更新日:2017年09月04日
ヘモグロビンとは
健康診断や人間ドッグなどでは、必ず血液検査が行われますが、その血液検査が一体何を目的に行われているかは、以外と知らない方も多いのではないかと思います。
血液には、呼吸によって肺から取り入れられた酸素を、体の末梢組織に運ぶという重要な役割があります。
そして、この役割を果たす上で欠かせないのが、血液内の赤血球の主要構成成分であるヘモグロビンです。
ヘモグロビンは体内の組織へ酸素を届ける
ヘモグロビンは、鉄を含むヘム色素とグロビンというたんぱく質からなる複合たんぱく質で、酸素はヘム色素と結合することによって全身へと運ばれます。
健康診断や人間ドッグなどでは基本的な検査として、必ずヘモグロビンの量を調べます。
では、ヘモグロビンが低くなってしまうのには、どのような理由が考えられるのでしょうか。
ヘモグロビンが低くなる理由
鉄分が少ない
ヘモグロビンが下がる理由として、最も考えられるのが鉄不足です。
鉄はヘモグロビンの材料となっているため、不足すると当然ヘモグロビンが作られなくなってしまいます。
また、鉄が不足してしまう大きな理由には、乱れた食生活があります。鉄は、体内で合成することのできないミネラルのため、食べ物で摂取する必要があるのですが、好きな物だけを食べる偏食や、脂質や糖質の多い外食ばかりをしていると、栄養バランスが崩れ、鉄を補うことが難しくなります。
さらに、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、月経など、体のどこかで出血している場合です。慢性的に出血していると、鉄分が不足していまいます。
ダイエットによる鉄不足も
ダイエットによる過度の食事制限も、体に必要な栄養を十分に摂れないことから、鉄不足を招く大きな要因となっています。
出血でもヘモグロビンは下がる
怪我による出血、胃潰瘍や大腸潰瘍が原因の消化器出血、女性の場合は生理や出産時の出血というように、血液の減少によってもヘモグロビンが下がることがあります。
ヘモグロビンが低くなるとどうなるのか
ヘモグロビンが低くなると、体内で必要な酸素の供給が滞ってしまいます。
鉄欠乏性貧血とは、文字通り鉄が不足することで起こる貧血、つまりはヘモグロビンの値が低いことで起こる貧血です。
鉄欠乏性貧血の症状
- めまいや立ちくらみ
- 動悸
- 階段の昇り降りで息切れが起こる
- 倦怠感がある
- 頭痛や耳鳴りがある
- 食欲不振
- 顔が青白い
- 爪の色が白い、表面がボコボコになる(スプーン状爪)
- 口内炎、など
鉄欠乏性貧血が進行することによる病気
鉄欠乏性貧血が徐々に進行すると、様々な症状が出てきます。ここでは代表的なものをご説明します。
異食症
異食症は、土や紙、粘土、チョークといった、本来は食さないものを欲してしまう病気です。
食べ物ではないとわかっているにも関わらず、歯応えを求めて食べずにいられなくなってしまいます。
これらの物を摂取することによって、胃や腸で消化不良が起こると、胃潰瘍や腸閉塞などの合併症が起こる危険性もあります。
氷食症
異食症の中で最も多いのが、氷を大量に食べてしまう「氷食症」です。1日で製氷皿に一皿以上の氷を食べてしまう場合などには、氷食症が疑われます。
胎児に鉄分をとられやすくなる妊婦さんに多いと言われており、特に貧血の自覚症状がなかったとしても、やたらと氷を食べてしまうという時は注意しましょう。
再生不良性貧血や巨赤芽球性貧血も
さらに、慢性的に鉄不足の状態が続くと、神経伝達物質の異常による「むずむず脚症候群」や、食道の粘膜が減って食べ物を飲み込みにくくなるなどの症状を併発することがわかっています。
このようなことから、貧血は決して安易に考えるものではなく、症状に気付いたら早急に改善すべき疾患だと言えるでしょう。
なお、貧血には鉄欠乏性貧血以外にも、骨髄に異常をきたすことで起こる「再生不良性貧血」や、ビタミンB12と葉酸不足によって起こる「巨赤芽球性貧血」などがあります。
必ずしも「貧血=鉄不足」ではありません。
それぞれの貧血の種類によって治療方法が異なるため、貧血の症状が現れた時は「鉄が足りてないからだ」と自己判断せず、まずは病院へ行って診察を受けることが大切です。
ヘモグロビンを増やす方法
ヘモグロビンが下がると、体にあらゆる支障が出てくることがわかったところで、次にヘモグロビンを増やす方法を見ていきたいと思います。
1. 鉄不足を解消しましょう
ヘモグロビンが低くなってしまう大きな原因である、貧血の改善を行うことが大切です。
つまり、鉄不足を解消することが、ヘモグロビンを上げる上で最も手っ取り早い方法と言えるでしょう。
ただし、鉄を多く含む食品には、動物性食品に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄があり、体内での吸収率が異なります。
その割合は、非ヘム鉄の2~6%に対し、ヘム鉄は25~35%となっており、大きな差があります。
そのため、効率よく鉄を摂取するなら、ヘム鉄を選ぶのがよいでしょう。
ヘム鉄を含む食品
ヘム鉄を含む動物性食品には、豚レバー、鶏レバー、牛赤身肉、アサリ、シジミなどがあります。
非ヘム鉄を含む食品
一方の非ヘム鉄を含む植物性食品には、海藻やほうれん草、小松菜、パセリ、ひじきなどがあります。
ビタミンなどと一緒に摂取すると良い
なお、鉄はビタミンCやビタミンB群、たんぱく質と一緒に摂取すると吸収がよくなることがわかっています。
ヘム鉄は勿論ですが、非ヘム鉄を摂る時はこれらの食材を同時に意識的に摂ることで、吸収率を上げることができます。
2. 食生活を改善しましょう
鉄を含む食品を摂っているからといって、それだけで鉄不足が解消されるわけではありません。
気を付けたいのが、私達が普段何気なく摂取している食品の中には、鉄の吸収を阻害する働きを持つものがあるということです。
鉄の吸収を妨げるものがある
例えば、コーヒーや紅茶などに含まれるタンニンは、鉄と結びつくことで水に溶けにくくなることから、吸収率を下げてしまいます。
また、インスタントフードやスナック菓子に含まれる添加物に使用されるリン酸塩や、健康的な食品の代表格とも言える大豆や玄米に含まれるフィチン酸塩も鉄の吸収を妨げる働きを持っています。
せっかく、意識して鉄を摂取しても、これらの食品を同時に摂っていたら、鉄を体内に摂り込むことが難しくなってしまいます。
ヘモグロビンを上げるためには、積極的に摂取すべき食品の他に、避けるべき食品があることを覚えておくことが大切です。
3. 有酸素運動をしましょう
ヘモグロビンを上げるには、有酸素運動も有効です。有酸素運動とは、酸素を多く取り込みながら長時間行う、比較的軽度の運動を言います。
主な有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、水泳、エアロビクスなどがありますが、運動は頑張れば頑張るほど健康によいというイメージを持っている方も多いことから、つい張り切って行ってしまいがちです。
汗を軽くかく程度が良い
また、汗をたくさんかくほど行ってもいけません。私達の汗には、体の老廃物と一緒にミネラルも含まれていますが、そのミネラルには鉄も含まれています。
つまり、汗をたくさんかくと鉄を失うことになるため、本末転倒となってしまうのです。
さらに、激しい運動は酸素不足や鉄の流出を起こすだけではなく、赤血球の破壊も招いてしまいます。
衝撃の少ない運動が良い
特に足の裏を強く打ちつけるスポーツ(例えば、バレーボールやバスケットボールなど)はお勧めできません。赤血球は薄い膜に覆われており、衝撃に弱いことがわかっています。
このため、何度も繰り返し衝撃が与えられると簡単に壊れてしまい、貧血を誘発してしまいます。
このような貧血は、スポーツ性貧血(溶血性貧血)と言われ、トップアスリートに多く見られます。
4. OTC医薬品や医薬部外品を利用しましょう
OTC医薬品とは、医療用と同じ成分が含まれるものを薬局で買うことができる医薬品です。
明らかな鉄不足が認められる場合は効果的です。
なお、医薬部外品はコンビニなどでも購入できるという手軽さはあるものの、OTC医薬品と比べて含まれる鉄の量が少ないため、効き目が穏やかになっています。
5. サプリメントを利用しましょう
毎日の生活の中で、手軽にヘモグロビンを上げたいならサプリメントがよいでしょう。
一般的にヘモグロビンを上げるサプリメント(貧血改善効果を期待するもの)は、鉄+その他の栄養成分というのが主流となっています。
そこでここでは、サプリメントを購入する際、鉄の他にどのような成分が入っているものを選べばよいのかをご紹介したいと思います。
たんぱく質
ヘモグロビンの合成には鉄の他にたんぱく質が欠かせません。
特に最近は、ダイエットなどによる栄養の偏りが原因で、たんぱく質が足りない女性が多く、鉄欠乏性貧血で悩んでいる女性の中には鉄を摂取しても症状が改善しないケースもあるのです。
このような場合は、鉄と一緒にたんぱく質を補うことが重要になります。
ビタミンC
ビタミンCと鉄を同時に摂取することで、体内の鉄の吸収率をアップしてくれます。
葉酸
水溶性のビタミンB群の一種である葉酸は、別名「造血ビタミン」と呼ばれ、赤血球の生成を助ける働きを持っています。
ビタミンB6
ヘモグロビンは主に鉄とたんぱく質からできていますが、たんぱく質の再合成に欠かせないのが、ビタミンB6です。
ビタミンB6が足りていないと、鉄を摂ってもヘモグロビンの生成が行われないため、貧血になりやすくなってしまいます。
ビタミンB12
ビタミンB12は、葉酸と共に赤血球の生成を行う成分です。不足すると、細胞の合成や修復が行われなくなり、異常な赤血球が増殖して「巨赤芽球性貧血」という悪性貧血を起こす恐れがあります。
なお、OTC医薬品やサプリメントなどで鉄を補給する際には、注意も必要です。
貧血には、鉄欠乏性貧血の他にヘモグロビンの量が直接関係しないものもあります。
病院で検査を受け、鉄不足による貧血と診断されている場合は別として、自己判断でこれらを摂取した時、体内に過剰に鉄が蓄積して肝機能障害や糖尿病を起こすことがあります。
また、食品以外から鉄を摂取する場合は、副作用として下痢や嘔吐、胃腸障害などが現れることもあるため、鉄を含む医薬品やサプリメントを摂取する時は、あらかじめ医師や薬剤師に相談してからにしましょう。
まとめ
ヘモグロビンが少ない理由は主に鉄不足です。鉄分を摂取するには、食生活を改めることや、適度な有酸素運動などが効果的です。
適正な食生活や適度な運動は、健康の維持に欠かせないものです。ぜひ続けられるようにしましょう。