更新日:2017年08月26日
しもやけとは
しもやけとは、冬に起こるスキントラブルで循環障害の1つです。
正式名称を「凍瘡」と言い、「霜腫れ」「霜膨れ」とも呼ばれています。
昔の病気というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、現在でも冬場によくみられる病気です。
腫れや痒みなどの皮膚症状を伴う病気で、発症すると非常に身体的にも精神的にも辛いものです。
しもやけは事前に予防することや、悪化する前の早期対応がとても大切です。
しもやけが起きる仕組み
身体の血管には動脈と静脈があります。動脈は酸素などの栄養を多く含んでおり、静脈は二酸化炭素などの老廃物を多く含んでいます。
寒くなると動脈・静脈どちらの血管も収縮します。その後暖かい場所に行くと、動脈はすぐに拡張して通常の血流を回復します。それに対し静脈は動脈よりゆっくり少しずつ拡張していきます。
この動脈と静脈の拡張する時間に差があることで、血液の流れが一定ではなくなり、血液の滞りが起こります。
静脈の血管の流れが悪くなることで、栄養を含んだ動脈血が手足の先などの末梢部位に届かなくなります。
その結果、血管のうっ血や炎症が起きてしまうことをしもやけと言います。そのため、しもやけは、手足の他に、耳や頬など末梢の細かい血管によく起きます。
しもやけの原因
しもやけは子どもや女性に多くみられ、繰り返す人もいます。原因としては以下のようなことで起こります。
- 皮膚が冷気にさらされる時間が多い。
- 寒い時期にブーツや締め付けの強い服を着て血液の循環を悪くしている。
- 寒い中の水作業やスキーなどのあと、衣服や靴が濡れたままで過ごす。(気化熱で体温が下がるため)
このように寒くて血液循環を悪くすることがしもやけを誘発します。
もともと体温が低い人や循環の悪い人は、なおさら注意が必要です。本人の体質、生活習慣も関係しています。
しもやけの症状
しもやけの症状は、炎症部の腫れやジンジンと痺れるような感じ、痒みや痛みなどがあります。
部位としては、手足の先、耳、鼻、頬などに出やすいです。最初に腫れが出て、暖かい場所に行くと徐々に痒みが出てくることが多いです。
腫れには患部全体が腫れ上がる場合と、部分部分が赤くなって腫れ上がるものがあり、前者は幼児などの子どもに多く、後者は成人に多くみられます。
症状は悪化してくると皮膚が赤黒い色になり、更に進行すると水疱を形成します。
この水疱が破れると細菌が付着して感染を起こしただれます。
治療法や注意点
しもやけは軽度であればゆっくりですが、自然に治ります。治癒させるために大事なのは血液の循環がしっかりキープされるということです。
そして、できるだけ皮膚の状態を悪化させないために、炎症部位を掻いたり叩いたりしないようにして過ごします。
皮膚の状態が悪化する場合や、痛みや痒さで眠れないなどの症状が出る場合は、悪化する前に早期に皮膚科に受診するようにして下さい。
皮膚科では、血液の循環を良くするためビタミンEや、痒み止めとしてステロイド剤などが処方されます。
しもやけの予防法
しもやけは何より予防が大切です。しもやけの予防は身体を冷やさないようにして血液の循環を良好にしておくことです。
寒い環境の中でも血液の流れをキープするため以下のようなことに気を付けましょう。
身体を冷やさないようにする。
寒い場所には長い時間いないようにして、身体を冷やさないようにすることが大切です。
出掛ける際はマスクや手袋、厚手の靴下などを着用し、末梢部位をできるだけ冷やさないようにします。
特に子どもの場合は冬場でも外で遊び回ることが多いので、寒さ対策をし身体を冷やさないよう注意してあげて下さい。
また、衣服が濡れた場合は早めに着替えるようにしましょう。
血行を良くするように心がける。
ブーツや先の細い靴、締め付けのキツイ服は血行を不良にするので、寒い日は避けるようにした方がいいでしょう。
また、お風呂上がりにはマッサージをするなどして、血液の流れを良くするようにしましょう。
代謝をアップさせる。
自分自身の体温を上げて代謝をアップさせることも、血液の流れを改善にすることに繋がります。
代謝を上げる方法は以下のようなものです。
- ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を行う。
- 筋トレを習慣化する。
- バランスの良い食生活を送る。(特に朝食は必ず摂取するようにする。)
- エアコンやストーブなどの暖房機器に頼り過ぎないようにする。(冬場の室温は20度~22度くらいを目安にする。)
要注意!!しもやけとよく間違えられる病気
しもやけの症状が一向に改善しない場合、他の病気である可能性もあります。以下の病気は症状がしもやけと似ており勘違いされることがあります。
凍傷(とうしょう)
皮膚が組織障害を起こした状態のことで症状によってⅠ度~Ⅲ度に分類されます。
Ⅰ度は皮膚が赤く腫れた状態、Ⅱ度は水疱ができた状態、Ⅲ度は壊死や潰瘍を起こした状態です。
しもやけが日常生活の中で発生するのに対し、凍傷は雪山の登山など極寒(-4℃以下)の環境に長時間さらされると起こります。
保温することが第一の治療となりますが、壊死を起こしており症状が酷い場合はその部位を切断することもあります。
全身性エリテマトーデス(SLE)
膠原病の1つで20代~40代の女性に多い原因不明の病気です。
初期症状では、寒冷刺激によって末梢部位の血液循環が悪くなり蒼白→紫色に変色し、10分~30程で元の皮膚の色に戻ります。
これを「レイノー現象」と言い、しもやけだと勘違いする人が多いです。
他にも手足の指に痛みや腫れを伴ったり、進行してきたりすると腎障害や脳血管障害などの神経症状、感染症などの全身症状が現れます。
この病気は改善(寛解)と悪化(再燃)を繰り返し慢性化する病気です。
炎症を抑えるステロイドによる治療が主体となりますが、先程も述べたように命に関わる合併症を併発することも多い病気なので注意が必要です。
全身性硬化症(強皮症)
全身硬化症も原因不明の病気で、皮膚が末梢部位から徐々に硬くなり、指の曲げ伸ばしなどが困難になる病気です。
SLEと同じように膠原病の1つで割合として中年の女性に多くみられます。
この病気でも初期症状としてレイノー現象がみられます。特徴として左右対称に症状が出現します。秋~冬の寒い時期に発症しやすいことも、しもやけに間違われやすい原因の1つです。
胃腸などの消化器の筋肉も徐々に硬くなるため飲み込もが難しく感じたり、便意やお腹が張ったりするといった腹部症状を訴える人もいます。
この病気も根本的な治療はないため対症療法が基本になり慢性化しますが、SLEと比較して生命予後は良いとされています。
ただし、心臓や肺、腎臓に疾患がある人は合併症に注意が必要です。
薬疹などのアレルギー反応
病気以外にもアレルギー反応として腫れや痒み、発赤など皮膚症状を来すことがあります。
アレルギーの中でも皮膚症状が一番多くみられるのが薬によるアレルギー反応です。どのような薬でも起こり得ますが、抗生剤や風邪薬、痛み止めなどで出現することが多いです。
食物アレルギーなどでもそうですが、アレルギー反応は皮膚症状だけでなく時に命を危険にさらすこともあります。薬を飲む時などはこのような副作用のことも頭に入れて服用するようにして下さい。
その他の病気
この他にも、サルコイドーシスや甲状腺機能低下症などでも、しもやけのような症状がみられることがあります。
このような病気は早期の対応が必要です。しもやけの症状が軽快しなかったり、悪化したりするようであれば大きな病気が潜んでいる可能性もあるため放置せず早めに病院に受診するようにして下さい。
現在は住環境が整っている場所が多く、昔と比較してしもやけになる人は減ってきています。
しかしながら、寒い時期には今でも多くの人がしもやけに悩まされています。なってしまうと痒みや痛みで苦痛の大きいものなので、寒い時期は油断せずに予防するようにして下さい。
まとめ
しもやけは寒い中で血流が悪くなると起こりやすくなるので、血行を良くすることが予防になります。
しもやけが改善しない場合、病気が原因となって似たような症状が出ている可能性がありますので、心配な場合は必ず医師の診察を受けるようにしてください。