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更新日:2017年09月30日
目次
プロペシアとは?
プロペシアは、一般名は「フィナステリド」と呼ばれる男性型脱毛症(AGA)の内服治療薬(飲む育毛剤)です。
フィナステリドは、元々は「プロスカー」という商品名で前立腺肥大や前立腺がんの治療薬として広く知られていましたが、その後の研究で男性型脱毛症の方の毛髪の成長に効果が見られることがわかりました。
海外ではすでに60カ国以上でAGA治療薬として承認されており、日本では、2005年からMSD株式会社(旧:万有製薬)がプロペシアの商品名で販売を開始しています。
抜け毛と育毛だけでなく「発毛」にも
プロペシアは、抜け毛の防止と育毛に有効な薬であり、発毛に作用する薬ではありません。しかし、臨床試験では、プロペシア服用者の多くにある程度の発毛が認められています。
なお、プロペシアは男性型脱毛症(いわゆる若はげ)には効果がありますが、ストレスによる円形脱毛症や放射線治療による脱毛などには効果がありません。
男性型脱毛症(AGA)とは?
男性型脱毛症(AGA)とは、遺伝や男性ホルモンの影響などが原因の薄毛で、思春期以降の成人男性によくみられます。
ストレスや放射線の副作用による抜け毛などとは異なり、男性型脱毛症(AGA)は時間の経過とともに進行し、額の生え際や頭頂部の髪が薄くなっていきます。
最近の専門医療機関では、血液や毛髪のDNA配列を解析することによって、AGA(男性型脱毛症)になる可能性や、プロペシアを使う前にその効果があるかどうかを検査することができます。(遺伝子検査については後で説明します。)
男性型脱毛症(AGA)の原因とプロペシアが効く理由
原因は男性ホルモンから作られる「ジヒドロテストロン」と「TGF-β」
原因と言われている物質は男性ホルモンから作られる、「DHT(ジヒドロテストステロン)」と「TGF-β(退行期誘発因子(正常な育毛サイクルを阻害するサイトカイン))」です。
DHTは、胎児期の男性生器の正常な成長に重大な役割を担いますが、思春期以降では、AGAや前立腺肥大、ニキビや体毛の増加といったいわば男性特有の悩みの原因となります。
AGAで悩んでいる患者さんの毛穴からは、通常よりも多量のDHTが検出されます。
- テストステロン(男性ホルモン) + 2つの酵素(1型・5αリダクターゼ 2型・5αリダクターゼ) = DHT(ジヒドロテストロン)
- DHT(ジヒドロテストロン) + AR(アンドロゲンレセプター) = TGF-β(退行期誘発因子(正常な育毛サイクルを阻害するサイトカイン))
このように男性ホルモンからAGAの原因となるDHTとTGF-βが作られますので、このどこかを断ち切ればいいのです。
プロペシアは酵素を阻害して脱毛要因を作らせない!
プロペシアの成分であるフィナステリドは、「テストステロン」を「DHT(ジヒドロテストロン)」に変化させる「2型・5αリグターゼ」の働きを阻害するのです。
また、「ザガーロ」という新たに日本で承認されたAGA治療薬に含まれる「デュタステリド」には、「1型・5αリグターゼ」と「2型・5αリグターゼ」の働きを阻害する作用が認められています。
この結果、「DHT(ジヒドロテストロン)」が生成されませんので、プロペシアは男性型脱毛症(AGA)を防止することができるのです。
遺伝子検査でAGAの発症リスク、プロペシアが効く人・効かない人が事前に分かる!
遺伝子検査で、簡単にAGA発症のリスクやプロペシアが効く体質なのかを調べることができます。その仕組みについて簡単に説明します。
遺伝子検査ではAR遺伝子の並び方で、AGAの発症リスクとプロペシアの効果を調べる
遺伝子検査ではAR(上の図の赤の部分:アンドロゲンレセプター)遺伝子の並び方を見ることによって、AGAの発症リスクとその人に対するプロペシアの効果が分かるのです。
ここは理屈ではなく、単純な話として理解してください。
遺伝子はA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトニン)の四つが並んでいます。検査ではその並び方が、「G-G-C」と繰り返し並んでいる部分と、「C-A-G」と繰り返し並んでいる部分を見るのです。
この繰り返しの数(リピート数)によって、AGAのリスクが分かるのです。また、プロペシアやザガーロがその人に効果を発揮するのかも分かるのです。
遺伝子検査はAGA専門のクリニックなどで行っています。クリニックではさらに詳しい内容を説明してくれるでしょう。
母方の遺伝子で男性型脱毛症(AGA)が決まる!
AGAのリスクは遺伝子で判明するわけですが、家族の状況からも推測することができます。
図はAGAの遺伝をヒトの染色体とともに示しています。
ヒトの染色体は次のようになっています。
- 男:X・Y
- 女:X・X
図ではAGAの遺伝子を持つX染色体を「 X(AGA)」と記載しています。
- AGAは、X染色体で決まってきます。
- 男性の染色体はX・Yとなります。
- Yは父親、Xは母親から受け継ぎます。
- したがって、父親がAGAだったとしても、遺伝はしないのです!
そこで重要なのが母方の祖父になります。母方の祖父がAGAである場合、それが遺伝される可能性が高くなるのです。
兄弟であっても遺伝子の内容が異なる場合があるので、どちらかが薄毛ということは意外にも自然なことなのです。
なお、AGAの遺伝要因は70%から80%程度になります。かなり大きな比重をしめますが、原因はそれだけではないことも認識してください。
プロペシアは高い効果が認められている
男性型脱毛症(AGA)は、時間とともに進行していくため、まずは抜け毛を防止することが重要となります。国内の臨床試験では、プロペシアの投与による「現状維持効果」は、
- 1年間投与:40%
- 2年間投与:31%
- 3年間投与:20%
となっています。また、本来、プロペシアは抜け毛を防止したり毛髪自体を強くしたりするための薬ですが、服用を続けることによって毛髪が増えたという方も多く、髪が増えたという人は、
- 半年間投与:48%
- 1年間投与:58%
- 2年間投与:68%
- 3年間投与:78%
となっています。これらを合計してみると、プロペシアによって男性型脱毛症(AGA)が改善または現状維持できたという人は全体の98%にのぼります。
頭頂部だけではなく生え際にも効果があることがわかっていますが、顕著な改善効果が見られるのは、頭頂部で6%、生え際で2%程度となっています。また、プロペシアは未成年に対する処方や女性に対する処方はされていません。
私の知り合いで前立腺がんの治療をした方がいるのですが、2年ぶりくらいに会ったら髪の毛がかなり増えていました。今考えると、「プロペシアのおかげ?」ということも考えられます。
プロペシアの副作用
プロペシアに一定の効果があることはわかっていますが、実際に医師に処方されても服用を躊躇する患者さんも多くいます。プロペシアにはどのような副作用があるのでしょうか。
プロペシアの副作用としては、胃部不快感、性欲減退や男性機能の低下(勃起不全)、重大な副作用としては肝機能障害(発現確率不明)が発現することがあります。
主な副作用には次のようなものがあります。
肝機能の低下
重大な副作用としては肝機能障害(発現頻度不明)が発現することがあります。具体的にはGOT、GPT、γ-GTPの値が上昇する可能性があります。
男性機能の低下・性欲の低下
プロペシアの服用を躊躇している患者さんのほとんどはプロペシアの「男性機能の低下」という副作用を気にしていると思います。
プロペシアの説明書以外にも様々な研究結果があり、中でもプロペシアと偽薬を用意し、A・Bグループそれぞれに服用させて副作用の割合を調査したものがあります。
その結果は次のとおりです。
- 男性機能の低下
プロペシア:1.3%、偽薬:0.7% - 性欲の低下
プロペシア:1.8%、偽薬1.3%
この偽薬にはもちろん男性機能や性欲を低下させる成分は含まれていないので、偽薬で発現している副作用は精神的なものなどが原因となっていると考えられます。(「男性機能が低下する」という不安から生じるもの)
したがって、精神的な影響の分を除くと、プロペシア自体の副作用は1%以下となります。(プロペシアの説明書にはリビドー減退(性欲の低下)1.1%、男性機能の低下は0.7%程度と記載されています。)
乳房肥大
気になる副作用としては乳房が大きくなることも、副作用として示されています。ただし、その発現の頻度は明確ではありません。
過敏症
蕁麻疹、発疹などといった皮膚の異常も見られます。
その他
その他にも抑うつ症などの精神疾患や、めまいなどの副作用も頻度は明確ではありませんが副作用となります。
プロペシアについている実際の説明書の副作用に関する記載はこちらになります。
プロペシアで癌になることも!?
発がん性については、副作用では触れていませんが、このことはとても気になると思います。プロペシアの説明書にある「その他の注意」には、プロペシアと癌の関連について、因果関係は不明であるとしていますが、海外で実施された調査の結果が参考として記載されていますので、その内容をご紹介します。
調査1
- 調査対象 前立腺肥大症3,047例
- 実施内容 4〜6年間フィナステリド5mg(プロペシアの5〜25倍)と偽薬を別グループに投与
- 結果 フィナステリドのグループで乳がん4件、偽薬のグループで0件
調査2
- 調査対象 前立腺肥大症3,040例
- 実施内容 4年間フィナステリド5mg(プロペシアの5〜25倍)と偽薬を別グループに投与
- 結果 フィナステリドのグループで乳がん0件、偽薬のグループで2件
調査3
- 調査対象 健康男性18,882例
- 実施内容 7年間フィナステリド5mg(プロペシアの5〜25倍)と偽薬を別グループに投与
- 結果1 フィナステリドのグループで乳がん1件、偽薬のグループで1件
- 結果2 フィナステリドのグループで前立腺癌1.8%、偽薬のグループで1.1%
今後も新たな調査結果が出てくる可能性もあります。
なお、こちらがプロペシアの説明書にある癌に関する記載部分です。
注意点
プロペシアを服用する際には、次のようなことに注意する必要があります。
- プロペシアは成人男性の薄毛に有効な薬です。未成年及び女性には処方しません。
- 妊婦、妊娠している可能性のある女性及び授乳中の女性はプロペシアに触れないように気を付けてください。口から入った場合であっても皮膚から吸収された場合であっても、男性胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあります。
- プロペシアは前立腺がん検査で測定されるPSA値を約50%低下させます。検査を行う場合には、プロペシアを服用していることを医師に伝えてください。
- 効果を確認できるまでは、通常は6か月以上の継続した服用が必要です。
- プロペシアを服用中は、献血はできません。服用停止後、1ケ月程度は献血をさけてください。
Q&A
保険は適用される?
プロペシアは健康保険が適用されませんので、診療費や調剤費を含めて全額自己負担となります。
価格は?
プロペシアの価格は、病院、薬局ごとに異なります。販売元のMSD株式会社では、参考薬剤価格として1錠250円(税抜き)という目安を出していますが、診察料や調剤費などを含めると1か月9,500円~13,000円程度かかると言われています。
個人輸入をしている人もいますが、プロペシアは医師の処方が必要な薬品です。なお、ジェネリックもあり、そちらは6,000円程度で販売されています。
保管上の注意点は?
プロペシアは妊婦さんなどが触れないように容器に入れたまま蓋をして、湿気のない場所に室温で保管して下さい。プロペシア錠はコーティングされていますので、砕けたり割れたりしない限りはそのまま触れる分には大丈夫です。
割れたプロペシアなどに妊娠中の女性が触れてしまったときは、必ず医師に相談してください。
プロペシアの服用は医師のもとで安全に
プロペシアの服用には可能性は少ないながらも、様々なリスクがあることを理解していただけたと思います。
リスクがある以上、服用する場合は医師のいる病院やクリニックから処方されたものをきちんと服用することをお勧めします。
特に輸入品の服用で何か問題が生じた場合に、どのような補償を受けれるのかもわかりませんので、不安がつきまといます。
専門のクリニックで診断を受けた方がいい
専門のクリニックには、医師がいますのでプロペシアの副作用などについて詳しく相談することができます。
また、遺伝子検査を行っているところもありますので、自分にあったAGA治療がどのようなものなのか、しっかりと教えてくれます。
プロペシアだけでなく、ザガーロというプロペシアと同等の効果を発揮する薬剤も出ていますので、どちらを使用する方がいいかなども合わせて確認できます。
医師のもとで診断を受けることが結果的に時間とお金を最小限で効果を出せる方法です。
まとめ
効果
プロペシアは元々前立腺肥大などの治療薬でしたが、男性型脱毛症(AGA)に対する効果が認められ、治療薬としても認可されました。
基本的には脱毛を防止して毛髪を強くする効果がありますが、実際に継続使用すると毛量自体も増えるという声が多くあります。
副作用や注意点
男性機能の低下については、心配しすぎることはないようですが、自己判断で服用するよりはクリニックなどで自分がプロペシアに適応するかどうかなども含めて、医師と相談した方が安心です。
妊婦さんやお子さんは、服用してはいけないほか、割れたプロペシア錠に触れないように十分に注意が必要です。
看護師からひとこと
プロペシアは保険が適用されてないため、病院での値段は高価なものとなります。
個人輸入やネットなどの通販で、取り寄せることも可能ですが、偽物も多く出回っているため安全なものとはいえません。
また、副作用がでたときに大変危険であるため、医師の処方のもとで適切に服用することが望ましいです。
専門の病院を受診し、検査の上で適切な治療を受けられることをおすすめいたします。