更新日:2017年07月10日
貧血とは何か?
貧血とは、血液中のヘモグロビンが不足した状態をいいます。
ヘモグロビンは血液内に取り込まれた酸素を運搬して、体の隅々まで酸素を送る役割を果たしています。
このため、ヘモグロビンが不足すると、体が酸欠の状態となり、ふらついたり、疲れやすくなったりします。
このヘモグロビンは、赤血球の内部にあって、ヘムという鉄を含む赤い色素と、グロビンというタンパク質でできています。
したがって、鉄が不足すると、ヘムが酸素を運べなくなってしまいます。
また、赤血球の不足や、赤血球中のヘモグロビンの不足なども貧血の原因となります。
例えば、出血多量のように、急に大量の血液が必要になったときには、赤血球の生産が追い付かず、体内の酸素が不足してしまいます。
ここでは、貧血の原因や症状、貧血に関する病気について、説明していきます。
貧血の具体的な原因
貧血の中で最も多いのは「鉄欠乏性貧血」で、貧血の9割を占めます。
文字通り鉄分が足りない時に起きます。その他、赤血球をうまく作り出せないことなどが原因となります。
鉄分の体内取り込み量が少ない。
主に、鉄分を含む食品の摂取が不足している場合に起きます。
また、血液内に鉄分を取り込むにはビタミンB12、葉酸が欠かせません。ビタミンCも体内に鉄分を効果的に取り入れるサポートをします。
その他、ヘモグロビンの生成には、たんぱく質も必要となるため、たんぱく質不足でも、貧血になることがあります。
鉄分を体内に取り込む能力が低い。
何らかの原因で、鉄分やビタミンB12、葉酸などを、体内に取り込む能力が落ちてしまうことがあります。
胃切除など、消化器を摘出した後に、栄養を取り込む能力が落ちるケースがあります。
造血能力の異常
再生不良性貧血により、赤血球、白血球などが作れなくなるケース、骨髄異形成症候群のため、血液成分を作る元になる造血幹細胞に異常が生じ、作られる血液が異常な形になるケースなど、主に造血幹細胞の病気が理由で起こります。
その他、老化によっても赤血球を作る能力や、取り込み力が減ってきます。高齢者にも貧血の人は多く存在します。
妊娠などによる需要増大
妊娠や授乳、成長期における鉄の需要増大も貧血の原因となります。
貧血の種類(主な病名など)
鉄欠乏性貧血
上記のとおり、鉄分の不足により、ヘモグロビンがうまく作れないことから生じる貧血です。
再生不良性貧血
血を作り出す骨髄の異常が起きる病気で、赤血球だけでなく白血球などの血を作り出すことが出来なくなります。
腎性貧血
腎臓から出るエリスロポエチンというホルモンが「赤血球を作るぞ」という命令を出すのですが、腎臓の機能が低下すると、この働きが弱くなり赤血球を作る能力が落ち、貧血になります。
巨赤芽球性貧血
ビタミンB12や葉酸が欠乏すると、造血機能に支障が出て、巨大な赤芽球(赤血球の赤ちゃん)が出来、赤血球にならず、消滅してしまいます。赤血球量が減るという特徴があります。
栄養取り込み力が弱い、高齢者、妊婦に見られ、胃がんの手術による胃の切除後などに生じることがあります。術後3〜6年以降に出てきます。
自己免疫性溶血性貧血
自分自身の免疫(自己抗体)が赤血球を破壊してしまいます。
原因は全く不明なものが半数、体の病気が引き金になるものが半数と言われています。(遺伝性疾患、発作性夜間血色素尿症などの病気によって生じます。)
物理的要因、スポーツ貧血
運動の衝撃で赤血球が破壊されます。
ケガや病気による出血
ケガによる出血や、ガン、痔、胃潰瘍、生理、婦人科疾患(子宮筋腫、子宮内膜症など)による出血が原因となって、貧血が起こります。
貧血の症状
鉄欠乏性貧血
ヘモグロビン値は健康診断などでも測定する項目です。男性だと13.0〜16.6、女性だと11.4〜14.6程度です。
これが、8〜10以下になると、立ちくらみ、息切れといった貧血の症状が出てきます。
さらに、7以下になると、日常の生活に支障が出るようになり、4以下では布団から起きることが困難になり、命に危険が及んでいる状態です。
ただし、症状の進行はゆっくりであるため、慢性的な変化の場合、症状に慣れてしまい、それが当たり前だと思ってしまうケースが見られます。
腎性貧血
鉄欠乏性貧血によく似た症状が現れます。症状自体に気付かないケースも多いです。
巨赤芽球性貧血
ビタミンB12,葉酸が欠乏して起こる貧血のため、神経系の症状が出ます。具体的には、しびれ、下痢、食欲不振などがあります。
再生不良性貧血の症状
朝方に多発します。出血がなかなか止まらないという症状があります。
自己免疫性溶血性貧血
初期症状はあまりなく、息切れ、顔の青白さが出てきます。重度化すると、黄疸や腹部に不快感が出るのが特徴です。また、リンパ節の腫れや、発熱を伴うタイプもあります。
その他貧血全般に起こる可能性のある症状
- 鉄不足による、口角炎、口内炎
- 舌の表面がつるつるになる、酸味がしみるなどの味覚障害、口腔内粘膜異常
- 何かが体を這うような感覚、神経系の異常
合併症の症状
上記症状に加え、次のような合併症が生じることがあります。
プランマーウィンソン症候群
粘膜異常などにより、舌炎、口角炎、嚥下障害(食事を飲み込みづらい、または舌に痛みが走る)が起こります。
異食症
氷や生米など普段食べないものを口にするようになります。特に固いものを好むことが多いと言われます。味覚障害の一部と考えられています。
心肥大、心不全
血液やその中の酸素が足りないと、体が「もっと血をよこせ」と要求します。そのため、心臓は過剰に働くことになり、心臓に負担がかかってしまいます。
貧血と間違えやすい症状
貧血は「ふらつき」のイメージがあるため、朝礼で倒れる学生を貧血と思ってしまいますが、ほとんどの場合、低血圧により一時的に脳に血が回らなくなることが原因です。
また暑い時やアルコールを摂取した場合には、脱水で同じことが起きます。アルコールは、血液を作るのに必要なビタミンB1を壊す働きもありますので、ほどほどにしましょう。
まとめ
- 貧血とは、血液中の赤血球にあるヘモグロビンが不足した状態をいいます。
- ヘモグロビンは酸素を体の隅々まで送る役割を果たしていますので、ヘモグロビンが不足すると、体が酸欠の状態となります。
- ヘモグロビンが、酸素を運ぶために鉄分が必要となります。
- 貧血の9割は鉄欠乏性貧血です。食事から鉄分を補給できていないことなどが原因となります。
- その他、赤血球をうまく作り出せないことも、貧血の原因となります。
- ヘモグロビンの値が低くなると、貧血の症状が現れてきます。
- 貧血は進行すると、様々な合併症を引き起こすことがあります。