統合失調症は文化や人種などに関わらず世界中どこでも同程度の患者数がいると言われている病気です。ほとんどが30代までに発症します。現在は、薬やリハビリテーションなどの技術が発達してきており、治癒に至るケースもあります。統合失調症について調べています。

統合失調症とは?

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統合失調症とはどのような病気でしょうか。統合失調症とは、様々な刺激を伝達する脳をはじめとした神経系に障害が生じ、幻覚や妄想といった症状が生じる精神疾患です。かつては精神分裂病と呼ばれていましたが、現在は「統合失調症」に改名されました。

統合失調症の患者割合は地域や文化などによる差があまりなく、世界中のどこであってもおよそ100人に1人くらいはかかっていることがわかっています。すなわち、統合失調症がだれでもなりうる一般的な病気なのです。(ただし、日照量の多い地域と土壌中のセレン濃度が高い地域では少なく、都会の方が多いと言われています。)

2008年に実施された厚生労働省の調査では、日本で医療機関を受診している統合失調症の患者数は79.5万人であり、生涯のうちに統合失調症にかかるのは人口の0.7%でした。全体の8割は15歳から30歳の間に発症しており、割合では男性の方が多く、女性の方が発症年齢が遅めです。

近年では、新薬およびリハビリテーションなどの心理社会的ケアが進歩してきており、統合失調症患者の約半数は完全な回復が見込まれます。


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統合失調症の原因

統合失調症の原因

統合失調症の原因は、現在、解明されていませんが、研究などにより、全体の約3分の2が素因(素質的なもの)の影響であり、残りが環境的な影響によるものと言われています。また、母親が統合失調症の場合の子どもの発症率は約10%程度と言われています。

発症のきっかけ

統合失調症は、進学・就職・独立・結婚などの人生の変化点が発症のきっかけとなっていることが多いようです。また、最近の研究では、統合失調症の患者は、それ以外の人と比べて4倍も関節リウマチになりにくいという結果がわかっています。

統合失調症の経過

統合失調症では様々な精神機能の障害が見られますが、前兆期・急性期・消耗期・回復期・安定期と経過ごとに特徴的な症状が生じます。

前兆期

統合失調症のかかりはじめの時期ですが、急性期を前に様々な症状が出現します。

急に身辺が騒がしく感じる、焦りや不安感を感じる、音やにおいなどの感覚が過敏になる、物事に集中できない、眠れない、気力がわかないといった症状が出現します。

急性期

脳が働きすぎることによって症状が激しい時期です。幻覚や妄想といった統合失調症の特徴的な陽性症状が出現します。

本人にとっては不安や恐怖や切迫感などを強く引き起こしており、睡眠不足などにより生活のリズムが乱れて昼夜逆転の生活となったり、周囲とのコミュニケーションがうまくとれなくなるといった障害がでてきます。

消耗期

急性期に脳が働きすぎた反動で、脳が働かなすぎる状態です。眠気が強い、だるい、意欲がなくなる、自信がなくなる、ひきこもるなど元気がなくなり、感情や表情が乏しくなる陰性症状が出現する時期です。

回復期

治療により急性期が徐々に治まっていく過程で、少しずつ周囲への興味なども湧いてくる時期です。統合失調症のSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)やリハビリテーションなどを行う時期でもあります。

周りからは統合失調症が完治して元気になったように見えますが、本人にしてみれば将来への不安や疲労感を感じており、元気を十分には取り戻せていない時期ですので、辛抱強く待つ必要があります。

安定期

安定を取り戻す時期です。完全に元通りの元気を取り戻せることもありますが、回復期の元気のない日の状態が残ってしまうこともあります。
リハビリテーションにより社会復帰し、統合失調症の完全治癒に向かう患者さんもいますが、この状態から前兆期が再度始まり、再発を迎えてしまうこともあります。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は大きく分けると、幻覚やあるはずのないことを信じたりする陽性症状と、感情の起伏や表情が乏しくなる陰性症状と、集中力や記憶量が低下する認知機能障害に分けられます。

陽性症状は時間の経過により改善することが多く、陽性症状の改善とともに陰性症状が目立ってきます。


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陽性症状

統合失調症では特徴的な幻覚・妄想の症状が出現します。幻覚と妄想をまとめて陽性症状と呼びますが、おおよそ急性期に生じることが多いです。

陽性症状ではありえないことを言うようになるため周囲の人はびっくりしてしまいますが、薬物療法で比較的治療しやすい症状です。

幻覚

幻覚とは、実在しないものが感覚として感じられるもので、聞こえないはずの声などが聞こえる幻聴と、見えないはずのものが見える幻視などがあります。統合失調症では、幻聴が多く発症しますが、幻視はとてもまれです。

幻聴は外部から情報が入ってくるように感じるため、「脳に電波が入ってくる」「宇宙人が交信してくる」といった妄想を抱く患者も多く、「誰かが監視している」「悪口を言われている」などと訴えることも典型的です。

妄想

妄想とは、明らかに誤ったありえないことであるのに事実だと信じ、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことです。統合失調症では、1種類から数種類の妄想がみられることが多いです。

  1. 被害妄想
    被害を受けていると感じる妄想です。「周りが自分の悪口を言っている」「自分の体臭を他人が気にしている」など
  2. 関係妄想
    周囲のできごとをすべて自分に関連付けてとらえる妄想です。「自分が家の前を通るたびに近所の人が咳払いをして威嚇している」など
  3. 注察妄想
    常に誰かに見られていると感じる妄想です。「監視カメラで監視されている」など
  4. 追跡妄想
    誰かに追われていると感じる妄想です。「誰かに尾行されている」など
  5. 被毒妄想
    飲食物に毒が入っていると思い込む妄想です。嗅覚や味覚などが過敏になることから出現することがあります。
  6. 誇大妄想
    自分を偉大であると思い込む妄想です。「自分は世界を動かせる」など

知覚過敏

統合失調症では、音や匂いに敏感になり、光がとても眩しく感じる知覚過敏症状が出現することがあります。

陰性症状

陽性症状

統合失調症では、陽性症状の後で喜怒哀楽の感情や表情、何かに対する興味や意欲などが乏しくなる陰性症状が現れることがあります。今まで好きだったことに関心がなくなったり、部屋の中をきれいにすることや身だしなみにも無頓着になることもあります。

人と会うのを避けたりすることもあり、周囲から見ると周囲から「社会性がない」「常識がない」「気配りに欠ける」「怠けている」と取られ、統合失調症による症状とはわかりにくいことが多いです。

会話・行動

会話では話のピントがずれたり、連想が弱くなって話題がとんでしまったり、相手の話の意図がつかめないといった障害が出現します。

行動では、作業ミスが増えたり、効率が悪くなるといったことがあります。統合失調症では、注意を働かせながら行動や会話をまとめあげるといった知的行動が傷害することによると考えられています。

感情

自分の感情については、好きだったことに対しても興味が薄れてしまったり、感情や表情が乏しくなったり、自己の内界に閉じこもってしまうほか、不安感や焦燥感・緊張感などにより抑うつを伴うこともあります。

統合失調症では、他人の感情などに対しても理解ができにくくなり、相手の気持ちを理解できないため、相手とコミュニケーションを取ることをしたがらなくなります。

認知機能障害

統合失調症では、注意を適切に集中させたり、計画を立てたり、判断したりする認知機能が低下することがあります。

記憶力の低下によって、新しい仕事のやりかたを覚えることが難しくなってしまったり、作業をどこまで終わらせたのかわからなくなることもあります。

臨機応変な対処や経験に基づく問題解決が難しくなるなど、社会生活上多くの困難を伴い、長期のリハビリが必要となります。

その他

統合失調症でもパニック発作が起こることがあります。また、判断基準が確立しないため、価値の違いなどがわからなくなってしまったり、独り言や独笑などが現れることがあります。

統合失調症の治療

近年では、統合失調症の治療は、外来が中心となってきています。また、外来・入院いずれの場合でも、薬物療法とソーシャル・スキル・トレーニングなどのリハビリテーションを組み合わせて行うことが一般的です。

薬物療法

統合失調症の薬物療法・副作用

統合失調症の治療に用いられる薬物は、向精神薬(精神に作用する薬物の総称)うちのひとつである抗精神病薬です。 幻覚・妄想などの陽性症状を改善する抗精神病作用、不安・不眠・興奮などを軽減する鎮静催眠作用、感情や意欲の障害などの陰性症状の改善をめざす精神賦活作用があります。

また、抗精神病薬には、統合失調症の再発を予防する効果があります。抗精神病薬によって幻覚などが治まっても、薬物療法を続けないと数年で60~80%の患者が再発してしまうとされています。個人差が大きいのですが、初発の場合には1年、再発を繰り返している場合には5年程度服用を続けてから中止します。

自分だけの判断で薬物療法を中止せず、主治医に必ず相談しましょう。

副作用

抗精神病薬は、長期間の服用を前提としているため、全体としては重い副作用は少ないと言われています。副作用としては、肝臓や腎臓への影響が指摘されており、血液検査・尿検査・心電図などを数か月ごとに行います。

抗精神病薬に特徴的な副作用としては、じっと座っていられない、体がこわばって動きが悪い、震え・よだれが出る、口が勝手に動いてしまうなどがあります。また、薬物を継続服用することによる副作用としては、眠気やだるさ、立ちくらみ、口が渇く、便秘などがあります。

自分の判断で薬の服用を中止せず、医師に必ず相談しましょう。

予後

統合失調症の予後については、最新の研究によると、全体の3分の1はほとんど後遺症を残さず、3分の1が適応水準に若干の問題を残しながらも快方に向かい、重度の障害を残すのは10~20%と言われています。

幻覚や妄想などの症状は抗精神病薬が効きやすいため予後がよく、陰性症状は治療の効果が得にくいと言われています。しかし、患者の生活態度や薬物投与を含めた環境を改善することで症状を軽減することができます。

日本では入退院を繰り返すことが多いのですが、日本以外の国では統合失調症で入院することはほとんどなく、通常では5-6回の通院で終わります。

症状が現れてから薬物治療を開始するまでの期間が短いと予後がよいことが指摘されていますので、早期発見・早期治療が大切です。

看護師からひとこと

統合失調症にかかりながらも、子どもを抱えたり社会生活を送っている人達はたくさんいます。ただし、これには家族や周囲の理解と協力が不可欠です。

まずは病気に対する正しい知識をもち、偏見をなくすことが大事です。

[カテゴリ:精神・神経, 若年に多い]

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