更新日:2017年07月05日
膀胱炎とは
膀胱炎は膀胱内に細菌が繁殖したり、様々な原因によって膀胱内に炎症を起こしたりする病気です。
特に女性に多く、女性の患者数は男性の3倍から5倍ほどで、女性の5人に1人は膀胱炎の経験があるとの報告があります。
酷い状態になってしまうと、腎臓まで菌が上っていき急性腎盂腎炎を起こしてしまうこともあります。
膀胱炎の原因
膀胱炎の主な原因は細菌感染です。通常、健康な人であれば膀胱内に細菌はほとんどいませんが、外部から細菌が入り、菌が繁殖すると膀胱炎になります。
細菌は尿道から入ることが多く、尿道近辺の陰部を清潔にしていないと感染する可能性が上がります。特に若い女性では、不衛生な性交渉で感染することも多々あります。
女性の患者さんに非常に多い病気ですが、その原因は、女性の場合は男性と比べて尿道が短いことにあります。
尿道が短いということは、それだけ細菌が膀胱にたどり着きやすい状態となります。
また、それだけではなく、女性の場合、肛門と尿道の距離が近いことも原因の一つとなります。
膀胱炎の原因となる細菌として一番多いのは大腸菌です。大腸菌はその名の通り腸内に多く繁殖しており、その大腸菌が尿道に入って引き起こされることが多いのです。
加えて、尿意を我慢すると膀胱炎になりやすいともいわれています。
排尿することで尿路にある菌が排出されますので、我慢して尿がたまった状態は菌が繁殖しやすい状態となります。
その他、ストレスや疲れで体の抵抗力が落ちているときも膀胱炎になりやすい状態です。
健康な状態であれば免疫力や抵抗力があるため、簡単には細菌に感染しないのですが、ストレスや疲れなどで、体調が悪く免疫力や抵抗力が落ちている場合は容易に感染してしまうこともあります。
典型的には、なかなかトイレに行けない接客業などで、排尿を我慢せざるを得ないような環境の女性によく発症します。
膀胱炎の症状
排尿時の痛みが膀胱炎の主な症状になります。特に最期の尿が出る頃(終末尿)を出すときに痛みがひどくなります。
その他にも次のような症状があります。
- 排尿前に不快な感じがある。
- 排尿後の膀胱の痛み。
- 何度もトイレに行ってしまう(行きたくなる)。
- 排尿をしても残尿感がある。
- 尿が白く濁る。
- 血が混ざる。
また、尿の臭いが鼻につくことがあります。これらは感染が原因で膿尿(膿の混ざった尿)が生じることが原因です。
膀胱炎の症状を知っておくことで、早期に気づくことができますので、代表的な症状は覚えておくといいでしょう。
特に自分では言葉を発することができない幼児や、介護が必要な高齢者の場合、周りの人が症状に気づいてあげなければなりません。
おむつなどをしている場合はトイレの回数がわからない、残尿感がわからないなどのことがありますので、尿の色や臭いを確認することが大切です。
また、膀胱炎が進んでくると、残尿感が強くなり何度もトイレに行ってしまいます。
中には1日に20回以上もトイレに行く人がいますので、そのような場合は社会生活にも支障をきたす場合があります。
症状などで膀胱炎が疑われる場合には、できるだけ早めに医療機関を受診することが大切です。
膀胱炎の合併症
膀胱炎はひどくなると腎臓まで細菌が波及して繁殖してしまい、炎症を起こすことがあります。
急性腎盂腎炎といって、38度をこえるような高熱が出て、重度の場合はショック(血圧が下がり命に危険が及ぶ状態)に陥ることさえあります。
また、腎盂腎炎を繰り返すことで長期的には腎臓の機能が低下してしまいます。
膀胱炎の検査
膀胱炎の検査として一番ポピュラーなものは尿を採取し、試験紙法や、顕微鏡で観察するという方法です。(いわゆる尿検査です)
顕微鏡で白血球を観察し、白血球の数によって診断します。
膀胱炎は基本的に炎症を起こしている病気ですので、白血球の数によって、炎症の度合いを判断することができます。
尿培養検査
さらに、原因菌を特定するために、尿培養検査を行います。これは膀胱炎を引き起こした細菌を特定することができます。
尿培養検査で原因菌を特定することで、どのような抗菌薬を使用することが適切かを判断することができます。ただし結果が分かるには3-4日ほどかかります。
エコー検査など
その他の検査では、エコー検査も実施されることがあります。エコー検査を実施することで、腎臓や膀胱の異常を調べることができます。
また、出血が多いときなどは膀胱炎以外に膀胱癌などが隠れていないか調べることもできます。
膀胱炎の治療
膀胱炎の治療方法としては、抗生物質の服用が有効です。
抗生物質は細菌を殺す効果がありますので、膀胱内に侵入した細菌を殺して膀胱炎を抑えます。通常であれば1日から2日程度で症状は治まり、3日から5日程度で回復していきます。
膀胱炎については、通常は抗生物質投与以外の治療は要しません。抗生物質を服用しても治らない場合は他にも原因があることが多く、治療方法も見直さなければなりません。
膀胱炎の市販薬
膀胱炎の症状が現れた場合は、医療機関を受診して医師の診断のもとで治療を行うことが大切です。基本的には医師の診断のもとで治療してください。
膀胱炎の市販薬は、利尿作用のある漢方薬等が主なものです。抗生物質のように、菌に対して直接働きかける効果はありません。
漢方薬であっても体に合わないこともあります。そういった場合は、すぐに医師に相談してください。
また、妊婦さんや出産後の授乳を行っている人は、安易に自己判断で市販薬を使用することはお勧めできません。医療機関を受診の上、医師に相談してください。
膀胱炎の予防法
膀胱炎の予防法としては、原因をよく踏まえた上で、その原因に対して対策を取らなければなりません。
まず細菌が尿道から入らないように清潔に保っておくことが大切です。
排便時には便が尿道につかないようにしたり、生理時はナプキンなどを頻回に交換したりすることなどにより、尿道周辺を清潔に保ち細菌が尿道に入らないよう注意しましょう。
また、排尿を我慢することは細菌を増やすことになり、膀胱炎のリスクを高めてしまいますので、排尿を我慢せずきちんとトイレに行くようにしましょう。
特に膀胱炎になりかけや、初期段階の排尿の我慢は膀胱内に細菌をより増やすことになりますので、注意が必要です。
社会人の場合、排尿のタイミングが限られることもあり、排尿を我慢せざるを得ない状況が続くこともあります。膀胱炎になりやすい人は、こういう状況を会社に相談することが必要となるかもしれません。
その他、水分を良くとることも大切です。水分を多くとって排尿を促して尿道、膀胱内の菌を排尿とともに流します。
水分を多くとることによって、常に綺麗な状態で膀胱や尿道を保つことができますので膀胱炎になりやすい方は是非試してみてください。
妊婦さんと膀胱炎(妊婦さんが気をつけることなど)
妊娠したことを契機として膀胱炎を起こしてしまうことがあります。それは妊婦としてのストレスや、妊娠に伴う免疫力の低下も考えられますが、他にも原因はあります。
お腹の中にいる赤ちゃんが大きくなると、膀胱が圧迫されて膀胱が小さくなり、通常よりも少ない尿しか溜めておくことができない状態になってしまいます。
この際、圧迫されることで、解剖学的に骨盤内の臓器の位置関係が変わり、膀胱炎を起こしやすくなる可能性があります。
また、妊娠中は胎児への影響もあり、薬を飲めないと思って病院に行かない人も多いようですが、妊娠中は抗生物質が厳禁というわけではありません。
きちんと医療機関を受診して、医師と相談のもとで治療を受けることが大切です。
膀胱炎を我慢して悪化してしまうと、最悪の場合お腹の中にいる赤ちゃんにも影響が出る可能性もありますので、十分注意しておきましょう。
また、どうしても抗菌薬が怖いという人には漢方薬を処方する医師もいます。必ず医師と相談して治療するようにしましょう。
子どもと膀胱炎(子どもが気をつけるべきことなど)
子どもの膀胱炎は症状を上手に訴えられない場合もが多く、気がつきにくいのが特徴です。
頻尿になったり、おもらしをしたりや、おねしょをすることでで気付くことがありますが、それが膀胱炎だという認識が難しい場合もあります。
そこで、注意深く観るポイントとして、次のようなことを確認するといいでしょう。
- 普段よりもトイレに行く回数が増えていないか
- トイレを嫌がっていないか
- 不機嫌になっていないか
また、発熱や、嘔吐・下痢が出たりする場合もあります。
こちらの症状は風邪等と捉えてしまいがちですので注意が必要です。
小学生位になると、排尿時の痛み等の訴えができますので、よく聞いてあげる事が大切です。
子どもの膀胱炎にはいくつかの種類があります。幼児の場合は先天的な異常が原因となっていることもあります。
これらの症状は1才未満では男の子に多く見られ、1才を過ぎると女の子に多くみられます。
成長と共に自然に症状が消失する場合もありますが、あまり繰り返してしまうと腎臓が正常に働かなくなり、機能の低下につながってしまったりする場合もあります。
したがって、日頃から様子をしっかりと把握し、いつもと様子が違う場合は、早めに医療機関を受診することが必要です。
子どもの膀胱炎について
まとめ
- トイレは我慢しない…排尿は細菌を洗い流す機能がありますので、我慢せずに尿意を感じたらトイレに行くようにしましょう。
- 陰部は清潔に…特に女性の場合は陰部の細菌が尿道を通り膀胱炎になりやすいので注意しましょう。
- トイレの回数に注意…通常であれば1日の排尿回数は8回前後であることが多いです。しかし、膀胱炎の症状として頻尿になることが挙げられます。1日10〜15回以上は行くような場合には注意が必要です。
- 匂いや色に注意する…尿の匂いがきつくなったり、色が悪くなったりしてしまいますと膀胱炎の疑いがあります。特に自分で意思を伝えられない子どもさんいついては注意が必要です。
- 膀胱炎は、多くの場合は治る病気です…できるだけ早めに受診して抗生物質を服薬するようにしましょう。
- 子どもの膀胱炎は親が気をつけましょう…子どもは膀胱炎の自覚症状が少ないと言われています。トイレの回数が増えた、おしっこがあまり出ないのによくトイレに行くなどの症状が見られたら一度医師に相談してみることも大切です。
- 妊婦さんは膀胱炎にかかりやすい…女性は膀胱炎にかかりやすいと言われていますが、特に妊婦さんは注意が必要です。
- ストレスに注意…ストレスは体の免疫力を下げ、膀胱炎にかかりやすくなってしまいます。