お薬手帳を持参しましょう。
まとめ
原因など
緑内障の原因は高眼圧と言われていますが、日本人の場合は高眼圧ではなく、視神経が眼圧に対して構造的に弱い正常眼圧緑内障が多くなります。
また、症状はとてもゆっくりと進行するため、自覚症状がないまま進行することも多く、定期検査で見つけることが重要です。
検査など
眼圧検査だけでは正常眼圧緑内障を発見することはできないため、眼圧検査を毎年行う必要があります。
家族(特に兄弟)に緑内障患者がいる場合は、40歳をすぎたら毎年検査を行うことが大切です。
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