認知症の両親の介護をこれからどうしようかと考えている。高齢化社会の中、そういった人がたくさんいらっしゃると思います。病院勤務の看護師さんから、介護認定に関することや、社会的入院、そして介護する身内の人が準備しておかなければならないことなどについて、寄稿していただきました。

困ってからでは遅い!? 介護保険の申請待ち

  • いつかはこうなると、わかっていた・・・
  • もう少し大丈夫かと思っていた・・・

 そんな風に思ってしまうのが、年老いた親の介護。でも、認知症というのは少しずつ進行するばかりではありません。ある日急に進むこともあります。

認知症の原因や治療、予防法などについては、こちらをご覧ください。

 地域によっては、市が行う公共の放送で、行方不明者のおたずねをします。そのほとんどは高齢者ですが、60代でも認知症と思われる徘徊によって行方がわからなくなるため、市民に情報提供を呼びかけるのです。

  • それまで仕事人間で働いて来た父親が、65歳で定年を迎えて家にこもるようになったら、認知症になってしまった。
  • 農作業もこなしていた90代の父親が、冬の間だけ農作業を辞めて家の中で暮らしていたら、春にはもう認知症と診断された。

 こんなこともあるのです。そして、いよいよ困ってから市に介護保険の申請を頼んでも、すぐにサービスを利用できるわけではありません。

 介護認定には、下の手順を踏む必要があります。


 スポンサードリンク

介護認定の手順

介護認定

  1. 市役所の窓口で、要介護認定の申請をする。
  2. 市区町村の職員が、自宅を訪問して、認知症の程度や、日常生活動作(移動動作・食事・排泄・入浴etc.)の状態を確認
  3. 主治医意見書を、市町村から担当医に依頼する。
  4. 審査判定 一次 → 二次
  5. 要介護認定
    介護認定審査会の判定に基づき、要支援1~2・要介護1~5までの7段階に認定
    市町村から認定申請者へ結果を通知
  6. ケアマネージャーが、介護(介護予防)サービス計画書を立てる。
    介護サービス計画書=ケアプラン
    介護度に応じて、月の中で利用可能なサービスを選択
  7. サービス利用開始

 いかがでしょう?これだけの段階を踏んで、ようやく介護保険としてサービスが利用できるようになるのです。

 ケアプランの変更は随時可能ですが、やはり一番時間のかかるのが、要介護認定です。市役所に申請してから自宅への訪問調査までは10日前後で来てくれることが多いのですが、そこから時間が必要です。

 通常、新規の介護認定は1か月かかると言われています。

 認知症が進んでしまってからでは、どうなるでしょう?交代で仕事を休んで、昼夜問わず、つきっきりで見ていなければなりません。 

 自宅で発症して家族が困るのは、アルツハイマー型認知症が多いですね。脳血管性の認知症ならば、初期の時点で医療介入がありますから、自宅へ帰る前にリハビリ病院を経由し、その間に介護認定や自宅改修をすすめる猶予があります。

 アルツハイマー型認知症は、若年での発症が起こります。若ければ若いほど足腰はしっかりしていますから、徘徊する場合や暴力行為がある場合、高齢での発症よりも一層家族の関わりは大変なものとなります。

認知症で入院はできる?

 もう家族で介護するのは限界。仕事の休みも使い尽くしたし、心身ともに疲労困憊。親と別居している場合、自分の家を空けて実家へ介護に通っていると、介護をしている家族全員の生活にも支障が出てしまいます。

 最近では独居の老人が多く、いきなり認知症になって近所の人や民生委員から「様子がおかしいよ」と言われ、初めて気づくことも多いのです。
 
 病院勤務をしているとよくあるのが、「認知症になってしまったから、入院させてください」という飛び込みの受診と入院希望。

 一般の人にはなかなか理解されていませんが、病院という場は医療保険です。日本は国民皆保険制度で、いつでも病院に受診すればなります。しかし、介護には介護保険が適用されます。

 そして、医療機関は医療(治療)の必要ない患者には、保険が認められません。そんな患者さんが入院した場合、病院は赤字になってしまいます。

 また、このように介護申請もせずにいきなり病院へ飛び込んでくるパターンは、離れたところで子供が暮らしていることが多くあります。明日には東京へ戻らなくてはいけないから、「今日入院させてください」と言うのです。

 こう言われても、医療機関側は困ります。家族の都合(介護状態)によって入院することを、「社会的入院」と言います。この社会的入院は、公的病院や大学病院では、ほとんどの場合に断られてしまいます。

困ったときは、民間病院に頼んでみる

入院 では、入院が必要となった家族の人達はどうしたらよいでしょうか?

 結果として、民間の病院に入院となる場合が多いようです。

 市などが運営している市立病院へ言っても断られることも多いようで、関連施設として老人介護施設やグループホームを保有している民間病院に行く人も多くいます。

 ただし、民間の病院であっても、まずは入院を断られることが多いようです。入院になった場合、家族は東京に戻ってしまい、後のことは病院に任せきりになり、場合によっては、病院に対して施設への入所を依頼してくるようなこともあります。こういったことは、病院からすると、多くの前例から予想しています。また、病院の経営面からみても、赤字になるような患者さんを好んで入院させることはないのです。

 だからといって、家族としても困っている状況ですので、引き下がる訳にもいかないと思います。すぐに介護申請を出しても、サービス開始まで1か月かかり、介護認定が下りてもすぐに施設入所できる保証もないのです。

 こういう場合、何か病名を付けて入院させることで話をまとめることが多くあります。認知症の患者さんは、進行すると食事をとらなくなってしまうことが多いので、一度全身のスクリーニング(採血・レントゲン・胃カメラ・心電図etc.)を行い、認知症治療薬を開始します。

 認知症の治療薬には、レミニール・メマリー・アリセプト・リバスタッチパッチ等があります。使用を開始すると吐き気や妄想・眠気が出たりといった副作用を起こすこともありますし、段階をおって量を増やさなければいけない薬もあります。

 そして、なんとか急性期病棟で一通りの検査と処方薬を調節し、その後はリハビリを目的としてリハビリ病棟などへ移ることになります。

 民間病院は、その病院の施設長や経営者によって入院や治療が決定するので、公立病院よりも融通がききやすい側面があります。

入院が裏目に!!高齢者の入院は要注意

 入院した場合、高齢者なら医療費は1割負担で済みますから、施設入所より安上がりです。しかも、医師が入院を認めてくれれば即日入れます。

「認知症に困ったら病院を受診する方がお得」ということが言われたりしますが、あながち間違いではありません。

 ですが、もう一度繰り返しておきますと、本来、認知症は入院を要しません。他の病気などで入院が必要な患者さんが認知症の場合は、もちろん入院することになりますが、原則、認知症でしかも介護申請も終わっていない人については、入院治療とはなりません。

 中には、認知症が進んで寝たきりになり、もう食事もとらなくなってしまったから、経管栄養のための管(胃瘻)を増設するために入院、ということもありますが、これも数日で本来なら退院となります。

 また、仮に自宅の介護環境が整うまでの間に入院することが可能になったとしても、その入院が認知症を悪化させてしまうこともあるのです。

入院が認知症を悪化させる!

 高齢者は、急に生活環境が変わってしまうと、認知症を悪化させてしまうのです。よくあるのが一時的な治療のための入院で認知症を発症・悪化させるパターンです。

 高齢者は一般的に、肺炎に罹りやすいです。これは、飲み込み(嚥下)が上手にできず、胃につながる食道ではなく、肺につながる気道に食べたものが流れてしまうからです。

 通常なら食道と気道の分かれ道には、気道に流れないようにフタがありますが、そのフタがうまく働きません。おまけに、気道に食べ物が入っても咳をする反射が鈍くなっているので、そのまま気道の方に入ってしまうのです。

 そして気づいたときには38・39度の高熱が出ていて、レントゲン写真でも重症の肺炎となっていることが多いです。

 肺炎が重度になると、内服の抗生剤では足りません。点滴で抗生剤を投与しなければなりませんし、酸素吸入が必要になることもあります。食事がとれなくなれば、水分補給のための点滴も必要ですね。

 このような高齢者の肺炎による入院治療をしたことがきっかけで、認知症を発症・進行させてしまうことがあります。

 同じようなことが、高齢者の骨折入院にみられます。例えば、それまでしっかりしていた高齢の親が、ある日自宅内で転び、大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨折)を起こして入院。入院治療とリハビリをしている間に、認知症になってしまった・・・ということが、医療の現場ではよくあります。

 最初の段階くらいなら、なんとかデイサービスを週5日利用することで自宅での介護が可能だったかもしれないレベルが、介護申請を待つ間入院させたことで、更なる認知症の悪化を招き、もう自宅ではみられないくらいに進行してしまうこともあるのです。

 認知症と診断されていない人であっても、高齢者が入院をするだけで認知症へのリスクがぐんと上がります。そこへ既に認知症の人が自宅調整のために入院してしまうと、その間にどんどん進行してしまうのです。

入院後も安心はできません

 入院して少しの間、家族は介護から解放されると思います。しかし、そう安心してばかりはいられません。

 患者さんがベッドから落ちそうになったり点滴を抜こうとしたり、オムツを外そうとしたりという行為がひどくなると、病院から家族に夜間付き添いをするように連絡します。そうでないと、預かれないと。また、3食の食事介助に呼ばれることもあります。

 入院したら着替えだけ届ていればいいということではないのです。着替えにしても、本人がオムツはずしてしまう場合には、オムツはずし防止用のつなぎの服を購入するように言われるかもしれません。食事をこぼして汚れたりでもすれば、相当の枚数が必要です。

 大きな声を出す場合や、ナースステーションの近くでないと管理しきれないという場合には、有料個室を使うこともあります。もちろんこれは自費なので、毎日個室料を払うことになりますから、結構な経済的負担です。

 そして、家族は入院の間に、次の手を考えなくてはいけません。デイサービスやショートステイで切り抜けるのか、施設入所にするのか。その費用は誰が負担するか、そもそも空きがあるのか?

 いつまでも入院していることが難しいのは説明したとおりです。入院の期間は、今後どのように介護を行っていくのかを決めるための期間であることも肝に命じておくことが大切です。家族会議をして、早めに方針を決めておきましょう。


 スポンサードリンク

認知症患者を支えるのは、1人では無理!

GLH1714 このように、認知症になった場合、入院してもしなくても、家族による介護が必要になります。遠く離れた地から、看護をすることは、ほとんど不可能です。仮に施設に入所していても、状態が悪化して病院へ搬送されてしまうようなことが起こると、その都度家族が呼ばれることとなります。

 住宅事情や、仕事の事情というものは、人それぞれにあると思います。そういった事情があるからこそ、80歳を超えるような高齢の両親が夫婦二人、もしくは1人暮らしをしているのなら、認知症を発症する前に将来のことを考えておくことが大切です。

 まだ頭がしっかりしているのに・・・と思っても、明日転んで骨折するかもしれません。明日、脳梗塞を発症するかもしれません。まだ年相応の理解度はあるし・・・という場合でも、介護認定を受けておくとよいですね。要介護1以上なら専属のケアマネがつきますから、いざというときには臨時で短期入所ができるように調整してもらうことも可能となります。

 高齢の両親の介護を自分が行うと分かっている人は、現時点での介護認定をしてみてはいかがでしょうか。既に認知症にかかっているという場合も、今後どのように介護していくかなど、身内で相談しておきましょう。

 いくら年取ったら親の世話は長男の自分が・・・と思っていても、実質1人では難しいことが多いのです。人海戦術に出ることが必要なときもあります。そのときに、子供3人とそれぞれの夫や妻を入れて6人で頑張るほうが、断然負担は少なく済みます。さらに孫まで含めていけば、更に1人にかかる負担は少なく、今の仕事も続けながら介護をなどを行うことが可能かもしれません。

 介護はいつ終わるかわかりません。1人で頑張ろうとせず、身内・行政も巻き込んで対応しなければいけない問題なのです。

まとめ

  • 認知症は、急激に進行することがある。
  • 介護保険の申請は、新規の場合約1か月かかる。
  • 認知症治療薬には、吐き気や妄想・眠気等の副作用がある。
  • 入院しなくてはいけない治療方法でない限り、認知症の入院は基本的に認められない。
  • 民間病院によっては、身体的治療と一緒に認知症の治療を行う場合、入院が認められる。
  • 入院後も家族には付き添いを求められることがある。
  • 症状によっては、個室管理が求められることがあり、その分経済的な負担となり得る。
  • 入院中に次の行き先や、どうやって介護していくのか家族で決めておく必要がある。
  • 1人の認知症患者を支えるのに、1人が頑張っても対応しきれない。
  • 認知症は、いつ始まりいつ終わるのか、わからない。

[カテゴリ:介護, ]

 スポンサードリンク


このページの先頭へ