更新日:2017年07月08日
貧血の検査
貧血の検査は、基本的に血液検査を行うこととなります。一般的な血液検査で調べられる項目は、赤血球数、ヘモグロビンの量、ヘマトクリットの3つになります。
各病院によって、基準値に若干の差がありますが、赤血球数、ヘモグロビンの量、ヘマトクリットの検査を行うことで、貧血や貧血の種類などが判別できます。
それぞれの検査、基準値を説明します。なお、基準値は日本人間ドック学会の公表値などを参考にしています。
赤血球数の測定
血液中の赤血球の数が、きちんと保たれているかを検査します。基準値より低いと貧血の疑いが出てきます。
基準値
- 男性:400〜539(104)/μL
- 女性:360〜489(104)/μL
血色素(ヘモグロビン)測定
血液中のヘモグロビンの量を測定します。基準値より低いと貧血の疑いが出てきます。
基準値
- 男性:13.1〜16.6(g/dL)
- 女性:12.1〜14.6(g/dL)
ヘマトクリット値の測定
ヘマトクリットとは、血液に含まれる血球の割合です。
血液は血清という液体の中に赤血球や白血球、血小板などが流れています。その中の血球の占める割合を測定します。
基準値より低いと、体液が過剰になって血液が薄まっている疑いや、貧血の疑いが出てきます。
基準値
- 男性:38.5〜48.9(%)
- 女性:35.5〜43.9(%)
HCMC・MCH・MCV
赤血球数、ヘモグロビン数、ヘクトマリットの検査などで、貧血であると診断された際に、貧血の種類を特定するための検査です。赤血球数、ヘモグロビン数、ヘクトマリットの検査結果の数値を使用して、算出します。
MCHC
赤血球の中の平均ヘモグロビン濃度のことをいいます。基準値は次のとおりです。
- 30〜36%
MCH
赤血球の中の平均ヘモグロビン量のことをいいます。基準値は次のとおりです。
- 28〜32pg
MCV
赤血球の平均的な大きさのことをいいます。基準値は次のとおりです。
- 80〜98fl
その他の検査
血清鉄の検査
ヘモグロビンの材料になる血液中の鉄分量です。貧血が疑われる時に検査をすることが多く、結果が出るまで数日かかります。
- 少ない場合:鉄欠乏性貧血、体内からの出血など
- 高い場合 :再生不良性貧血など
血中フェリチン濃度
フェリチンは貯蔵鉄とも呼ばれます。鉄分のストックですね。フェリチン値が低いと、貧血に近い状態、もしくは時々貧血を起こしている可能性があります。
- 低い場合:鉄分の貯蓄が少ない。
- 高い場合:体のどこかに炎症が起きている場合、再生不良性貧血の場合などが考えられます。
鉄は、本来酸素輸送のため、血液に使われるので一定量は減るのですが、血液がうまく作られない場合、鉄だけが余ってしまいます。この場合、重大疾患の可能性が出てきます。
網赤血球の検査
網赤血球とは、若い赤血球のことで、この割合が高すぎると、赤血球が育っていない溶血性貧血(血液の自己破壊)や鉄欠乏貧血などが起きている可能性があります。逆に低すぎる場合は、赤血球自体が生産されない再生不良性貧血、白血病が疑われます。
貧血の治療法・食事について
基本的には、出血の原因を改善することと、食事療法が中心になります。
鉄分の多い食材を基本に、赤血球を作るビタミンB12、葉酸から鉄の吸収を補うビタミンCなどをバランスよく取ることです。
サプリをうまく利用するのもお勧めです。必要な栄養や補い方は、貧血のタイプにより違います。
食品の鉄分には、大きく分けて、次の3つがあります。
ヘモグロビンになりやすいもの(ヘム鉄)
- 肉一般(牛、豚、鶏)
- レバー
- 赤身の魚
- エビ
- カキなど
ヘモグロビンになりにくいもの(非ヘム鉄)
- ホウレンソウなどの葉物野菜
- 海藻など
中間(フェリチン鉄)
- 豆類
鉄剤の投与について
鉄剤を投与する方法もあり、錠剤と注射を使用するのが一般的です。
- 錠剤:1日1、2回服用します。吐き気などの副作用を伴うことがあます。
- 注射:週1,2回。
また、病気を原因とする貧血(造血能力の低下が起きるもの、病気による出血があるものなど)の場合は、その病気を治療する必要があります。
病院を受診する際に気をつけることなど
だるさ、顔色が悪いなどの症状が続いて、貧血かなと思ったら病院で血液検査を受けるといいでしょう。また、受診の際には、次のようなことを医師に伝えましょう。
- 高齢者:既往症、現在の体調、栄養や運動状況
- 女性 :妊娠、生理の状況、婦人科疾患の検査や既往症
- 若年層:スポーツの状況
- 子ども:栄養や運動状況:成育歴など(既往症)
貧血の予防法
予防はとても大切なことです。貧血は全身に悪影響を及ぼし生活の質を落とす、身近でありながら大きな疾患です。自分の生活を省みて、良質な血液が作られるように心がけましょう。特に大切なことを以下に記載しておきます。
栄養をきちんと取る。
栄養をきちんと取ることが大切です。特に、鉄分、たんぱく質、ビタミン12、葉酸、ビタミンCを意識して取るようにします。子どもは牛乳を取りすぎないようにしてください。
妊婦さんの場合
体の中の水分が増えるため、相対的に血液は薄まり、貧血気味になっています。
その上、胎児に血液を送る必要があり、妊娠後期には4人に1人は貧血とも言われます。鉄欠乏性貧血や巨赤芽球貧血になりやすい状態です。
貧血を放置すると、早産、低体重児、出産時の出血量の増加、産後の体調回復の遅れなどにつながります。
子どもの場合
乳幼児~小児
離乳食が進まず、鉄などの血液の材料が不足していることや、血液を作る力が不足していることがあります。顔色が優れず、だるそうに見えるなど大人に近い症状が出ます。
3歳以下の貧血
3歳以下の貧血は、体の成長、脳の発達に悪影響を及ぼすことがあります。
また、免疫機能が不完全なため、貧血で免疫力が低下し、感染症になりやすい状態となります。
栄養素全般をバランスよく取り、体を作っていくことが大事です。
思春期
この時期は、体が大人に近くなっていきます。また、女子では生理が始まり、部活で運動をするなどの理由で血液が不足しがちになるため、必要な血液量が追い付かない状態になります。
貧血になると、大人と同様、顔色の悪さ、めまいなどが起きてきます。女子では生理不順になることもあります。
やはり、食事でしっかり鉄分を補うことが大切ですが、乳幼児も含め貧血がひどい場合は、鉄剤を服用して補うことも大事です。
生理不順についてはこちらをご覧ください。
スポーツ貧血
思春期になると、スポーツを始める子どもも多いですが、特定の運動を過度に行うと、特に足の裏や多く使う部分の筋肉の血管が破損するため、貧血になることがあります。これを「スポーツ貧血」と呼びます。やはり、だるさなどの症状が出ます。
治療にあたっては、食事の改善や鉄剤の補給、練習の見直しなども必要になります。
また、アスリートの場合、体の仕組みが普通の成人と同じ状況ではなく、多くの栄養を必要とする状態です。体の状況がどんどん変わっていくというのも大きな特徴です。貧血には特に気をつける必要があります。
まとめ
- 貧血とは、血液中の赤血球にあるヘモグロビンが不足する状態で、体内の酸素が不足します。
- 一般的な血液検査では、赤血球数、ヘモグロビンの量、ヘマトクリットの3つを行います。
- 血液検査によって、貧血であること、どういった貧血なのかということを調べることができます。
- 貧血の治療は、食事療法が基本です。バランスの取れた食生活が基本で、サプリメントや鉄剤の投与を行う場合もあります。
- 予防は最も大切です。バランスの取れた食生活、ゆっくりと食事をとること、リラックス効果のあるものを取り入れることなどが大切になります。
- 妊婦さんは相対的に貧血になりやすい状態です。食生活などに気をつけることが大切です。