更新日:2017年10月01日
副腎とは
副腎は、腎臓の真上に位置し、その大きさに個人差はあるものの、一般的に重さは約5g、幅は2㎝程度というとても小さな臓器です。
左右で形が異なり、右は三角形、左は半月状となっています。
副腎は、ホルモンを分泌する内分泌器官の一つで、75%程度を占める外周部の「副腎皮質」と中心の「副腎髄質」に分かれ、ホルモンを分泌しています。
私達の体には〝ホメオスタシス〟といって、体の状態を一定に保つ機能が備わっていますが、ホルモンはこの働きに深く関わっているものです。
副腎から分泌される副腎ホルモンも例外ではなく、私達が生きる上で非常に重要な役割を担っています。
副腎の働き、健康・美容とのかかわりなど
副腎には、副腎皮質と副腎髄質の2種類がありますが、それぞれに分泌されるホルモンや役割が異なります。
ここでは、ホルモンの種類別にその働きをご紹介したいと思います。
副腎皮質ホルモン
副腎皮質では、3種類の副腎皮質ホルモンが分泌されています。
コルチゾール、アルドステロン、アンドロゲンの3種類になります。以下にそれぞれを解説していきます。
1. コルチゾール
糖質コルチコイドの一種で、生命維持に必要不可欠なホルモンです。
また、ストレスが加わると分泌されるホルモンであることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
*ここでいうストレスとは、精神的なストレスだけでなく、栄養不足や喫煙、暑さ寒さなどの体調に変化を与えるものも含んでいます。
コルチゾールの主な働きは、糖質や脂質、たんぱく質などの栄養素の代謝促進です。
具体的には、糖質制限や断食と言った極端に食べ物を摂らないダイエットを行うと、脳のエネルギーとなるブトウ糖が不足するため、筋肉に含まれるたんぱく質を分解して糖を生成します。
これを「糖新生」と言うのですが、糖新生が行われるとコルチゾールは、脳以外で糖を使用することを制限し、血糖値を上昇させます。そして、脳以外への組織に対しては、脂肪を分解してエネルギーを供給します。
糖質制限や断食が痩せやすいと言われているのは、このようなメカニズムがあるからです。
その他、コルチゾールは抗炎症作用や免疫抑制作用にも関わっています。
2. アルドステロン
鉱質コルチコイドの一種で、主に塩分や水分、カリウムのバランスを調整しています。
少し前までは人間も狩猟や戦争で出血し、命が脅かされることが多くありました。そのため、「体液が足りない」と体が感じた時に、体液を体の中に保持するホルモンが必要で、それがアルドステロンなのです。
アルドステロンは腎臓に作用し、腎臓のフィルターを通過したナトリウムを再吸収することを促進します。水分はナトリウムにひっぱられて動くので、体液が尿となって失われずに保たれているという仕組みです。
アルドステロンが過剰に分泌されると、ナトリウムや水分が体内に蓄積されやすくなるため高血圧になったり、カリウムの排出が促進されることで血液中のカリウムが足りなくなったりすることで、筋肉の低下や脱力感、麻痺などが起こります。
また、逆にアルドステロンの量が不足すると、吐き気やしびれ、脱力感、不整脈などの症状があらわれる、高カリウム血症や低血圧を引き起こします。
3. アンドロゲン
アンドロゲンは、テストステロンなどを含む男性ホルモンの総称です。
声代わりや体毛の増加、筋肉の増強など、男性が男性らしい体つきになるために欠かせないホルモンです。
なお、女性であってもこのアンドロゲンは分泌されています。
男性は精巣で、女性は卵巣でアンドロゲンが生成されるのですが、女性の場合は途中で女性ホルモンのエストロゲンに変換されるので、実際に分泌されるのは男性の10%以下と言われています。
ただし、エストロゲンに変換されずにアンドロゲンが過剰分泌されてしまうと、排卵障害などを起こし不妊症の原因になることがあります。
副腎髄質ホルモン
副腎髄質ホルモンには、2種類があります。以下に、それぞれを説明していきます。
1. アドレナリン
ストレス反応に深く関与するホルモンです。
不安や緊張、興奮、怒り、恐怖といったストレスによって分泌されると、交感神経にいち早く作用して心拍数や血圧を上昇させ、危機的な状況に心身を対応させます。
例えば、お化け屋敷に入った時や、重要な会議で発言しなければいけない時など、緊張や不安が続くと心臓がドキドキして、汗をかいたりしますよね。
これは、アドレナリンによる反応の一種です。
また、アドレナリンが分泌されると、血糖値が上昇するので空腹を感じにくくなります。
趣味などに没頭している時にお腹が空きにくいのは、こうしたアドレナリンの働きが関係しています。
なお、アドレナリンは上記のような恐怖や緊張状態の他にも、運動によって分泌量が増えることがわかっています。
加えて、脂肪分解酵素のリパーゼを活性させる働きもあることから、上手に取り入れることでダイエットに有効なホルモンと言われています。
2. ノルアドレナリン
アドレナリンと同様に、ストレス下に置かれると分泌されるホルモンで、副腎以外にも脳や交感神経の末端からも分泌されます。
ノルアドレナリンはアドレナリンの前駆物質(アドレナリンはノルアドレナリンが変化したもの)です。
副腎が悪くなるとどうなるのでしょうか。
私達が生きていくためには、副腎の正常な働きが欠かせないことがわかりましたが、それではもし副腎の働きが悪くなってしまったらどうなるのでしょうか。
副腎の働きが悪くなったときの症状
副腎の働きが悪くなると、副腎から分泌されるホルモンの量が減り、ストレスに対する耐性が弱くなってしまいます。
では、どのような症状が起こるのでしょうか。
- 慢性的な疲労感
- 朝起きるのが辛い
- 夜なかなか寝付けない、または寝てもすぐ目が覚めてしまう
- 常に微熱がある
- めまいや耳鳴りがある
- 胃腸の調子が悪い
- 塩分や糖分の高いものが食べたくなる
- 花粉症やアレルギーの発症や悪化
- ぼーっとする、仕事がなかなか捗らない
- 記憶力の低下、物忘れが酷い
- 何をしても楽しくない、人生が虚しく思う
- 不安感が強くなった
- 些細なことでイライラするようになった
- コーヒーや紅茶などカフェインを含む飲み物を多く摂取してしまう
- PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)が悪化
- 性欲の減退
- すぐ風邪を引くようになった
副腎の働きが悪くなる原因
副腎の働きが悪くなる原因のひとつとしてストレスが挙げられます。
副腎は「ストレスと戦う臓器」と呼ばれており、脳でストレスを感じるとその情報が副腎へと伝達され、抗ストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリン)を分泌しストレスを緩和します。
しかし、毎日のようにストレスが続くと、副腎はフル稼働を余儀なくされ、やがて疲弊してしまいます。
また、ストレスを感じるとタバコやアルコール、コーヒーといった嗜好品を利用してストレスを解消するという方は多いと思いますが、タバコはニコチンが副腎皮質に作用してアドレナリンやノルアドレナリンの分泌を促してしまうことがわかっていますし、コーヒーはコルチゾールとアドレナリンの分泌を増加させてしまいます。
そのため、毎日たくさん摂ったり、常習的に摂取したりしていると副腎に負担を掛け、働きを悪くしてしまう可能性が考えられます。
この他にも、夜遅くまで起きているなどの不規則な生活や、糖質の多い食品の過剰摂取や栄養の偏った食事も、副腎を疲れやすくしてしまう要因となります。
つまり、対人関係や仕事などによる精神的なストレス、睡眠不足や過重労働などの肉体的なストレス、食事や喫煙などの生活習慣が重なり合って副腎の疲弊が起こります。
副腎の働きをよくするための方法
副腎の働きをよくするためには、次のような方法を試してみましょう。
1. ストレスを回避する
ストレスを感じやすい方には、特有の思考の癖があり、あれこれと考えているうちに物事をマイナスにしか捉えることができなくなってしまいます。
ですので、あれこれ考え始めたら、そこでストップです。テレビや音楽など他の事に意識を向けるようにしたり、運動するなどの体を動かすことを行うなどして、物事を深く考えないようにする意識づくりが大切です。
また時には、旅行に行くなどのいつもとは違う環境に身を置き、気分転換を図ることも良いです。
2. タバコやアルコール、カフェインの摂取を控える
タバコやアルコール、コーヒーを飲むと心が落ち着くため、摂らないことで逆にストレスとなってしまいそうと思うかも知れませんが、これらを摂って気持ちが安定するのは一瞬です。
摂取してしばらく経つとまたストレスを感じるため、それを抑えようとして、摂取する回数も、量もだんだんと増えていき、摂取せずにはいられない依存状態となってしまいます。
副腎を休めるために、これらの摂取を控えるようにしましょう。
3. 食生活を改善する
タバコやアルコールの摂取と同様に、過剰な糖質の摂取も副腎に悪影響を与えます。
糖質カットの商品も最近は多く販売されていますので、こうした商品を上手く取り入れて糖分を取りすぎ吸いないようにしましょう。
4. 運動を行う
副腎の働きをよくするために運動を行う場合は、気持ち良いと思う程度で止めることが大切です。
運動が苦手という方は、ウォーキングや散歩などから始めてみるのもよいでしょう。
その時も、「一時間は歩かなければ」「毎日5km歩くことを目指そう」と変に目標を立ててしまうと、プレッシャーを感じてストレスとなり、かえって逆効果です。最初は、「できる時にできる距離を歩くだけ」という軽い気持ちで取り組みましょう。
歩くことで血行が促進され、体の各臓器に酸素や栄養が十分に行き渡るようになると、徐々に体力や気力が付いていき、運動が習慣化できるようになります。
看護師からひとこと
最近疲れやすい、やる気が出ない・・・と思ったら、身体のせいだったということもあります。病は気からといいますが、身体の病が精神的な病になることはあります。
体調がすぐれないと思う日が長く続くようなら、まずは一般内科で相談してみてはいかがでしょうか?副腎疲労だけではなく、貧血や甲状腺疾患などその他の病気でないことも確認する必要があります。